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異世界召喚された直後に求婚されました  作者: 時継
第二部

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喧嘩の原因1

後になってこの日のことを思い返すと、エリオットとのあの喧嘩の原因は、ほんとに些細な意地の張り合いで、わたしの故郷の言い回しを借りるなら、いわゆる「犬も食わない」というやつだった。


翌日に鉱山の視察を控え、早朝出立に備えて仕事を早めに切り上げて、その夜はわたしとのんびり過ごそうといつもよりずいぶん早く帰宅したエリオットと、それを知らずにルデルリー王国のプリシラの家でのんびりしていたわたし。


プリシラの家へと転移する魔法陣ラグマットはずいぶん前に完成していた。

紋様を丁寧に編み上げた結果、当初予定していたよりもずいぶんと大きくなってしまったけれど、そのおかげで一人用ではなく、くっつけば二人一緒に転移できるのではないかという大きさになった。


エリオットには、ラグマットを手編みしていることは話していたが、それが実は魔法陣であることは言ってなかった。

最初に一人で行ってみて、大丈夫そうなら次からはエリオットに正直に話してエリオットと一緒に行こう。

そう決めていたのに、いざとなるとそれがためらわれて言えないまま時が過ぎてしまった。


バレてもきっとエリオットのことだから「アリィはまったく、しょうがないな」と苦笑して許してくれるだろうと思う反面、ルデルリーに行ってはダメだと言われかねない。

一人は禁止、エリオットが一緒じゃないと行ってはダメと言われそう。

ヘタするとラグマットを没収されてしまうかも……。


あれこれ言い訳を並べて…本音は一人で行きたかっただけなのかもしれない。


人の多い商業区を歩き回っても、誰もわたしのことを「魔女」とも「救世主」とも言わないし、ジロジロ見られたり指をさされたりしない。

気兼ねなくお店を見て回ったり、食べ物を買って食べたり、ただの一般庶民に戻って歩き回るのがいい息抜きになっていた。


ルデルリーに留学していた頃、エリオットが「エリアス殿下と呼ばれたくない」と言っていた理由が今では痛いほどよくわかる。


今回は、プリシラの魔法関連の蔵書から魔道具作りのヒントを得ようと思い立って訪れていた。


正確には「一人」ではなくて、いつもシャールがついてきているから「一人と一匹」なんだけどね。

シャールもプリシラの家のほうが落ち着くらしい。



******


「アリィ、ただいま」

それぞれの寝室を隔てる壁にある扉をノックした。

扉が開いて「おかえりなさい、早かったのね」と笑顔で出迎えてくれるのを期待していたが、扉の向こう側のアリサの部屋はあまりにも静かなままだ。


レイラに「お嬢様はお夕飯までの間、お部屋でお過ごしです」と聞いたはずなのに、おかしいな。

首をかしげながらもう一度ノックする。


「アリィ?寝ているの?入ってもいいかな」

静かに扉を開けて中をのぞくと、そこにはアリサの姿も黒猫の姿もなかった――。


そこからはもう「アリィがどこにもいない!」と大騒ぎになった。

玄関から外に出た形跡もないし、部屋の窓は全て鍵がかけられていて窓から出たわけでもなさそうだ。

「お夕飯の時間になったら呼びに来てほしいとおっしゃっていたので、てっきりお部屋にいらっしゃるのだとばかり…」

レイラがおろおろしている。


念のため家の外もぐるっと回ってみたが姿は見当たらなかった。

レイラは「玄関から外に出たのだとしたら、さすがに気付いたはずだ」と言うし、だったらどこからどうやって家の外に出て、一体どこへ行ったのだろう。


食事の支度の手を止めて、ニコラスも一緒に探してくれたが、そのニコラスに

「嬢ちゃんのことだから、腹が減ったらケロっとした顔で戻って来そうな気がする」

と言われ、たしかにそれは一理あると思い、いつもの夕食の時間まではアリサの帰りを待ってみることにした。


アリサが自発的にどこかへ出かけて安全が確保できているのなら、とりあえず良しだ。

しかし、それが一番の問題で、王弟殿下の近辺に不穏な動きがあるという報告を受けて警戒を高めているところなのだ。


アリサから「テングサというカイソウを採りにまた砂浜に行きたい」とお願いされたときは、自分のかわりにフィリスが付き添うことになり、騎士団に所属しているかつての学友に警護を頼んで、彼の非番の日にあわせて日程を組んだ。

馬車の御者の一人として同行してもらったが、後日、

「天然っつうか、かなりズレてるっつうか、笑いをこらえる場面が多々あったけど、元気でかわいらしいお嬢さんだな。大事にしてやれよ」

と、仕事中の敬語ではなく、友人として昔交わしていたままの口調でからかわれた。


そんなことを思い出しながら、開けたままの扉の向こうのアリサの部屋と時計を見続けて待っていた。

もしも時間を過ぎても戻ってこなかったら…と思うと気が気ではなく、何も手につかない。


そして、間もなくその時間――というタイミングで、突然何かが青白く光り始めた。

驚いて立ち上がり、早足でアリサの部屋へと向かった。



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