■25 ミハイル団長END
「リカルド様……」
壇上でわたしを出迎えたのはリカルド様だった。
リカルド様の差し出す手を取り、わたしは段を上る。
「君の謹慎処分と、根も葉もない嫌疑はもう解かれているよ。本当は、あのヴィタリスとの結婚を僕が承諾する見返りとしてだったのだけれど……」
わたしは王子のお心遣いに胸がいっぱいとなった。
全て国のためと、我が身を犠牲にしながらも、最後までわたしのことを思ってご配慮いただいたのだと、そのことに感謝した。
「皆、聞いてくれ。私とアシュリーのことだ。皆が私たちのことを祝福してくれる気持ちは先ほどありがたく聞かせてもらった。長い間育んだ愛も、決して偽りではなかった。それは神に誓って証言する。
だが、知ってのとおり、私は先日皆の前で彼女との婚約を破棄した。私を信じ、すがるように見つめる彼女のことを私は無慈悲にも見捨ててしまったのだ。
私には、この期に及んで婚約破棄を取り消したいなどと言う権利はないと思っている。彼女には私よりももっと相応しい人がいるのだから。
辛い身の上にあった彼女を助け、さらにはオリスルトの重大な危機を救った英雄だ。皆、私とともに、彼と、アシュリーのことをどうか祝福してあげて欲しい!」
リカルド様が手をかざした先にはミハイル様の大きなお姿があった。
大きな歓声と拍手を向けられ、困ったようにされているミハイル様。
なかなか前に進み出ないので、リカルド様に手を引かれてようやく中央に立つ。
「涙で顔がぐちゃぐちゃじゃないか。晴れ舞台が台無しだぞ?」
ミハイル様がわたしに向かって微笑む。
わたしは思わずゴシゴシとドレスの裾で涙をぬぐった。
お父様にご用意していただいた素敵なドレスだったけど、彼にはそれよりも、とびきりの笑顔をお見せしたかった。
自分が何で泣いているのかも忘れてしまった。
全てが上手くいってホッとしたから?
リカルド様が、わたしの悲しみを理解してくれていたことが分かったから?
そんなリカルド様とお別れするのが辛いから?
全部そうかもしれない。
でも、そのどれよりも大きく心を占めるのは、今こうしてミハイル様と向かい合っている喜びだった。
本当の意味で知り合ったのは、ほんの僅かな期間。
でも、それはわたしにとっての時間であって、ミハイル様はそれまでもずっと、人知れずお辛い気持ちを抱えていたのだ。
そのことを知り、その想いにお応えすることができることが、私は泣くほど嬉しかった。
「アシュリー」
「ミハイル様」
わたしたちの姿と気配を察し、誰かが大きな声ではやし立てた。
えっ!? こんな大勢の前で?
そう思ったけど、幸せの絶頂を感じているわたしは、それを振り払うような無粋なことはしない。
わたしは身を固くしてそのときを待つ。
……あっ! そうだわ!?
「ミハイル様? しっかりとお支えくださいね?」
小声でそう囁くわたし。
ミハイル様は背中に回した腕を深く巻きつけ、わたしの上体を横に倒した。
天を仰ぎながらミハイル様の唇を受け止める。
目を開けると、わたしの手元には瞼を閉じて微笑むわたしの顔があった。
すさかずもう一度、今度はミハイル様になったわたしの方からのキス。
一瞬、グラリと傾く感覚があったけど、次の瞬間わたしはまた、あの逞しい両腕に抱きかかえられていた。
「愛してる、アシュリー」
「わたしもです、ミハイル様」
ごめんね。鏡の悪魔。
わたしたちの愛は、こんな呪いなんかで邪魔されたりなんかしないわ。
わたしはこの素敵な呪いを授けてくれた悪魔に心の中で精一杯の感謝を口にしたのだった。
個人的にはこっちの騎士団長と結ばれるラストを正史にしたい気持ちが強いのですが、当初のプロットどおりだと流石に互いに惹かれ合う描写が少な過ぎて、唐突に見えるのが悩みどころです。
昔から想っていたらしいミハイル様は兎も角、アシュリーの方がこれじゃあ尻軽感満点だなあ、と。
今回はこれで終わりますが、後半の都合良く雑に端折ったあたりを書き足し、ミハイルとの仲を深める過程を描いた完全版を書こうかなどと構想しております。
フィードバックがないとどこをどう直していけば良いのか分からないので、もし最後までお読みいただいた人がいるのであれば、何でも良いので感想をお聞かせいただけると嬉しいです。
テンプレを書けば読者が付いてくれるのではないか、そんな軽率な思いで書き始めたのですが、ちゃんとテンプレになっていたでしょうか?




