第三話 緊褌一番;入学試験に挑む
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入学試験当日。
隴はセレネーとテルムと一緒に家を出た。
「行ってきます。」
「行ってーきまーす。」
「ミャー!」
家には誰も居ない。
デウスとデアは学園の用事で先に家を出ていたため、家の鍵は隴が閉めることに。
鍵をポケットから取り出し、ドアに鍵をかける。
ドアを一度引き、閉まっているかを確認してから鍵をポケットにしまう。
「よし。行こう。」
隴がそう言って歩き出すと、セレネーはテルムを抱き抱え、隴の後ろをついて行く。
学園までの距離は大体八百メートル。徒歩十分もしないくらいだ。
『デウスの家が学園に近くて良かった。』
隴は少しホッとした。
セレネーはそれを見て少し不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?そんなにホッとして。」
「ん?……いや、なんでもない。」
少し間を置いた隴にセレネーは疑問を頭に浮かべる。
「フワ〜〜。」
テルムは口を大きく開き、欠伸をする。
歩いている途中、ジルとエイメル、アルテノ、フレアと会った。
フレアはアルカナムとサクラの子供。あの時は別用で出ていたため、集会に出ることが出来なかった。
練習相手として何度か戦ったことがあるが、特に弱い訳では無い。ほとんど隴と互角ぐらいだった。
「隴、君は剣術分野に入るのか?」
アルテノに聞かれ、隴は頷いた。
「そうだな。俺は剣術分野だ。確かセレネーとフレアも同じだったよな?」
「そうだね。私はお父さんが武器の扱いに凄いから、習おうと思って、習ったら見事に技術が上がっちゃってね。魔法を覚えようと思ったんだけど、覚えられなかったの。」
「私は両方が剣術主戦だったから。」
フレアはともかく、セレネーの言い方は完全に自慢のようなものだ。
「そう言うアルテノは何に入るんだ?」
隴が聞くと、アルテノは軽く上を向いた。
「僕は魔法分野に入ろうと思ってるよ。魔法は別に得意って訳じゃないんだけどね。」
「へぇ。エイメルとジルは?」
「もっと反応してよ!」
軽くアルテノを弄るように流した隴。
「俺は柔術分野だよ。」
「わ!私は!…遠距離分野、です。」
喋るのに慣れていないのか、エイメルは少し戸惑いながら答えた。
そんな話をしていると、学園の前まで来ていた。
「ここか。『全街帝位英孝学園』。」
全街帝位英孝学園という名前の学園。大きさは大体ギルド本部の倍ぐらいだろうか。
ギルド本部もかなりの大きさだったが、ここはさらに大きい。
「取り敢えず、俺達はここで一旦お別れだな。」
学園に入り、四つに別れた道。開放感のある中央党の支えにある指示表を見る。
向かって右側が剣術分野。それの一つ隣が魔法分野。右から三番目に柔術分野。最後に遠距離分野と別れている。
隴とセレネーとフレアは同じ道だが、エイメルとアルテノとジルは別の道だ。
「そうだね。幸運を祈るよ。」
そう言ってアルテノ達と別れた隴達一行。
真っ直ぐに会場へ向かい、会場へと入った。
「おぉ。」
「すごーい。」
「広いねぇ。」
「ミャ〜♪」
かなり広い会場。かなりの人数が居るが、それでも会場は半分以上空いている。
その時、鐘の音が聞こえてきた。
試験始まりの合図だろうか。
「よし。時間だな。全員、注目!」
その声に全員が前方を見た。
少し高いところに一人の男が立っていた。
マイクが前に置かれている。
「あ、お父さんだ。」
その男はデウスだった。
会場全体が少しザワザワと唸り付く。
「取り敢えず、試験を始めようと思う。校長のデウス・ペンドラゴンだ。剣術分野担当だ。ここでは魔神王という肩書きは捨てて″先生″や″デウス″と呼んでくれて構わない。今君達の前に的が六個あると思う。」
