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FaTuS;転生譚  作者: 元気ハツラツマン
一章 学園へ
6/47

第六話 鷹視狼歩;生徒会

✣ ✣ ✣


 翌日、学園生活がスタートした。

 いざこざはあったものの、なんとか済んだ。

 ルベリオンのことはデウスが親の元へ出向き、事情を説明したところ、快くではないが、受け入れた。

 あの後、隴は回復薬を飲んだ。血は止まったものの、何故か傷までは癒えなかった。

 隴の体にはまだ無数の切れ傷が残っている。ルベリオンが怒って付けた頬の傷も。

「「行ってきます。」」

「ニャン。(行ってきます。)」

 誰もいない家に隴達はそう告げて、家を出た。

 昨日通った道のりを歩く。

 途中で会ったアルテノ達は隴の頬傷を見て驚いていた。

 誤魔化すことは無いが、隴はその時誤魔化し、嘘をついた。

 約十分、隴達は学園についた。

 途中で道を分かれ、クラスへと向かう。

 隴達がクラスに着くと、ロクバとヘレキコードは先には席に着いていた。

「あ、来た来た。早く座りなよ。」

「今日から学園生活です。気合を入れて行きましょう。」

 昨日のことが嘘みたいにロクバとヘレキコードは平然としていた。

 心の中ではきっと気にしているのだろう。隴もそうだ。

 今まで人を殺したことなどない……その感触はまだ手に残っている。

 そこで、チャイムが鳴り響いた。

 隴とセレネーは席へと向かった。テルムは隴について行き、隴が座ったタイミングで膝の上に飛び乗った。

 教室の扉が開かれ、教師が入って来た。

「よし、全員揃ってるな。」

 デウスはそう言って教卓の後ろに立つ。

「昨日の件だが、知っているのは君達と学園の教師だけだ。話しても問題は特にないが、一応覚えていて欲しい。あの場は仕方なく許可を出したが、今後は呉々《くれぐれ》も人を殺さぬように。」

