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■24 リカルド王子END


「ミハイル様……」


 壇上でわたしを出迎えたのはミハイル様だった。

 ミハイル様の差し出す手を取り、わたしは段を上る。


「大丈夫だ。王子が手を尽くしてくれた。君の謹慎処分と、根も葉もない嫌疑はもう解かれている。王子には私から全てお伝えしてある」


 全て……? 全てってどこまでですか?

 狼狽(うろた)えて発狂しそうになるのを必死で(こら)えて、わたしは笑顔を作った。

 入れ替わりの呪いのことまで話しているのだとすると、わたしはどんな顔でリカルド様とお話しすればよいのか分からない。


「タッサ王。それに、ここにお集まりの皆さま。お伝えしたいことがございます。先ほど私が告発したメフィメレス家のおぞましき陰謀。その証拠を(つか)み、解き明かしたのは、他でもありません。ここにいるヒーストン家の伯爵令嬢アシュリー様なのです。

 彼女はあのヴィタリスによって(おとし)められたことを端に、それを逆手に取って彼女とその背後にあるメフィメレス家の陰謀を突き止めたのです。私や騎士団は、彼女のもたらした推理に基づいて調べ上げたに過ぎません。このオリスルトを救ったのは、アシュリー嬢の功績であるとお讃えください」


 広間中から驚きの声が上がるのを、わたしは居心地悪く聞いていた。

 呪いのことなんて言えないだろうから、ミハイル様はああいう機転を利かせた物言いをしたのだろうけど、推理だなんてとんでもない。

 わたしがしたことと言えば、ただ流れに任せて、棚ボタ的に降ってきた幸運を受け止めただけなのだ。

 最初のきっかけとなった入れ替わりの呪いだって、あのヴィタリスにそそのかれてノコノコ出歩いて行っちゃった愚かさが原因だし。

 そうね。よく考えたら、全部ヴィタリスの自業自得と言えるのかも。


「さあ、アシュリー様」


 ミハイル様に手を引かれ、リカルド様の元へ進み出る。

 わたしはそのミハイル様の手をお名残惜しく、そして、おこがましくも、申し訳ない気持ちでお離しした。

 ミハイル様のお気持ちがわたしに向いていたことを知ってしまったからだ。

 でも、ミハイル様は素敵でいらっしゃるから、きっと良い人がすぐに見つかるはず。

 ミハイル様のお姿を借りて、宮中の女性からの視線を一身に浴びたのだからそれが分かる。

 そうだ。女性に怖がられないようにするにはどうしたら良いか、もっと教えて差し上げなくては。


「アシュリー……」

「リカルド様……」


 リカルド様がそっとわたしの頬に向かって手を伸ばす。

 わたしはその手を両手でお取りして、自分の頬へと(いざな)った。


「すまなかった。私は君とこの国とを天秤に掛けたのだ。だが、それ自体誤りだった……」

「良いのです、リカルド様。リカルド様の本当の想い……。ずっと伝わっておりましたわ」


 リカルド様は遠慮がちにわたしの肩を引き寄せ、顔を近づけた。

 互いの息が顔にかかるほど近くに抱き合い、そのことを二人で笑い合う。

 誰かがキンと耳を打つ口笛を響かせた。

 そちらに気を取られ、視線を外したとき、わたしの顔を追うようにリカルド様がわたしに口づけをなさった。


「あっ……!」 あっ……!


 側でミハイル様の慌てる声がして、それに遅れて私も心の中で叫んでいた。


 ちょっ……! えっ!? 回るっ!?


 重心がどこにあるのかを思わず見失う。

 わたしの腕の中にあるのは……、わたし。

 それは分かったんだけど、体勢が悪すぎて持ちこたえられない。

 意識を失ったわたしの身体がその場に崩れそうになるのを、リカルド様になったわたしは必死で受け止めようとして、身体をよじる。


 何がどうしてこうなったのかはよく分からなかったけど、気がつくと、グルリと回転したリカルド様のわたしは、寝ているわたしの身体の下敷きになっていた。

 幸い尻もちを突いただけで、大事はなさそうだった。

 わたしは自分の膝の上で(まぶた)を閉じている美少女に向かって、これ幸いと後追いのキスをする。


 またもグルリと世界が回る感覚。

 わたしは驚きで静まり返った空気を誤魔化すように、リカルド様の首に腕を絡ませ、抱擁してみせた。


 パスンと音がしたあと、リカルド様が、うーん、と唸りながら目を覚ます。


「馬鹿野郎。しっかり彼女を守りやがれ」


 なんと、リカルド様の頭をはたいたのはミハイル様だった。

 リカルド様は一瞬キョトンとした顔をして、ミハイル様の方を見つめ返していたものの、やがて照れ臭そうに笑うと頭を()いてわたしを立たせた。

 そして自分も立ち上がり、ミハイル様に向かって乱暴に抱きつく。

 おい、不敬罪だぞ、などと冗談めかして笑いながら。

 その(なご)やかな光景に皆が落ち着きを取り戻し、再びわたしとリカルド様への祝福と賛辞の声が次々と上がり始める。


 ごめんね。鏡の悪魔。

 わたしたちの愛は、こんな呪いなんかで邪魔されたりなんかしないみたい。


 謁見の間に満ちた幸福な空気の中でわたしは、もう一度あの打ち捨てられた寺院に行き、呪いの仕返しとして、今度はあの鏡を汚い汚い沼の中に沈めてやろうかしら、などと意地悪くたくらむのだった。


見切り発車で書き始めたこともあって、最後どっちとくっ付けようか決められず、結局2パターン書いてしまいました。

やはり元鞘で王子と結ばれるほうが、一途で健気(けなげ)な感じがしますかねぇ。


一度皆の前で振って晒し者にしておいてヨリを戻したいなんて勝手な王子は許せん!という人は、次のリカルド団長エンドの方で溜飲を下げていただければと思います。

よろしければ、どちらのエンディングが良いかご意見お聞かせいただければ幸いです。

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