確かに、隴達の位置では見にくいが、的がある。変色した木柱だろうか。
「これはチグリクト鉱石で作られた的だ。」
かなり高価な鉱石。硬さもかなりのもので、頑丈に尖らせた鉄を砕く程だ。
「破壊してはいけないという規定はないから、切り崩しても大丈夫だ。俺が軽く手本を見せる。」
そう言って剣術分野の全生徒の前にある的と同じものがデウスの隣にあった。
「距離は大体は一メートルぐらい開けて欲しい。切り崩してもしも破片が目に入ったら大変だからな。」
そう言ってデウスは的から一メートル離れる。
「短刀の場合は、もう少し距離を縮めても問題は無い。」
デウスは壇上にある武器を手に取った。
「今から破壊しない例を見せる。」
そう言ってデウスは軽く武器を振った。
ガチンと大きな音がなり、会場中に響き渡る。
「今のように切りつけたようにすれば合格判定とする。因みに、弾かれたり、武器が折れるなどの場合は即退場となる。」
デウスは武器を肩に掛け、全生徒を見た。
「次は破壊の例だ。」
そう言ってデウスは腰を落とし、左手を前に出し、剣の鞘が背中にあるようなイメージを浮かべ、構える。
デウスは何も動かず、構えを解除した。
「このように破壊出来るなら破壊して欲しい。」
そう言うものの、デウスの前にある的はびくともしていない。
「すいません!それ、本当に破壊出来てるんですか?」
生徒が一人そう言うと、ちょっとした笑い声が聞こえた。
「あぁ。破壊の場合はこんなふうに斬り裂いてくれ。」
そう言ってデウスは的をつついた。
すると、金属が擦れる音が鳴り、それと共に上下が斜めに切れた。
会場中は歓声で溢れた。
「因みに、今の見えた奴、手を挙げてみろ。」
その言葉を聞いた途端、会場中が凍りついた。
その中で、隴、フレア、セレネーは手を挙げていた。
「お、そこの三人、一番手にやってもらう。俺みたいな速度でやってもいいし、普通に切ってもいい。それじゃ、開始。」
こうして強制的に隴とフレアとセレネーは最初にしなければならなくなった。
三人は前に出た。
最初にフレアが斬ることに。
「よし、それじゃあ、フレア。」
「はーい。」
フレアは腰に携えた武器に手を伸ばした。
「はっ!」
鞘から引き抜かれた剣は真っ直ぐに的を狙い、切り定めた。
耳鳴りのような音がなり、的が崩れ落ちた。
「合格だ。次、セレネー。」
「はい。」
セレネーは背に携えている鞘から武器を抜いた。
そして、セレネーは的を切り付けた。
的は崩れ落ち、地面で音を立てた。
「合格。次、隴。」
「はい。…テルム。」
「ミャウ。」
テルムは返事をし、光り輝いた。
全生徒達はそれを不思議そうにまじまじ見ていた。
そして、テルムが武器に変化し、会場中がざわめいた。
地面に突き刺さっているテルムを抜き、構えた。
黒く、ギザギザとした剣身が特徴的で、テルムの紅い目が装飾品のように輝いている。
「これでいいか?」
隴はデウスと同じ構えをし、全く同じように終わらせた。
了承を求めてくる隴を横目に、デウスは的を押した。
上段がバラバラに切り刻まれており、押した瞬間に地面にばらばらと落ちた。
「合格だ。もし隴以外バラバラに出来なければ隴は首席一位だな。」
そのデウスの言葉に場は大驚き。
その後、その場にいる全生徒がやったが、大破させたものはおらず、壊せたとしても少し亀裂が入った程度だった。
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「取り敢えず、全員の試験が終了した。何十名かは既に試験を落ちたな。」
何十名かは弾かれたり、武器が折れるなどして即退場。
「先ず、クラス分けだ。全部で五クラスだ。Rクラスから発表する。」
そう言ってデウスは先程の記録表を出した。
