■05 わたしが目覚めた?
考え事をしている間に、わたしは王から引き離されて部屋の外に連れて行かれていた。
わたしは、なおも揉みしだくように当て付けてくるヴィタリスの大きなお胸を睨みつける。
なによ、自慢してるの? 大きければいいってもんじゃないでしょうに!
フフフ、と余裕しゃくしゃくで笑いかけるヴィタリス。
わたしはその腕をぞんざいに振り払う。
「あら……」
違う違う。今のは見とれてたわけじゃないからね?
リカルド様はそんな下品な誘惑に動じたりしないわ。
「アシュリーは貴女からあの寺院のことを聞いて出掛けて行ったはず。何でそのことを黙ってるの? ……ですか?」
興奮して言葉遣いが変になってしまった。
ヴィタリスは、痛いところを突かれたはずなのに、それでも余裕しゃくしゃくの笑みを崩さず、からかうように言う。
「アシュリー様が話してしまわれたのですか? もうっ、内緒ですよ、と念を押したのに困ったかたね……」
そうだ。
内緒にしないと御利益がないからと言われて、だから誰にも目的を告げずに家を出たのだ。
愚かだった。それがあんな嫌疑を生むだなんて。
「わたくしはただ、古い寺院にまつわる言い伝えを教えて差し上げただけです。まさか、あんな話を本気になさるだなんて……。ああ、そうですわね。お祈りにかこつけて、敵国の人間と密通をなさりに行ったのですわよね?」
「そんなこと絶対しない!」
びっくり顔のヴィタリス。
しまった。ちょっと声が大き過ぎた?
「本当に、どうされましたの? 事実など関係ないと、ご納得されたと伺っておりましたが」
そこへ先ほどの客間からルギスが顔を出し、自分の娘を手招きで呼びつけた。
思わず激高してしまったことを気まずく思っていたわたしは、それでヴィタリスとの会話が途切れたことに少しホッとした。
リカルド様の姿のわたしがアシュリーだということが、もしバレてしまったらどうなってしまうのだろうと考える。
考える……。えー、分かんない。一体どうなるの?
「リカルド様」
「は、はいっ!」
考え中に話しかけないで欲しい。
それも、当たり前のようにリカルド様の手を握って、こんなに身体を寄せながら声をかけるなんて。
「アシュリー様のもとへ参りましょう?」
「えっ?」
「お目覚めになられたらしいわ」
「え、嘘?」
わたしが目覚めた?
わたしは、ここにいるのに……。
わたしがアシュリーなのに?
じゃあ、わたしの身体にいるのは誰なの? 誰が目覚めたの?
何が起きているのか気になって仕方のないわたしは、何故ヴィタリスが王子をアシュリーのもとに行こうと誘うのかも、客間にいたはずの彼女の父親が、どうやってわたし(の身体)が目覚めたことを知り、彼女に耳打ちしたのかということも、まったく疑問に思わずに、来た道を後戻りするのだった。