「「「はい。」」」

 全員返事を返す。

 少し浮かない顔の隴を見て、デウスは教卓を軽く叩いた。

「取り敢えず、このクラスの生徒が一人減ったな。そこで、今日は新入生を呼んでいる。」

 デウスのその言葉に全員が愕然。

 新入生が入ってくるか、転入生、あるいは一人がクラスの繰り上がりは想像出来ていたが、流石に早すぎる。

 新入生となれば尚更のことだ。

「入って来い。」

 デウスがドアの方向にそう言うと、ドアが開いた。

 妖艶なる黒く長い髪、上気した頬、明るい肌、とても女性らしいスラリとした体型。

 その新入生はデウスの横に立った。

 生徒側を向いた顔を見た隴は口を開き、目を見開いていた。

『横顔は少し分かりにくかったけど!あいつは!』

 新入生は口を開いた。

「初めまして。新入生の『阿藤あとう 勇麗ゆり』です。」

 隴はその名を聞いた瞬間、椅子を音を立てて勢いよく後ろに倒し、立ち上がった。

 テルムは咄嗟の判断で武器化し、地面に突き刺さった。

 勇麗はそんな隴を見た時、驚いた表情をした。

「「どうして!?」」

 二人の息の合い様に皆は二人を凝視した。

「あんた、死んだんじゃ、」

「お前こそ、助けたはずじゃ、」

「なんだ?二人は知り合いだったのか?」

 二人を見てデウスがそう言うと、隴はデウスを見た。

「こいつは、元々俺の同級生だった。」

 その言葉に他のみんなが完全に呆気にとられていた。

「二人は知り合いでいいんだな?」

「は、はい。知り合いで大丈夫です。」

「そうか。とにかく、隴と勇麗は席につけ。」

 デウスにそう言われ、隴と勇麗は席に着いた。

「よし、これで六人揃ったな。隴と勇麗はまた後で話してもらうとして、まずは学園案内だ。」

 隴達は席を立った。テルムは猫に姿を戻し、隴の足に寄りかかった。

「よっと。」

 隴はテルムを抱き抱えた。

「ニャウ〜。(危なかったよ〜。)」

「ごめん。あの時は驚いて。」

「ニャウニャウニャウ!(罰としていっぱい愛でて!)」

「…分かったよ。」

 隴はテルムの頭を撫でる。

 テルムは癒されたような顔で笑っていた。

「あんたって猫好きなの?」

 勇麗が隴にそう言うと、隴は少し驚くも、返答した。

「猫だけじゃなくて、動物大半が好きだな。」

「ふーん。そう。」

「そこの二人、早く来い。」

 ドアで待っていたデウスを見て隴と勇麗は早足でデウスの元へ向かった。


✣ ✣ ✣


 学園はやたらと広く、端から端までが全く見えない。

「かなり案内したな。次は確か、」

「生徒会室ですか?」

「そうだな。だが、今生徒会役員が居るかどうかだな。」

 何だかんだ言いながら生徒会室へ向かうデウス。

 その後を隴達がついて行く。

 少し歩き、生徒会室へついたデウス達一同。

 デウスはドアをノックし、ドアを開いた。

「誰かいるか?」

 デウスの問いかけに反応はなく、シーンとしていた。

「居ないみたいだな。」

 隴の言葉にデウスは頷き、ドアを閉めた。その時、後ろから声が飛んできた。

「あれ?校長、ここで何してるんですか?」

 全員一斉に後ろに振り返った。

 そこには一人の女性がいた。

「お、丁度いいところに来たな。」

「もしかして、新学生の学園案内ですか?」

「その通りだ。」

 お見通しなのか勘なのか分からないが、女性の答えは正解した。

「会長、どうしたんだ?」

「新入生だって。」

「新入生か。皆腕がありそうだな。」

 会長と呼ばれる女性の後ろに四人が歩いてきた。

「自己紹介しないとね。初めまして。私は生徒会会長のカルネ・ロジア・バリアルよ。」

