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特異な生い立ちシリーズ

生還者~特異な生い立ちも、たまには役立つコトもある~

作者: まきお

 マルチ商法、リスク無しの投資話、金しか求めない新興宗教等……世の中は割と『罠』で溢れている。


 今回はこれら巨大トラップの1つから、私が見事に生還を果たした話をしようかと思う。




 二十歳になって、まだ間もない頃――。


「面白いイベントがある」


 確かそんな誘い文句で、私は友人に呼び出された。


 相手は普段からよく遊ぶ、同い年の友達。

 昼過ぎに待ち合わせて、何の疑いもなしについて行く。



「……は?! ナニココ?」


 イベントの舞台はクラブや飲み屋ではなく、隣町にある会館の一室で、広い催事場だった。


「ゴメン、今日だけ付き合って欲しい……」


 そこで初めて『資産(金)を増やす為の説明会』だと聞かされた。


 あまりにも必死に参加を頼むので、私は渋々了承する――。


「……」


 会場を眺める限り、嫌な予感しかしない。


 参加者(鴨)は100人以上。怪しげな組織側の人間はだいたいその半分で、おそらく全員20代だ。


 マイクを持った代表者の挨拶から始まり、20分程費やして場の雰囲気を和ませた後、プロジェクタースクリーンを登場させ、儲けのカラクリ説明に入る。


 内容はいわゆる『ねずみ講』というやつだ。


 全体説明の後は、グループディスカッション――『鴨』2、3人に対し、1人の担当者がついた。


 仕事内容(勧誘方法)や心構えを大真面目にレクチャーする、男性担当者。


 (スゴい……)


 その手法に、私は敵ながら感心した。


 皆は気付いただろうか?


 参加者が既に組織へ入ったカタチで、自然と話が進んでいるのだ。


 周囲を観察すれば、ほぼ全員が真剣に会話をしている。

 その場での『直感』でしかないが、この状況を演出すのにサクラ(偽客)も大きく貢献をしていたと思う。


 更に私は担当者の話し方や表情から、ある人物を思い出した……そう、我が毒父だ。


 その昔、マルチ商法にスッポリ()まった時の彼も、まったくもって同じ顔をしていた。


『希望(夢だったかも?)』

『努力』

『◯◯◯(所属先の団体名)』


 墨かマジックか忘れたが、何しろ上記の内容が太字で書かれた半紙サイズの用紙を、家訓の(ごと)く居間に貼り出し、情熱そのままに父が母へ力説する。


 当時まだ子供だったので内容は理解出来なかったが、母の目が明らかに死んでいたのを私は記憶していた。


 そんな過去の父親から学んだ『表情心理』――今(大人)になって、それが役に立った。


 心の底から信じて疑わない人間の顔は、幸福や希望に満ち溢れている。本当に分かりやすく、瞳が輝いているから驚きだ。


 目前の彼も、組織に入ったばかりの新人なのだろう。熱量がハンパじゃない。


 だからこそ、見極めないと騙される――。


 下手すれば根っからの詐欺師より不利益を判別しづらく、より厄介だ。



 数時間後……。


 まあ言うまでもないが、私は組織に入らなかった。

 詐欺まがいの商法に引っ掛かり、借金を増やす様な家庭で育った人間に、夢や希望は通じない。



「ここまで説明しているのに、何で?!」


 そう担当者を落胆させ、私は会場を後にした。


 建物を出ると、外はすっかり夕方になっている。


 この時点で会場からの脱出に成功した生還者は、信じられないが私を含め、たったの5名だ。


 夕日に向かう、激しい戦闘(しつこい勧誘)に勝利した若者達――。


 儲け話よりハッキリ覚えがあるのは、私の脳内で映画『ア◯マゲドン』のテーマソングが、大音量で流れていた事だった――。



 思い返せば、意外な人物に助けられた。


 今後も一切関わりたくはないが、成長期に大人の残念な部分をがっつり学べたので、父親には大いに感謝をしている。



 (ちな)みに私を罠に誘導した友人は組織に入っておらず、地元の先輩に『人を集めろ』と半ば脅されて、仕方なしに連れてきたらしい。


 説教はしたが、私は友達関係を続けた。


 しかしこの様な出来事がキッカケで『絶交・絶縁』を選ぶ人も多いし『自分や家族の人生を守る』意味では、決して間違っていないと思う。


 親友や家族(親族)が堕ちた時、どう対応するか?

 思考力が乏しい私には、人間関係で特に難しい問題だ――。

今回も読んで頂きありがとうございます。


長編小説も2作品投稿しています!

現代社会を皮肉る目的で書いているので異世界には転生しませんが、お時間があれば是非読んでみて下さい!


『わがまま戦隊、棚上げレンジャー』【完結】

『魂再生機構』【完結】


只今、初めての長編異世界恋愛も執筆中です!

絶賛苦戦中ですが、年内には投稿を開始したいと思います。


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