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花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第1話】

某日ーー

ここは、人工衛星製造大手の大徳エンジニアリングの入社試験会場。

赤坂義範は信じられなかった。

(何でこんなに難しいの?)

義範だけが頭を上げていた。他の人は、一心不乱に問題用紙と格闘している。

彼は弱気になっていた。

(ここは捨てるか)

とさえ考えてしまうほど、試験問題は難解だった。記述式はやっぱり辛い。

時間だ。

6割程度しか解けなかった・・・

ここはダメだろう。

義範は諦めた。

答案を回収してるときーーある女のか細い大声が。

「名前、書き忘れたぁ!すいません、名前、書かせてください!」

係の女性が待ってくれたようだ。声の主のほうを見る。

今時珍しい牛乳瓶の底メガネをかけた髪の長い女が、名前を書いていた。

係の女性は答案を受け取って、それを見るーー何やら、驚いた様子だった。

帰りの電車で、あの娘と一緒になった。

背は義範と同じくらい。顔が小さく、細身だがメリハリのある身体。脚も長く、ヒールがよく似合う。のだが…牛乳瓶メガネと大きめのマスクが全てを台無しにしていた。

義範と一緒に、牛乳瓶も駅を降りた。同じ駅か。

義範は、商店街を早足で歩いた。はっきりいって、傷心だった。それはそうだ。会社一つ落ちたも同然なのだから。

この傷心を癒してくれるのは、「絶縁!ヤギ娘のトノカちゃん」しかいない!

細い路地に入った。ここからは、義範だけが知っている裏道を行くのだが・・・なんとなく後ろを振り替えると、あの牛乳瓶が!

義範はさらに早足で歩いた。だが、牛乳瓶はついてきた!

(なんなんだ、あいつ)

家まであと30m。義範は走った。しかし、それに合わせて牛乳瓶も走る。

アパートに着いた。義範は急いで部屋に入ると、ドアロックを慌ててかけた。その後すぐに「ピンポーン」と呼び鈴を鳴らす者が。ドアスコープで外を見ると、あの牛乳瓶が。いったい、なんなんだ!

おそるおそるドアを開けたーー牛乳瓶がゼエゼエと激しく息を切らしている。

「何か用ですか?」

義範は言った。すると牛乳瓶が財布のようなものを差し出して

「これ・・・あなたの、ですか?」

と問いかけた。

すかさずポケットのなかを確認する。札入れと小銭入れと鍵が。

「違いますね」

「ええーっ!違うの!?」

明らかに愕然としている牛乳瓶。しかし、すぐに立ち直ったみたい。

「じゃあ、これから私と一緒に交番に行ってくれませんか」

義範は困ってしまった。なんだこの娘は。

とりあえず、即答した。

「お断りします」

ドアを閉めようとした。だが、牛乳瓶が脚を入れてきた!まるでふた昔前のセールスマンみたいに。

「あの、せめてお話だけでもーー」

義範は恐怖を感じた。新手のマルチか宗教のお誘いだと断定したから。

「一人で行ってくればいいじゃないですか!」

つま先を踏んで応酬したが、一向に止める気配はない。それどころか

「あー、これ傷害だぞう!」

って言ってきた。負けじと義範は

「それは不法侵入だ、ボケ!」

と叫んだが…

「女の子のお願いを無下に断るなんて、ひどい!」

と全く聞く耳を持たない。

「俺は関係ないだろが!」

そう言うとーー牛乳瓶は脚を引いた。

「わかりました。大変、心細いですが、一人で交番に行ってきます。交番で私は、警察官に全身を舐め回すように見られ、ねちねちと質問攻めにあい、個人情報を知られ、毎日、いやらしい警官がメールやラインで口説いてきて、後日、私の家に落とし主と称した強姦目的の獣たちがやって来るんだわ。そして私はなすすべもなくーー」

牛乳瓶が首を垂れて力なく項垂れている…

「あー分かった、分かったよ。これも縁だ。一緒に行ってやるから」

牛乳瓶が頭を上げた!

「ありがとう。嬉しい!」

彼女が義範に抱きついてきた!

(これは、いいのか?)

彼は、ものすごく複雑な気分だったーー

義範は、彼女と一緒に近くの交番まで行った。財布を拾ったのは、あくまでも義範だということにしておいて、書類も彼が書いた。

「これでいいだろ」

牛乳瓶が手のひらを合わせて言った。

「上出来♪」

どの目線で言ってるんだ。

牛乳瓶が言った。

「何か、お礼がしたいな」

「いらないよ」

「そう言わずにーー」

牛乳瓶が腕を絡めてきた。

さっきまで、落とし主と称した何とかとか言っていたのはなんだったんだ?

「本当にいらないから」

義範は絡まれた腕を解いた。

「私の申し出を断るなんて!」

そんなことよりも、義範は「絶縁!ヤギ娘」の世界に浸りたかった。

「それじゃーー」

「あ、待って。まだ自己紹介もしていなかったーー私、花邑杏子(はなむらきょうこ)

顔が分からないのに、自己紹介されてもなーー

「俺は赤坂義範(あかさかよしのり)

「あ、ライン交換しましょ」

言われるがままにラインの交換をした。

「また会いましょうね♪」

花邑杏子は、駅の方へと歩いていったーー


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