 会長のカルネに釣られ、他のものも自己紹介をする。

「俺は生徒会副会長のクロ・ミネリオだ。」

「私は生徒会書記のモリオ・グラリエです。」

「僕は生徒会会計のレキ・オリオードルだよ。」

はクノリチ・テングリア。生徒会庶務(しょむ)を担当する。」

 生徒会役員の自己紹介が終わった。

 隴は先頭を切り、自己紹介を始めた。

「新入生の蔵峰 隴だ。敬語は苦手だから、あまり使わないと思うがよろしく。」

「私はセレネー・ペンドラゴンです。」

「ロクバ・マーベリングです。よろしくお願いします。」

「ヘレキコード・モベリアルと申します。お見知り置き下さい。」

「フレア・ノヴァよ。私も敬語は得意じゃないから、多少は許して欲しいわ。」

「えっと、阿藤 勇麗です。」

 全員の自己紹介が終わると、カルネは手を顎に当てて全員をじっくりと見渡した。

 そして、カルネは隴の肩を叩いた。

「貴方、人を殺したわね。」

 カルネのその言葉に勇麗以外の全員が凍りついた。

「……どうしてわかる。」

 深刻しんこくに問いただす隴にカルネは少し笑みを浮かべた。

「心拍数が通常より多いわね。それに、貴方の利き手、震えてるわよ。」

 隴は右手を見た。

 テルムがずっと舐めている。

 確かに、小刻みではあるが、震えている。

「校長も知ってるんでしょ?このこと。」

「…全て、お見通しってことか。」

 そう会話する場所を見て勇麗は混乱した顔で慌てふためいていた。

「え?え?どういうこと?」

 落ち着きのない勇麗に隴は溜息をつき、言った。

「勇麗、俺は、この手で人を殺したんだ。」

「……え、人を殺したって、なんで。」

「…あの時は事情が事情だったんだ。俺だって最初は殺す気はなかった。けど、俺は奴を、皆を危険にさらした奴が俺は許せなかった。」

「…どうしてそうなったのか、聞かせてくれますか?」

 書記のモリオが問いただすと、隴は一度深呼吸をした。

「…丁度、昨日のことだ。俺とセレネーとフレアとヘレキコードとロクバで買い物に出かけてた。服に関して俺とヘレキコードは特に興味はなかったから三人の買い物が終わるまで外で待ってた。でもその時、店で爆発が起きた。俺とヘレキコードは当然ながら驚いた。そこでセレネー達が誘拐されたのを見たんだ。俺とヘレキコードは必死に追跡した。途中でデウスにも会って、後から合流する手筈てはずになった。敵の本拠地に着いたら、セレネー達は椅子に縛り付けられていた。敵も当然追撃に気づいていて、二十名以上で待ち構えていた。俺とヘレキコードは殺さずに動きを封じるためにわざと浅く可動場所を切った。待ち構えていた敵は全滅。俺とヘレキコードは勝ったと思ってた。でも、違った。このことを仕組んだのはルベリオンだった。そこでロクバが人質としてナイフを向けられた。俺は何も出来なかった。ルベリオンはただ俺に恨みがあってそういうことをしたって言ってた。俺は許せなかった。そんなことで女性を巻き込んだルベリオンを俺は許せなかった。そこでデウスが合流してきたんだ。ロクバにナイフを向けてた奴はデウスが倒し、ルベリオンは俺が倒すことになった。そこでデウスから殺害許可が降りた。だから俺は剣を振るった。でも、今でも思う。俺は本当に奴を殺してよかったのかって。」

 隴が話し終わると、モリオは隴の頭に手を置いた。

「相当、辛い思いをしたんですね。でも、その時、貴方が殺らなければきっと貴方は殺されていました。ロクバちゃんも殺されていたはずですよ。だから、貴方のやったことは間違いじゃない。人殺しも、良くわないけど、いたし方ないんですから。」

