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ギエンたちはあれからアジトまで何とか逃げ帰ることができた。確認したところだれも、誰も怪我もなく、五体満足にしているようだ。
「何とか夕暮れまでに帰れたな」
ジョフがつぶやく。
「ったく、あんな危険な場所とは思わなかったぜ」
山賊の一人がぼやく。
「ギエンさん、どうします? また探索に行きますか?」
「やめだな。あれなら追いはぎやっているほうが全然マシだ」
「ちがいねえ」
ギエンのその一言で山賊たちはいつものペースに戻り、火を熾したりとキャンプの準備をはじめた。
来訪者が現れたのは食事も終わり、晩酌をはじめた頃だった。
「よう。ギエン」
髭を蓄えた男が数人を引き連れて現れる。その中には若い娘も二人ほどいて、ギエンたちを驚かせた。
「ゼナンか」
ギエンはその男を知っていた。この辺りでもっとも規模の大きい山賊団を率いている頭目である。
「お前のような大物が俺に何の用だ?」
ギエンはあしらうような物言いで訊ねる。
「つれないな。俺はお前を友人と思っていたんだがね」
「友人ね。俺とお前じゃ規模が違いすぎてな……」
「気後れするかい?」
ゼナンはギエンの空になった杯を見て、自分の持ってきた酒を注ぐ。香りから察して、間違いなくギエンの呑んでいるものより上等のものだった。
「今日はビジネスの話を持ってきたんだよ」
ゼナンはギエンの対面に腰かける。
「ビジネス?」
「数日前に島が突然現れたのは知っているだろう?」
「ああ。今日、探索してやろうと思って近くに行ってきたんだがな」
それを聞いたゼナンの瞳がギラリと輝く。
「で、どうだった?」
「近づく前にワケのわからん妨害にあって、こうして逃げ帰ってきた」
「……すると、あそこには何かがあると睨んでもいいってことだな?」
「知らんよ。どっちにしろ近づけなかったんだからな」
ギエンは杯をグッと飲み干す。
「実は俺たちもその島の探索をしてやろうって計画していてるところなんだ」
「俺はあまりおすすめしねえな」
ギエンが杯を下げたところを見計らって、また酒を注ぐ。
「だが、一攫千金は魅力的だろう? 古代王国の遺跡ってのはすごい宝が眠っているらしいじゃねえか」
「だが、あそこは危険だぞ?」
「だからだ。だからお前に声をかけたんじゃないか」
ゼナンは立ちあがると部下たちにこう言った。
「今日は騒ぐぞ! 酒宴だ!」
それに呼応するように部下たちも酒を掲げた。こうしてギエンのアジトでは宴が行われることになった。
朝になってみればゼナンに協力することになっていたのは言うまでもない。