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赤茶色の髪にトパーズ色の瞳の少年――彼の名をクレスという。
彼は噴水の前に座りこむと、今日で何度目になるかのため息をついた。
ここは学院から少し離れたところにある町である。研究員時代は同僚たちとよく来た遊び場だった。もっとも、それは既に過去の話でしかない。
クレスはふと自分の手荷物に目を落とす。かれの所持品はすべて小鞄の中に収まる程度しかなかった。お金もほとんどない。これでは今晩のねぐらを探すのも大変だろう。
(とりあえず、ここにいてもしょうがないか……)
クレスは立ちあがって、とりあえずアテもなくさまようことにした。歩いていれば何か妙案が浮かぶかもしれない。もっとも、そんな予感もまるでないわけであるが。
「そこのあんた」
そんなときにふと男がクレスに声をかけてきた。割と小綺麗な身なりをした中年の男だ。
「俺のことですか?」
一応、クレスは自分のことかと確認を取ると、男は首肯する。
「そうだよ。俺はお前さんに声をかけたんだ」
男はにっこりと笑みを浮かべる。もちろん、クレスとこの男は初対面だった。それもあってクレスは警戒しながら質問をする。
「俺に何か用ですか?」
「あんた、あそこの学院でクビになった生徒だろ? それで今晩のねぐらも困っている」
「……情報が早いですね」
その言葉にクレスは警戒をさらに濃くする。
「学院から若い奴が荷物抱えて出て行くところ見たら何かあると思うもんだ」
そういうものか、とクレスは納得しつつも、一応は男の話に耳を傾けてみる。
「ちょいとお前さんにいい話があるんだが、乗ってみる気はないか? きっと悪い思いはしないはずだ」
そう言って、悪い思いをしなかった話を聞いたことはない。だが、いまのクレスにそれを断るような気力はなく、差しだされた藁を掴むことにしたのである。
女の子とかが出てくるのは5以降になります。
自分でもおっさんしか出てこなくてびっくりしてます。