 隴はそこで一滴涙を流した。

「ニャウ?ニャン?(主人?大丈夫?)」

「あぁ、少し、ホッとしただけだ。」

 隴は涙をぬぐいだ。

 そんな隴を勇麗はまじまじ見ていた。

『こいつが涙を流すとこ、見たことない。』

 他のみんなもそう思っているだろう。いつも強気な隴。だが、今は弱気な隴。

 相反あいはんする隴が出て、他のみんなも驚いていることだろう。

「どうして貴方が殺らなかったんですか?校長。」

 会計のレキがデウスに言うと、デウスは頭を搔いた。

「隴が原因のことだった。終わらせるのは俺じゃない。」

 ムキに見えるが、そうではないデウス。

 モリオは隴の頭から手を退かし、デウスを見た。

「校長先生。殺害許可を出したのは少し安直あんちょくすぎたかも知れません。今度からは慎重にお考え下さい。」

「…了解だ。」

 デウスも思うところがあったのだろう。了承を得た。

「隴って言ったか?よく頑張ったな。」

 副会長のクロの言葉が隴の心に刺さった。

 隴は涙を流し、顔を落とした。

「ニャン!(私もそう思うよ!)」

 隴はテルムの頭を撫でた。

「ありがとな。」

 少し鼻声になっていた。その時点でどれ程(つら)い思いをしたか分かる。

 クロは隴の肩を二回叩いた。


✣ ✣ ✣


 十分泣いた隴は涙を拭い、生徒会役員に礼を言った。

「ありがとう。お陰で元気でたよ。」

「良いってことだ。困った人がいたら、助けるのが俺達生徒会役員の仕事だ。」

 クロはそう言って隴と握手を交わした。

「それは余の仕事なのだがな。」

 庶務のクノリチがそう言い、笑いが芽生えた。

「よし、とにかくこれで学園案内は終了だ。ここから少しの間自由時間にするから、適当にぶらぶらしてこい。今から三十分後にはクラスに着いとけよ。」

 デウスはそう言ってその場を離れた。

「にしても、涙を流すなんてあんたらしくないね。」

 そう言って勇麗は隴の背中を叩く。

「痛いなぁ。」

 隴はそう言って勇麗を見た。

 二人は見つめ合う。

「それにしても、久しぶりだな。」

「そうね。あれから三ヶ月ちょっと経つけど、調子は?」

「昨日のことを省けば上々だ。お前はいつからここに?」

「一昨日よ。」

「どうしてここに?」

「…全部、あんたのせいよ。」

 そう言って勇麗は隴をもう一度叩いた。

「いてっ。なんで俺のせいになるんだよ。」

「……あの日、あんたが私を庇って死んだ時、私は自分を責めた。それで、自殺を決意したんだ。」

「…………自殺したのか。」

 隴は呆れたように溜息をつき、勇麗の頭の上に手を置いた。

「俺が救った命をすぐ捨てるな。お前には生きてて欲しかったから助けたのに。」

「…私だって、最初は生きようと思った。でも、もう辛かった。」

「…そうか。」

 隴は勇麗の髪の毛をなで下ろした。

「ま、今からは新しい人生だ。気楽に行こうぜ。」

「…さっきまで泣いてたくせに。」

「ち、ちょ、お前な。」

 隴と勇麗は次第に面白くなり、笑いが起こった。

「これからよろしく。」

「こちらこそ。」

 そう言って隴と勇麗は握手を交わした。

「熱いわねぇ、恋愛って。」

「「うわっ。」」

 急に話しかけてきたカルネに二人は少し驚いた。

「ねぇ、そこの二人、生徒会に入らない?」

「え、でも、もうわく無いだろ?」

 隴の言葉にカルネは自慢げな顔で言った。

「それが枠あるの。しかも、丁度二つ。」

 二人を誘ったのはこのためのようだ。

「それは、どんな役員なんですか?」

「二つとも生徒会のボランティアみたいなものだから、そんなめんどくさいことは押し付けないわ。」

 隴と勇麗は顔を見合わせた。

「俺は特に反論はない。」

「私もないです。」

「そう、よかった。皆、生徒会役員に新しく入る二人だから、仲良くしてね。」

 生徒会役員は全員頷き返した。

「これからよろしく。」

「よろしくお願いします。」

 二人の挨拶を聞いて、生徒会役員は笑顔を見せた。

「よろしくな。困ったことがあれば副会長の俺に聞いてくれ。」

「風紀みたいなのも私が担当してますから、何かあれば真っ先に相談してくださいね。」

「風紀委員長もしてるよ。計算については僕に任せてよ。億までの計算なら暗算で出来るから。」

「頼れる人がいなくなったら余を頼るのだぞ。大抵の事は教える。」

「頼れる人達だから頼るところは頼ってね。」

「「はい。」」

 半ば強引ではあるが、隴と勇麗は生徒会に入った。

「時に隴くん。」

「なんだ?」

「その猫って『戎具なる猫(グラディウス・キリア)』だよね?」

「まぁ、そうだけど。それが?」

 テルムに興味を示すカルネに隴が問いただす。

「それがって、『戎具なる猫(グラディウス・キリア)』よ?懐かないで有名でしょ?」

「ま、まぁ、そうだけど。」

「このは隴くんに凄く懐いてるみたいだけど、どうして?」

「ど、どうしてって……どうしてだろう。」

 何とか誤魔化そうとする隴。

「簡単だよ会長。異世界からの転生者だからさ。」

 その言葉を聞いて納得するクロ。

 隴は困惑していた。

「だからね。でも、今まで転生者に懐いた事例は無いわよ?」

「そうだったか?まぁ、そうだったとすれば何か特別な力を持っているんだろう、彼は。」

 クロはそう言って隴を見た。

 隴は少し体をビクつかせた。

「そんなにビビらなくても何もしない。」

 クロは少しながら笑いかけた。

「ねぇねぇ、これから模擬戦しない?」

「え?模擬戦?」

「そうそう。生徒会に入るなら強くないとね。だから、模擬戦。」

