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夢は見るモノ  作者: OSS
1/1

ユメはみるもの

ユメを見た。

幼い頃、仲の良かった4人が集まって自分の夢を語るユメを

同い年の友人は、童話に出て来る様な強くて優しい魔法使いになりたいと言った。

少し年が離れた友人は、村の領主よりも頼りになる人になりたい言った。

大人になりたての友人は、悪い奴を倒して、みんなが平穏に暮らせる世界にすると言った。

そして自分は……俺は……



ーーー



窓から差し込まれた日の光を受け、ギアンは目が醒める。

さほど柔らかくもないベッドからゆっくりと体を起こし、一呼吸。

この前までは億劫でしかなかった目覚めも、晴れやかで清々しい気分で迎えることが出来た。

「……っと、さっさと支度せんと」

なんて感傷に浸っている場合ではない事を思い出し

ベッドから飛び降り、

手早く身だしなみを整えて短槍と荷物を背負い

友人の待つ酒場へと走り出した。



---



「おはよう寝坊助、どうやら約束がどうでも良くなる位のイイ夢をみれたみたいで何よりだよ」


席に着いて早々、対面に座る穏やかな表情の友人から

その表情とは対照的なトゲのある言葉を浴びせられる。

集まる時間と場所を決めた側が寝坊したのだから、怒られるのは当然である。

なので、これ以上怒りが募らぬよう

ギアンは素早く、誠実に、机に両手と額を密着させ

「本当にすみませんでした!」

っと、全力で謝った。


「……昨日の様子を見て予想はついてた」

「本当にすまんっ!」

「まあ、睡眠不足で来られるよりはマシだよ。

それよりも、王都へ向かうルートについてだけどーー」


こちらの失態を軽く許され、ギアンはホッと一安心し友人を見る。

ピッチリとした白のワイシャツと黒のズボンを着込み

銀色の長く伸ばした髪を後ろに束ねている、

この友人の名は『セセンタ』魔術師家系の三世代目魔法使いで、ギアンと同じ村で育った幼馴染である。

そんな友人と共に、ある目的の為に王都へ向かう所なのだが……


「--それで、徹底して夜は動かずに町を経由して、安全に王都へ向かおうとすると……早くても3日」

「……み、3日も?」

「ああ、どんなに急いでも3日かかる」


っと、話を聞いてギアンは溜め息を吐きつつ項垂れてしまう。

安全に行かなければならないのは、

2人が戦う事も出来ない素人だからと言うわけではない。

冒険者も目指しているギアンは、幼い頃から鍛錬を重ね

旅に出る前に、低級ではあるが数体の魔物を討伐した事もある。

そして魔法使いであるセセンタは、魔物討伐も兼ねての

魔法の鍛錬の為に、二年ほど村を離れ、討伐に身を置いていた程。

だが、安全に事を進めるのであればその方法を選ぶ。

っというのが、旅の際に話し合って決めた事の一つなので

ギアンは焦る気持ちを抑え、セセンタのプランに従う事にした。


「じゃあ、昼飯食って道を聞いて」

「次に向かう先なら問題ない。お前が夢をみてる間にしっかり話を聞いて回ってたからな」

「……そ、そうか」


聞いて、そのせいで遅刻したギアンは目をそらす。

そんなギアンを尻目に、セセンタは王都までの道程が描かれた羊皮紙を広げ見せる。


「これは……地図か。いつの間にこんなモノを?」

「ふふっ、すっごく綺麗な女性に貰ったんだよ。イイだろ?」

「えっ……あ、ああ」


なるほど。だからずっと機嫌が良いのか

と、ギアンはセセンタの様子を見てそう思った。


「さて、お前も起きた事だし、そろそろ出るとするか」


セセンタはとびきりイイ笑顔のまま、羊皮紙を折り畳んで懐にしまい。

傍に置いていた荷物を手際よく背負って、席を立つ。


「いや、俺、まだ飯食ってないんだけど」

「お前、寝起きだとパンしか食えないだろ?

なら歩きながら食べろ。遅れた分はそれで埋めろ」


言った後、セセンタは早々と酒場から出て行ってしまう。

「(……いや、俺の所為とは言え強引すぎるだろ)」

なんて思いつつも、特別機嫌が良いセセンタの姿に

ギアンは軽く笑いつつ、これ以上遅れないように後を追った。



ーーー



2人は町から出て、地図の通りに川岸の道を歩き進み。

陽が落ちる前に、次の宿泊地であるラビエンス村に到着

その後、まずは空き部屋があるか確認する為、出歩いていた村人達に挨拶しながら宿屋へ入っていく。


中に入ると、店主である初老の女性に暖かく出迎えられ

宿泊手続きの後、店主からのご厚意で夕飯を用意してもらう事になり。

2人は、スムーズに事が進むトントン拍子感に戸惑いつつも、促されるまま食事スペースの席に着いて、夕飯を待つ事にした。


「部屋さえ確保出来れば良かったのに、まさか料理まで……女将さん、イイ人だな」

「そう……だな、うん」


ニッコリと上機嫌なセセンタとは対照的に

店主の厚意を素直に受け入れられないギアンは

煮え切らないといった表情のまま窓の外を見ていた。


すると突然、大きな音を立てて玄関の扉が勢いよく開き

2人がその音に驚いて、玄関の方を見ると

黒ズボンに黒ポンチョ姿の綺麗な女性が、長い黒髪を靡かせて2人が座る席まで近寄り。

驚きの表情のまま固まる2人に向けて


「待ってたのよ?」


と、妖艶な笑みを浮かべて話しかけて来た。

『夢は見るモノ』をここまで読んで下さり、ありがとうございます。

初めての小説となりますが、最後までお付き合い下されば幸いです。

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