「先ず、首席。蔵峰 隴。次、フレア、セレネー、ロクバ、ヘレキコード、最後にルベリオン。この六名だ。今呼ばれた六名はヘルトについて行くように。」
そう言うと、一人が手を挙げた。
「今呼ばれた六名はついてきてくれ。」
そう言うヘルトに六名は集まり、移動を始めた。
隴、フレア、セレネー、ロクバ、ヘレキコード、ルベリオン(テルム省く)六人はヘルトについて行く。
そして着いた場所が一つのクラス。
「ここが今日から君達が主に使う教室だ。担当は織ではなく、デウスだから。」
そう言ってヘルトは部屋のドアを開いた。
六名は部屋に入る。
「そこまで広くはないんですね。」
「Rクラスは絶対六名って決められてるからな。そこまで広くなくていいんだ。」
女性の問いかけに的確に回答するヘルト。
「適当に座ってくれ。」
隴達の計六名(猫一匹)は椅子に座った。
「なんか雑談でもして待っていてくれ。織は別のクラスを担当するから、もうここを出る。デウスはあと少しで来ると思っといてくれ。」
そう言ってヘルトは教室を出た。
隴はテルムの頭を撫でる。
「ニャニャ〜。」
癒されているような声でなくテルム。隴はそんなテルムに微笑む。
「あの、その猫って、『戎具なる猫』ですよね?」
興味津々な表情で隴に問いかけてくる男性。
「そうだけど、君は?」
「あ、申し遅れました。僕の名前はヘレキコード・モビリアル。槍使いです。」
唐突の自己紹介に隴は少し戸惑ったが、返答するべきだと考えた。
「俺の名前は蔵峰 隴。使用武器は剣全般。えっと、そうだな。この猫は『戎具なる猫』だ。名前はテルム。」
「ミャウ〜。(宜しく〜。)」
隴はモンスターの言葉を聞くことは出来ないが、何故かテルムの言葉だけは理解が出来る。
「へぇ。テルムって言うんだ。」
女性が隴の元へ歩み寄ってきた。
「私はロクバ・マーベリング。一応、首席おめでとう。願わくば私が取りたかったんだけど、あんなものを見せられたら勝てるなんて思えないよ。」
隴は少し苦笑いをしながらテルムの頭を撫でる。
「ミャ〜ウ。(気持ちいい〜。)」
猫の性別はどうやら雌。雄と雌では懐き方に差があるという。
雄は基本的にムスッとした感じで、俗に言うツンデレで、雌は積極的に近づくタイプ。主人に嫌われたくないという気持ちと、愛でて欲しいという気持ちが混ざって積極的になるらしい。
「でも、隴。あの時貴方五割出てた?」
「いや、速度面でもまだ三割くらいだった。」
その言葉にロクバとヘレキコードは驚いた顔で隴のことを凝視していた。
「ま、そりゃそうなるよねぇ。」
フレアがそう言って隴の頭の上に腕を置く。
「お前、俺に近づく度に腕を頭の上に置くのはなんだ?癖か?」
「癖ね。」
清々しいぐらいの即答に思わず叫びそうになる隴。男性であれば女性に積極的に寄られれば興奮すること間違いなしだが、生憎と隴は特に恋愛経験など無し。仕舞いには好きな人に告白されたあと直ぐに死んでしまうという始末。
そんな言ってしまえば男の端くれみたいな隴がこれ如きで興奮できるはずもなく、ただただ目障りなだけ。
「別にいいでしょ?もしかして、胸乗せて欲しいの?」
「その巫山戯た言動が出来ないように縛り上げて閉じ込めるぞ。」
「きゃー。こわーい。」
一切怖がっている様子もなく、棒読みで返される。逆に楽しんでいる感じが否めない。
「セレネー。此奴、一発殴っていいか?」
「駄目よ。五割程度なら大丈夫だけど、それ以上出すと首が吹き飛ぶわ。」
そう会話をする隴とフレアとセレネー。
テルムは気持ち良さそうに眠っている。ロクバとヘレキコードは話についていけず、ただただ聞く耳を立てているだけ。
「私達、話についていけてると思う?」
ロクバがヘレキコードに問いかけると、ヘレキコードは顔を横に振った。