 何故だか隴は納得していない。いや、当然ながら隴は納得していない。

 急な模擬戦の依頼。

「生徒会長と戦えるのは光栄だけど、まだ俺は授業があるし。」

「大丈夫よ。まだ二十分もある。」

「会 長 ?」

「げっ。クロくん。」

「貴女もまだ仕事がたっぷり残ってるんだ。模擬戦はその仕事が片付いてからにしろ!」

「ああああ!クロくんのケチ!」

「ケチじゃない!皆、急ぎ会長を生徒会室へ!」

「はーい。」

「分かりました〜。」

「仕方ない。」

「どうしてこういう時だけ息ぴったりなのーーー!」

 カルネは文句を言いながら運ばれ、生徒会室へ。クロは隴達に一礼してから生徒会室へ入った。

 隴達は唖然としていた。

「…なんだったんだ、今の。」

「…さ、さぁ。多分悪い夢でも見てたんじゃない?」

「そうか。悪い夢か。良かった……って、そんなわけあるかい!」

 隴はお得意ではないノリツッコミをかます。

 それを見てセレネー達が笑った。

「二人は面白いね。」

 フレアはそう言って二人に近づいた。

「あ!あと。」

 フレアはそう言って隴の胸倉を掴んだ。

「転生のこと、しっかり聞かせなさい。」

「……マジ?」

「えぇ。マ ジ よ 。」

 隴は今からでもすごく逃げ出したくなった。が、確りとフレアに捕まっていたため、逃げようにも逃げれなかった。

「あの、流石にご勘弁を、」

「逃 が さ な い わ よ ?」

「……勇麗、俺もう一回死ぬわ。これ。」

「あぁ、そう。どうか安らかにね。」

 隴はフレアに連れていかれた。この先どうなったかはご想像にお任せしよう。

 少し笑顔の勇麗にセレネーは近づいた。

「ねぇ、隴の知り合いってことは、貴女も転生者?」

「あ、うん。隴と死に方は異なるけどね。」

「…隴の死んだところ見たの?」

「……聞きたい?」

 勇麗の問いかけにセレネーは軽く頷いた。

「…ある日の帰り道、私と隴と、その他四名で学校から帰宅していた時だった。いつも通りワイワイ騒いでた。そこで、一台の車が突っ込んできた。」

「車?」

「移動手段の一つ。ここにはないみたいだから、もうそう言う死に方はないみたいだね。話を戻すね。で、その車は私を目掛けて突撃してきた。生身の人間が車にぶつかったら、まず助からない。その時、私は動けなかった。多分、呆気にとられてたんだと思う。で、急に体が押された。私は押してきた人に怒ろうとした。押されなければ死ぬという状況でね。その時、私を助けたのが隴だった。あの時は悲惨だった。見るにえない感じだった。私は問いかけた、なんで助けたのかって。」

「そしたら、なんて?」

「〈男が目の前に居る女を庇えなくてどうするんだよ〉って、笑いながら言ってた。あいつは自分の命よりも私の命を尊重してくれた。」

「隴らしいわね。」

「うん。でも、私には荷が重すぎた。罪悪感に駆られて私は自殺をした。それで、ここに居るってわけ。」

 慣れた口調で話した勇麗。実際はこちらの喋り方の方が慣れているのだろう。

「辛い過去ね。その場にいたら私も自殺してたかも。」

「でもね、今は自殺してよかったって思う。こうして貴女達に出会えて、隴とも再会できて。」

「貴女は、多分、幸運の持ち主ね。」

 勇麗とセレネーは笑い合った。

「で、貴女のジョブはなんなの?」

「それが、来たばかりであまり分かってないんだ。ジョブとかの説明はされてるんだけど、自分がどのジョブか分からない。」

「それはまずいわね。良かったら、私が手伝おっか?」

「え?良いの?」

「問題ないわ。私、セレネー・ペンドラゴン。セレネーとかセレって呼んで。」

「分かった。じゃ、お願いするねセレ。」

 勇麗とセレネーは意気投合。握手を交わしあった。

「なんか、私達脇枠感あるわね。」

「そうですか?」

「私達もどこか行く?」

「構いませんよ。」

 ロクバとヘレキコードは二人でその場を離れた。

「えっと、あと何分あるんだっけ?」

 疑問に思った勇麗の問いかけにセレネーが答える。

「そうね、多分あと十五分くらいじゃないかな?」

「教室に戻る?ここで話して遅れてもめんどくさいし。」

 勇麗が言うとセレネーは納得したように頷いた。

「そうね。」

 勇麗とセレネーは道成みちなり辿たどり、Rクラスに戻った。

「取り敢えず、ジョブの種類はわかる?」

Rクラスに帰っている途中で話を始めた。

「大体は知ってるよ。多分私は剣術タイプだと思う。」

「分かるの?」

「うん。私は隴と同じ道場で古来武術こらいぶじゅつを習ってたから、よく模擬戦をやったのを覚えてるよ。」

「古来武術?短剣使い?」

「短剣以外も使うよ。よく使うのは短剣だね。私は短剣じゃなくて片手剣を使ってた。」

「隴は短剣?」

「隴は太刀だよ。あいつは人間道じゃなくて修羅道に行ってたから、大抵の武器は使いこなせるよ。」

「修羅道。昨日使ってたわ。あれってなんなの?」

「…修羅道は、特にいいものじゃないの。人を殺すために編み出された技が大半。阿修羅を敬って剣術を習うのが修羅道。」

「……聞いていて良くはないわね。」

「でしょ?だからやめよって言ったんだけど、これが俺の道だみたいな訳の変わらないことを言って修羅道をやめようとしなかった。私は大変だったよ。模擬戦では本気でシバキにかかってくるし。」

「あははは。やっぱり隴と勇麗は面白いわ。」

「そう?」

 そんな他愛もない話をしながら、勇麗とセレネーはRクラスの中へと入った。

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