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来世もハードモード確定です。

どうも、皆さま。

私、元某ブラック企業に勤務しておりました独身女でございます。


私の氏名ですが、なぜか思い出すことができないため割愛させて頂きます。


さて、そんな私の目の前には神様と名乗る黒歴史真っ只中の美青年が立っておりますが・・・



「お姉さん、僕は黒歴史とかじゃなく本当に神様なんですってー。そりゃー、まだ一年目ですけど正真正銘の神様なんですよー。」



などと、供述しております。



「いい加減信じてくださいよー。話が進められませんしー。」



この神様とやらは何やら人の心が読めるらしく、少し厄介な黒歴史です。

この黒歴史の言うことを信用するのであれば、どうやら私は蓄積された疲労がピークに達したことによる過労死を迎えたそうです。


みなさんも、ブラック企業にはお気をつけ下さいませ。お体ご自愛くださいね。



「ねーえー。お姉さん?そろそろ僕とお話を進めませんかー?いつまで、誰かに解説しているのかな?」



先ほどまでとは、打って変わって黒いオーラを放出する黒歴史・・・。語尾を伸ばす癖なのか、キャラ付けなのかは存じませんが忘れていらっしゃいますよ。


いや、ここはそろそろ目前の出来事から目を背けずにお話をする方が良さそうですね。



「はぁ・・・で、私は今どういう状況なのでしょう?」


「やっと話が進められるー、良かったー。お姉さんはね、今輪廻転生の最中なんですよー。」


「・・・は?」



思わずぽかんと口を開ける。


は!いけません!!

また呆けてしまって顔に出ています!

これでは、またいけ好かない上司に怒られ・・・あ、そうかここにはいないんですね。良かった・・・。



「まぁ、簡単に説明するとねー。人は全て輪廻を転生し続けているんですよー。で、お姉さんももれなく輪廻転生をする直前という訳ですねー。」


「そう・・・ですか。では、はい。よろしくお願いします。」


「うわ、急に物分りが良くなりましたねー。正直気持ち悪いですよー。」



なんだ、この黒歴史。

人が素直に応じたにもかかわらず、この言いよう・・・まぁ、これであの会社に行かなくて良いのであれば悪くはありません、従うまでです。



「ふーん・・・案外すんなりと従うんだねー。あ!ねぇ、お姉さんってゲーム会社でお仕事してたんだよねー?」


「そうですけども・・・?」



急に何だと言うのだろう・・・。

若者の話の飛び方にはついていけません。



「僕、今日本の乙女ゲームというものにハマっててねー。その中でも『亜麻色の天使と南国の王太子様☆』が今1番お気に入りなんだー!あれってお姉さんの会社の作品だよねー?」


「そうです。一応、私が責任者として進めていた作品です。思いのほかヒットしましたので、上司に終盤で横取りされましたが・・・。」



この黒歴史のいう『亜麻色の双天使と南国の王太子様☆』という作品はダブルヒロインを起用したもので、ヒロインによって難易度ノーマルとハードが選択できます。


作品タイトルに☆をつけたのは、言うまでもなく上司です。私の指示ではありませんので、お知りおきください。


ゲーム概要としては、昨今のブームに乗っ取り、婚約者の決まっている男性陣を、泥棒猫よろしく掻っ攫っていくものですね。


亜麻色の美しいミディアムヘアーを持ち、澄んだ空色の瞳を持つヒロインは男爵家の長女ミシェル・アン・ジェル。

難易度ノーマルのヒロインで、可愛らしい容姿をしているのが特徴です。


続きまして、亜麻色の美しいロングヘアーを持ち、深海のような濃紺の瞳を持つヒロインは公爵家の次女アシュレイ・エン・ジェル。

難易度ハードのヒロインで、大人びた美しい容姿をしているのが特徴ですね。


どちらも、違う方向に美少女であることに変わりはありませんが、ノーマルモードとハードモードでは攻略難易度が大きく変わるようにシステムされております。


ちなみに、ハードモードのアシュレイに関しては非常に困難な道のりのため、ゲームのキャラクターではありますが同情しております。



「そうそう!おもしろいゲームだよねー。僕、そのアシュレイちゃんが凄く好きなんだー。難儀な人生だから、見ていて飽きないよねー。」


「なるほど。黒歴史は、お腹の中まで真っ黒なんですね。」


「褒めても何もでないよー?」



私の皮肉もなんのその、ニッコリとかわされてしまいました。目が笑っていらっしゃいませんよ。



「ところで、私の輪廻?転生とやらはどうなったのでしょうか?話が随分と脱線しているように感じますが・・・?」


「いやいやー、そんなことないよー?お姉さんの輪廻転生先なんだけどねー、実は僕が今作り始めている『亜麻色の双天使と南国の王太子様☆』の世界にしようと思ってるんだー。」


「・・・は?」



2度目の呆けるタイミングがやって参りました。この黒歴史は私を何度呆けさせれば気がすむのでしょうか。


いや、それよりも世界を作る・・・?黒歴史もここまでくると大したものですね。



「いやー、僕って神様だからさー。自分の世界を作って上司に評価をしてもらうんだけどねー。そこで高評価を貰えると、僕の神様としての実績が上がるんだよねー。」


「・・・神様?」


「今更そこで疑問がでるのー?まぁ、いいやー。おもしろいゲームだったからさー。ついこの間から作り始めてみたんだよー。そしたら、思いのほか上司のウケも良かったんだよねー。」



神様の世界も縦社会なんですね・・・。

いや、でも実績を上げるための業務の規模がとんでもありませんね。狂った規模の黒歴史です。


もうこれ以上に驚く事なんて、そうそうありませんね。



「で、せっかくこのタイミングでゲームの制作側のお姉さんが輪廻転生するんだし、この『亜麻色の双天使と南国の王太子様☆』の世界に転生させてあげちゃいまーす!」


「・・・は?」


「しかもー!お姉さんは、さっきから僕にとってもおもしろい態度を取ってくれるので、特別にアシュレイちゃんにしてあげますよー。」


「・・・ええっ?!」



驚く事が早速あったことにもびっくりしていますが、笑顔で死の宣告をされています?!

アシュレイ(ハードモード)に輪廻転生?!

前世もブラック企業で割とハードモードだったにも関わらず、来世もハードモード確定ですか?!

一体私の前前世はどんな悪逆非道な生き物だったのでしょうか・・・。



「いやー、お姉さんの前前世はそんなに悪逆非道な生物じゃないよー。でもねー、いーっぱい僕を無視したり、ずっと僕を黒歴史って呼んでくれたからねー。ちょっとしたお返しだよー。」



そう言ってニッコリと笑う黒歴史・・・。目が笑ってません。目が!一切笑ってませんから!!



「それって、全然ちょっとじゃありませんよ!」


「あははー。まぁ、折角だから楽しんでよー。じゃあお姉さん、逝ってらっしゃいー。」






黒歴史の黒い笑顔を最後に、有無も言わせずに視界が歪んでいったー。


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