「ついていけているならこんな仰天した顔はしないですよ。」
「だよね。」
この時の二人の息の合い様は凄い。
一人、静かに目を瞑っている男がいる。
多分ルベリオンだろう。
「……そこの人!」
隴が話しかけると、ガタンと机に脚をぶつけ、痛がるルベリオン。
「な、なんだ?」
脚を撫でながら問いかけてくるルベリオン。
「話には参加しないのか?」
「…特に話すこともない。それに今ものすごく眠い。」
「そ、そうか。」
関係を築きにくい感じがすごく伝わってくる。
その時、教室のドアが開いた。
「遅れてすまんな。今日からこの教室の担任をすることになったデウスだ。知ってると思うが、宜しく。」
デウスはそう言って軽く一礼した。
「さて、明日からが本来の授業だが、今日しなければならないことがある。」
ルベリオンと隴以外は席に着いていない状態だった。
が、デウスは全く気にせずに話を続けた。
「明日、首席の隴は新入生代表挨拶をしてもらう。」
「…は?」
隴は驚き、テルムを撫でる手を止めた。
「ん?なんだ?知らなかったか?」
「い、いや、初耳なんだけど。」
フレアはニヤニヤしながら隴を見た。
「いいな〜。新入生代表挨拶なんて〜。」
隴は心の中でフレアを睨みつけた。
『クソ。あの女、絶対目に物見せてやる。』
謎に決意を固める隴。こればかりは仕方がないと思い、ため息を零した。
「今から紙を配る。その紙に名前とジョブ、それから使用している武器なども詳細に書いてくれ。もし武器に名前がついてるならその名前も書いて欲しい。」
そう言ってデウスは全員の前に紙を渡す。
その紙には詳細に書くようにと書いてあった。
「隴、お前の場合、武器の所に剣や槍ではなく猫と記載しろ。」
「おいおい、テルムは武器じゃねぇぞ。」
少し口調を変えた隴にセレネーとフレアが少し笑った。
「その方がわかりやすいんだ。」
大体は分かっていた隴は、言いたいことも言ったので少しスッキリした。
筆記用具をデウスが配り、紙に記載することに。
名前、年齢、性別、特技、苦手分野、使用武器、武器名、クラスなどかなり詳細に書かなければならない。
隴はスラスラと書き、筆記用具を机に置いた。
「書き終えたら回収する。」
そう言ってデウスは隴の紙を回収した。
その後、全員の紙を回収した。
「よし、今日の授業はここまでだ。全員、解散。」
そう言ってデウスは教室を出た。
隴は立とうとしたが、膝の上で気持ち良さそうに眠っているテルムを見て、立つのをやめた。
「ねぇ、これから暇?」
ロクバにそう言われ、隴は少し考えた。
「隴ってこれからお父さんと稽古じゃなかったっけ?」
セレネーにそう言われ、隴は頷いた。
「そうだな。その後なら空いてるぞ。」
「それっていつ頃に終わるの?」
「最近は一時間以上かかることが多くなってきたな。」
「え……」
「え?どうした?」
驚いた顔のロクバに隴は疑問を飛ばす。
「えっと、セレネーの下の名前って確か。」
「うん。ペンドラゴンだけど。」
「君のお父さんってことは、」
「魔神王だね。」
「「…………」」
ロクバとヘレキコードは同時に黙り込んだ。
隴もセレネーも何故黙り込むのか不思議で仕方がなかった。
「なんで黙り込むか分からないって顔してるわねぇ。」
フレアが苦笑いしながら隴とセレネーを見ていた。
「えっと、どういうこと?」
「あんた達似てるわねぇ。考えてみなさいよ。隴はただの人間。そのただの人間が魔神王と戦って耐えられる時間はどれくらいだと思う?」
「え?一時間以上だが、」
「それあんた。他の人で考えてみなさいよ。普通に考えたら、一分耐えられるので精一杯。ましてや一時間以上なんて。それはもう人間の域を超えてるわよ。」
隴はセレネーの顔を見た。
セレネーは『そうなの?』と言わんばかりにこちらに疑問の顔を向けてくる。
