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せりもも爆誕10周年記念



 Webに小説を公開するようになって、ちょうど10年になります。「せりもも」の名で、なろうさんに、「専業主婦」をアップしたのが2011年5月30日。これが、初めての投稿でした。



 さて、最初にちょっとだけ、まじめな話をします。10年に一度だけだと思って聞いてやってください。




 webに小説を上げたきっかけです。それは、東日本大震災でした。

 あの日、私は、仕事で都心にいました。駅で止まっていた電車が、ドアを開けたまま、不意に、ぐらぐら揺れ出して……。車内放送が入り、地震だと知りました。


 間もなく、追い立てられるように電車を降りたのですが、頭上で太い電線が揺れていて、あれが落ちてきたらと思うと、本当に怖かったです。そのまま、駅から出されましたが、私は、外部委託なので、会社に戻ることができません。


 山手線の線路に沿って、大勢の人が、ぞろぞろと行進を始めました。私は、同年配の知らない女性と並んで歩きました。地震とは全く関係のない話を次から次へと、まるで昔からの知り合いのようにおしゃべりしたのを覚えています。


 途中、線路沿いの道から外れそうになりました。再び線路方面へ戻りたいのですが、道がわかりません。すると、明治神宮の橋の袂に、固まって座っていた、高校生くらいかなあ、女の子が教えてくれました。普段なら、絶対、私となんかしゃべってくれそうにない感じの、今時の女の子。彼女が、すごく真剣に教えてくれました。嬉しかった。あの子たちは、無事に帰れたのだろうか。


 一緒に歩いていた女性とは、新宿駅で別れました。連絡先を交換したいと一瞬、思いましたが、止めました。彼女も、何も言いませんでした。また明日会うみたいに、手を振って別れました。


 それから、街道を、えんえん歩きました。途中で電車が動き出し、3駅分くらい、乗車できました。深夜を大分回ってから、自宅に帰り着きました。ほぼ、明け方でした。


 当時私は、ケータイ(スマホ)を持っていませんでした。だいたいのことは、一緒に歩いていた彼女が自分のスマホを見て教えてくれたのですが、それでも、ここまでだったとは……。



 無事に家に帰り着き、あの時、日本中の多くの人が思ったことを、私も思いました。

 苦しんでいる人の為になりたい。

 自分の持つ、一番価値あるものを差し出したい。


 けれど、私に何ができるのか。私は何を、持っているのか。


 救援物資を送るとか、義援金を出すとか、その程度のことしかできません。現地にボランティアに入ることもできませんでした。私は悩みました。


 災害があっても逃げ場のない、使い捨ての私。

 一緒に新宿まで歩いてくれた、知らない人。

 神宮の陸橋で、道を教えてくれた女子高生の真摯な目。

 人の為になりたくても、何もできない自分。小さな小さな自分……。



 ある日、私は、webで、編集者だという人の手記を見つけました。その手記には、自分たちの作っているもの(本)は、こんな時に、何の役にも立たない。点火用の紙としてしか、用をなさない、と書かれていました。


 この方はこの方なりに、悩んでいらしたのでしょう。けれど私は、違うと思いました。

 自分は随分、本に助けられてきた。物語に。お話に。自分が今、生きているのは、辛い時に寄り添ってくれた、本たちのおかげだ。

 傲慢と罵られてもいいです。

 その時私は、自分の作品をwebに上げようと決意しました。







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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに自身が駆け抜けてきた感でした。特に、震災直後の描写が何かと刺さるもの多く、感銘受けました。 独白も何かしらの経緯も含めて、今更ながら心ふるえるもの多かったです。 [一言] こちらでも…
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