表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/72

プロローグ

初投稿です。

17歳の夏休み。

わたし、鈴木ありさは高校2年生の夏休みをだらーっと過ごしていた。

学校の宿題はほぼ手付かず、攻略中の乙女ゲームと読みかけのライトノベル、編みかけのレース、、、クーラーのきいた部屋でのんびりやりたいことだけをやって過ごす至福の時間。

部活?―― 帰宅部です!

彼氏?―― いません!


さてと、昼寝でもしよっと。

明け方まで夢中でゲームを攻略していたせいで猛烈な睡魔におそわれた昼下がり、わたしは何のためらいもなく自分のベッドへとダイブして、ものの3秒で深い眠りについた。

……はずだった!



「僕と結婚してください」

なんて甘い声なんだろう。

目を開けるとそこには、跪いてバラの花束を差し出す金髪の男の人がいた。

えーっと、これどういう状況?

いまこの人「結婚してください」って言ってなかったか!?

どうやら屋外のベンチに座っているらしいわたしは、自分の置かれている状況を理解できないまま黙ってジーっと目の前に差し出されたバラの花束と金髪のつむじをながめていた。


相手が無反応であることを不審に思い顔をあげた彼と目が合う。

綺麗な碧眼、育ちがよさそうな端正な顔立ち――この人はまるで、いまわたしが攻略中の乙女ゲームに登場する王子様のようだわ。


そして気づく。

なんだ、これは夢か!

ゲームのやりすぎで憧れの王子様が夢にまで出てきちゃったのね!

そういうことならば、求婚を断る理由などないよね!

「喜んでお受けいたします。わたしの王子さま♡」

差し出された花束を両手で受け取って立ち上がった直後、跪いていた王子様も立ち上がり、強く抱きしめられた。


王子様はスラっと背が高くて、わたしは王子様の胸にすっぽりとおさまってしまう。

「うれしい。あぁよかった。絶対に幸せにするよ、プリシラ」

耳元でささやかれた名前に聞き覚えがなくてふと我に返る。

プリシラって誰!?


「エリオットおぼっちゃっま」

声が聞こえた方向を王子様の肩越しに見やると、そこには執事風の中年男性が立っていた。

顔が青ざめているだけでなく、唇がわなわなと震えているようだ。

その表情から察するに、この状況が執事さんにとっては喜ばしいものではないということがハッキリとわかった。


わたしは花束を王子様の胸に押し付けるようなかたちで両手をつっぱって体を引き離した。

プリシラとエリオット………ダレデスカ?

「なんでもありな夢の中の設定」という理解でほんとにいいんだろうか?

わたしはおそるおそる尋ねてみる。

「あのう、求婚する相手、間違ってませんか?」


エリオットはしばし茫然とした後にわたしの顔を両手ではさんでまじまじと見つめ

「何を言ってるんだ?きみはプリシラだろう?僕の覚悟の求婚に最高の笑顔で『よろこんで』と答えてくれたばかりじゃないか!」

と叫ぶように言った。

「えーっと、ごめんなさい。わたしはプリシラじゃないの。なんだか寝ぼけていたみたい。だからさっきの求婚はノーカウントってことで!ね?」


言葉を失うエリオットのもとに執事さんがやってきて

「そうですとも!エリオットおぼっちゃま、先ほどの求婚は無しということにいたしましょう」

と、ついさっきの顔とは打って変わった笑顔で言い放つ。

「な、な、、、セバスチャンまで何てことを言うんだー!」

両手で自分の顔を覆うエリオットと、そんな彼にそっとハンカチを差し出す執事、セバスチャン。


わたしは花束を抱えて、どうしようこれ返したほうがいいんだよね?と気にしつつ、この夢はいつになったら覚めるんだろうと考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