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クレスはガルダートの上からカナルディアを眺める。
カナルディアのあたりは地響くようなうなり声をあげて、湾から少しずつ上昇をはじめ離れようとしていた。
「本当に動いたんだな……」
クレスが感心したようにつぶやくと、頭にあの声が反響する。
『ガルダートの力は大したものだろう?』
「ああ、まったくだよ」
この力でここまで生き延びてきた。他の命を救いもしたし、奪いもした。カナルディアを動かしたのもすべては生き残るためだ。きっと生きることは残酷なのだろう。だから生きるために何でもやる。それがいまの自分なのだ。
『お前とは長い付き合いになりそうだ』
「ああ。そうだな。きっとそうなる」
『だが、覚えておけ。この力には大いなる義務が課せられると』
「俺にはこの力の意味がまだわからない。けど、受け入れなきゃいけないんだよな。いまの俺はガルダートを含めて俺なんだから……」
カナルディアは湾から抜けて、雲をかきわけながらゆっくりと前進していった。
クレスは置いて行かれないようにガルダートの速度をあげて、カナルディアに追いつき、まわりを数回旋回して、カナルディアの大地へと帰還を果たしたのだった。