「ミャウ、ミャア〜?(ねぇ、稽古は〜?)」
隴にそう問いかけてくるテルム。
隴はそんなテルムの頭を撫で、言い聞かせた。
「もう少しだから待ってな。」
「ニャ〜。(分かった〜。)」
テルムはなんというか、理解力が良すぎる気がする。
「と、取り敢えず、また集まるならセレネー達でなんとか打ち合わせしといてくれ。」
隴はテルムは抱き抱え、早足で教室を出た。
「……えっと、お二人さん?」
セレネーがヘレキコードとロクバの前で手を振ると、二人は正気を戻したように我に返った。
「…あ、あれ?隴は?」
「今さっき出たわよ。」
「そ、そうですか。集まるのなら、時間を決めなければいけませんね。」
ヘレキコードがそう言うと、全員で考えた。
「そうね。今から一時間後って言ったら、十一時くらい?」
「そのくらいだと思います。」
フレアの言葉にヘレキコードが答える。
「ならギルド本部で待ち合わせで大丈夫?」
ロクバが聞くと、満場一致で決まった。
「えっと隴には誰が伝える?」
「私が伝えておくわ。」
ロクバの疑問にセレネーが回答を返す。
「じ、じゃあ、十一時にギルド本部で。隴は多分少し遅れてくると思うから、少し待ちましょうか。」
ロクバがそう言うと、全員が一斉に頷いた。
「じゃ、取り敢えず解散で。みんな、また後でね。」
ロクバはセレネー達に手を振り、先に解散した。
「私達も帰ろっか。」
「そうね。お先失礼するわ。」
「分かりました。では。」
セレネーとフレアはそう言って、教室を出た。
「僕も、帰るとしますか。」
ヘレキコードも教室を退室。
ルベリオン一人だけが教室に残っている。
「…あの男、必ず俺が潰す。」
狂気のような感じが漂う。怖い空気が舞う教室に一人、男は椅子から立ち上がった。
「そうだ。あんな凡人、俺に比べれば弱い。本気を出した俺に奴は必ずボコボコにされるはずなんだ。」
一人そう想像していると、教室の戸が開いた。
「なんだ?まだ居たのか?」
そこにヘルトが入ってきた。
「先生こそ、どうしてここへ?」
「生徒が誰か残っていないか教室を監視してるんだよ。お前、確かルベリオン・ゴリオドメンか。」
「そうですが、知っているんですか?」
「織は大体の貴族家系とは仲が良くてな。ゴリオドメン家のことも大体は知っている。無論、お前のこともな。」
「それ以上は素性の詮索になるんじゃないですか?」
「織は魔神王と最高神から許可を貰ってる。家系を調べることも、そのものの素性も調べて良い許可が出てる。ま、とにかく、隴に勝つ気なら、やめておいた方がいい。」
その言葉にルベリオンは口篭った。
「……どうしてですか?」
「奴の実力は本物だ。魔神王と戦って互角が意外と増えて来ている。」
「ッ!?……それは、本当なんですか?」
確かに信じ難いことだ。魔神王と互角という戦いを繰り広げるものは今のところ最高神と街長、副長の三名だとしか聞いていない。
「でも、魔神王は精々五割ぐらいだな。」
魔神王の五割の力はどれくらいかはあまり分からないが、五割でもかなりのものだと言われている。
「……どうすれば勝てますか?」
ルベリオンの問いかけにヘルトはため息をつき、ドアの方へ向かった。
「それぐらい、自分で考えるんだな。人に助けを乞うなどとは考えるなよ。」
ヘルトはそう言ってドアを開き、教室を抜けた。
ルベリオンはしばしの間考えた。
自分には何が出来るのか。人に助けを乞わずにどうやってあの生意気な男を討伐出来るか。
「…………」
ルベリオンは少し顔に不敵な笑みを浮かべ、ドアの方向へと向かった。
何か思いついたような顔だった。
ルベリオンの作戦は、今日、実行される。
『思い知れ。調子に乗ったことを後悔しろ。』
邪悪な空気がルベリオンの周りを漂う。
ルベリオンは何を考えたのか。