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現れたのは

朝焼けの太陽の光を反射した雲のような6枚の羽。光を反射し輝く麦ような黄金の髪、夕日が沈んだ後の藍が掛かった青の空の瞳。亜麻色の装束で豊満な体を包み、右手に叡智の杖を持っている熟女。

伝承で伝えられている女神が目の前にいることに驚愕し、皆は膝をつき首を垂れた。


「女神様、お助けください!!」

「この悪魔達から我らをお救いください!」


国王達は揃って女神に縋ったが、女神は憂いた顔を顰めるばかりだった。


「罪人どもが見苦しい事よ。

……バンリ、すまなかった。

こちらの世界の事なのに、無関係な者達を巻き込んでしまうとは………しかもその始末をそちらの世界に押し付けてしまい、本当に申し訳ない。」

「勿体ないお言葉でございます。

女神フローラの協力なくして、彼らの魂を保護することはできませんでした。

我らに保護のチャンスを与えていただき、ありがとうございました。」


女神の謝罪の言葉に、マリは最高礼を取り頭を下げる。

親しげに言葉を交わす神と聖女に大司教が目を剥いた。

切り裂かれた空間から、背が高く黒い異国の装束を纏った男と落ち着いた色合いの錦で着飾った男が進み出た。


「女神フローラ。この度我らの要請に応え、彼らの保護を認めてくださり、ありがとうございました。

これから彼等の魂の状態を見て持ち帰らせていただきます。」

秦広王(しんこうおう)、お気遣いかたじけない。

元はと言えば、この者達の犠牲者達じゃ。

当然のことである。できることなら、どうか全員連れて行ってたもれ。」


秦広王と呼ばれた男が女神と会話と交わしている間に、黒装束の男がマリに近づいた。


「万里、よくやった。彼らの状態はどうだ。」

(たかむら)(こう)、ダメです。

大分荒御魂に侵され、祟り神に近くなっております。

度々同郷の者が召喚され彼らを供養してましたが、その者も非業の最後を遂げた事による怒りと、それに加え現地人の怨恨も募り、魂魄が擦れてしまっています。」


フヨフヨと頼りなく揺れる異世界人の亡霊を、篁公と呼ばれた男が手に持つ扇で招いた。

煙管を口に含むとフーッと煙を彼らに吹き掛けた。煙は亡霊達を包みフヨフヨと纏わり付いてふわぁと消えた。

篁は眉を顰め煙管をマリに預けると、秦広王へ向き直り片膝をついた。


「秦広王様、四人共3魂の内2魂が潰れかけ、7魄の内4魄が消えかけております。

一層の事、2魂4魄を切り離しこの世界に残し、大母神の眷属にして神として祀っていただき、浄化したのちに我が方で回収した方が宜しいかと。」

「左様か。篁の見立てなら間違いなかろう。致し方無し。

では女神フローラ。この罪人どもは約定の通りに我らで預かり、然るべき罰を与え罪を償わせた上でこちらにお返し致しましょう。

そして彼の哀れな魂達を宜しくお願い致します。」

「罪人どもは好きになされるが良い。

ほんにこの愚か者達のおかげで、我が世界とそちらの世界に存亡の危機が訪れようとは全く予想もしてなかったわ。

この憐れなる魂達は我が眷属として預かろう。幸か不幸か其方と此方の間の子がおる。

彼の者に我の加護を与え、責任を持って供養させ祀らせよう。」


女神のこの言葉に、国王は目を剥いて口を開いた。


「罪人とは誰の事だっ!?

女神よ!なぜ貴女様の(しもべ)にして子である我らを見捨て、この異形にして異種族の野蛮人の味方をするのですか!」

「この無礼者っ!!」

「無礼はきさっ…ーーーーーーっ!!⁇」


己を引きずる男を見て、国王は絶句した。

赤黒い筋骨たくましい、腰布だけを巻いた大男。大きく裂けた口元からは牙が生え、大きくギョロリとした目。しかも、頭には二本の角がある。

王妃や魔術師長を捉えた者達も同様で肌の色が青黒かったり緑だったりと、明らかに人間ではない。


「万里、一年近くの付き合いだったのだ。

せめてお主から説明してやれ。大母神様や秦広王様のお手を煩わすな。」


無論私のもな。言外にそう言い捨てて、篁がマリに彼らを押し付けた。

マリはうんざりしたが、謁見の間にいる者達には説明が必要だと思い直し、国王達に向き合った。


「改めて自己紹介致しましょう。

地球世界の日本で冥官見習いをしております、小野万里(おのばんり)と申します。

これから長い付き合いになると思いますが、地獄に案内するまでよろしくお願いいたします。」


ジゴク…と諸侯が聞きなれぬ言葉を反復する。


「地球世界では人が死ねば家族がその魂を供養し、心穏やかになった魂をあの世に送るのです。

あの世で魂は10人の冥府の神により裁判にかけられ、生前の善行悪行から天国と地獄に送られるのですよ。

私の一族は此方の開祖篁公より1400年程前より、冥府の最初の審判の神・秦広王に仕え、現世に迷い止まる魂を回収してあの世に導く冥府の役人をしております。

ここ数年、現世の魂がいくつか行方不明になり、それにより多くの人間の寿命や命数が変わってしまう事件が起きておりました。

我々が調査を始めたところ、何人かの証言により異世界に誘拐されたらしい、という結論になりました。

篁公の指揮のもと時空を調査した結果、同じように自身の世界の綻びを調査しておられた大母神フローラの配下の熾天使と出会い、此度の異世界人の誘拐・虐待した上での殺害、並びに二つの世界が破壊されつつある事が明らかになったのです。

丁度帰還した元聖女である小林七星(こばやしななせ)の証言で、近い将来また地球世界の住民の拉致誘拐が行われるのは確実であると判断され、私が囮となり潜入捜査をする事になったのです。


……まったく怒りを通り越して呆れ果てましたよ。

どこまでも自分勝手で傲慢で……いったい何様のつもりなのでしょうね。

自分の都合と虚栄心の為に、無関係な一般人を誘拐し散々利用した挙句、その遺体や魂まで己の都合で貶める。

ーーー ちったあそのオメデタイ頭で他人の迷惑っつーもんを考えやがれ、このクズがぁっ!」


マリの瞳に現れるのは明らかな侮蔑と嫌悪ーーー。

怒っている時も感情的にならず、いつも静かに威圧し、正論で追い詰める彼女には珍しい事だった。

諸侯と他国からの使者は、立て続けに現れた奇跡に頭がついていかなかった。

側から見れば、まるで宗教画のようだった。

国家ぐるみで行われた犯罪に対して神が裁きに訪れたという、まるでおとぎ話のような光景ーー。


ーーー しかし、コレは現実だった。その事だけは皆理解できた。



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