映し出されるのは 3
*** 勇者と呼ばれた少年 ***
かえらなきゃ かえらなきゃ
こうこうさいごのなつだったんだ おれたちでさいごのやきゅうぶだったんだ
とくべつなぶいんはいなかった ぎりぎりきゅうにんでほけつはいない
おれらがさいごのぶいんだった いつもじゅんけっしょうでおわってたけど
ことしはけっしょうまですすめたんだ
なのにさいごのいっきゅうをうとうとしたら
いきなりなにかにすいこまれた
つぎにめをあけると しらないがいこくじんのおっさんたちが
おれをゆうしゃとよんで まものをたいじしてくれといってきた
じょうだんじゃない こっちはいまだいじなところなんだ
さっさとかえせといえば まものをたおさなくてはかえれないという
まものさえたおせば しょうかんされたときまでさかのぼってかえせるという
ほんとなのかはわからない でもしたがういがいにせんたくしはなかった
けんなどもったことなどないし いきものをころしたこともない
けんをもたされても うまくつかえずしつぼうされた
ほっとけ ばかやろう
みんかんじんのみせいねんをらちしといて なにいってやがる
なんとかかたちになったのでたびだったが
まものとやらはどうみてもぼうれいだった
だからばあちゃんにならったほうほうでくようしたら
おとなしくなってくれたので くようのしかたをたびのなかまおしえた
いろんなとこで べんりになりそうなものをつくって
ごらくがなかったから やきゅうやかーどげーむをおしえた
さいごにたちよっただいせいどうで とんでもないものをみつけてしまった
せいじょのみいらって どういうこと
そくしんぶつってとなりのしにあったけど あれってはんぶんじさつだから
とんでもないこんじょうといしがいる げんだいじょせいにはむりだ
それにこのかべのゆいごん
おれもこっちのことばで つくったどうぐのとっきょりょうのつかいみちを
ゆいごんとしてかいたけど なんだかきをつけないと
そうわかってたのに さいごににげるまえにたちよったかじしのこうぼうで
けんをうつとこをみていたら なかまだったきしに うしろからさされた
いしきはあるけど うごけないからだをひきずられ ろになげこまれた
かえせ かえせ かえせ
おれたちはあのひのためだけに がんばっていたのに
きゅうにんそろわないと しあいができない
おれのかわりがいたならいいけど
おれひとりがかけたせいで あいつらのどりょくまでふいになってしまう
かあちゃんにもとうちゃんにも まだなにもかえしてない
おれはちょうなんなのに みのるもさなえもまだちいさいのに
かえせ かえせ かえせ
四度変わる鏡。
少年は同年代の少年達と野球の試合の最中だった。
白熱する試合。みんなの信頼と応援を受けて最後のバッターボックスへ。
ピッチャーのボールが自分の目で捉え、打とうとバットを振ったその時に、魔法陣に吸い込まれた。
ビックリしてすぽ抜けたバットは時の魔術師長の顎にクリティカルヒットした。
平謝りする少年と山より高いプライドでなんとか怒りを理性で制し、魔術師長とその他関係者は前回通り異世界人の亡霊を魔物と偽り少年を丸め込んだ。
少年は武器を持ったことが無いことを自己申告したため、時の国王達は少年を鍛える事から始めなくてはならなかった。
この世界の常識と武術を学んでいく途中で、少年は野球とカードゲームなどの娯楽と、生活に便利になりそうな道具風車や水車やポンプを開発していった。
そして少年は討伐の旅で、魔物と言われているものが怨霊化した魂と気づく。
少年は辿々しくも供養を重ね亡霊達を鎮めるが、故郷での供養の仕方を旅の仲間に教えると、用済みと口封じの為殺された。殺したのは友人として近づいていた騎士だった。
少年の遺体を鍛冶場の溶鉱炉に投げ込み、その鉄で打った剣が件の聖剣だった。
その剣を打った鍛治師は国一番と言われた鍛治師だったが、この剣を作る際はまるで何かに取り憑かれたように寝食を忘れ、鍛冶場で狂ったように笑いながら打ち続け、剣が出来上がると何かに怯えたように逃げ惑い、足を滑らせて溶鉱炉の中に落ちて死んだ。
鍛治師の長男は亡き父の代わりに鞘と柄を拵え、剣を国王に献上するために登城した。
国王はその剣を少年の友人だった騎士に下賜したが、騎士はその剣を検分するために抜いたところ、いきなり周りにいた者達に斬りかかった。
国王は護衛騎士に守られ無事だったが、その場にいた多数の王城関係者と鍛治師の長男が犠牲になった。
最終的には騎士は近衛騎士団に討伐された。しかしその剣はアラルコンの騎士達や貴族達の間で転々と持ち主が移り変わり、持ち主は皆少年を殺した騎士と同じ運命を辿り、剣は教会に封印される事が決まった。
その頃には少年が殺された鍛冶場のあった鉱山を中心に、その山脈一帯の生態系がおかしくなっていた。
植物はまるで意思があるかのように人を惑わせ、凶暴化した動物達が人々を襲うようになり、鉱山は閉鎖された。
少年が討伐隊の仲間に教えた供養の方法は、伝わらなかった。
花嫁が制定させた特許という制度の特許料というモノにアラルコン上層部が着目したからである。
初代聖女のもたらした新しい農法が国の自給率を押し上げ、伝えた便利な農具の特許料が国庫に少なからぬ貢献をもたらしていた。
また、国境に怨霊の影響がある地域は他国に併呑されていたが、魔物を退治できる者を召喚できたのはアラルコンのみであったため、聖女と勇者の召喚を依頼するための依頼料を隣国より搾取するようになっていたのである。
聖女と勇者の召喚は一種の財源をもたらす手段となってしまったのだ。
そして二人目の聖女が召喚される。
謁見の間に集った国内の貴族・隣国の使者達は、愕然となった。
鏡に映った者達には、皆この城や教会に偉人として名や肖像画や胸像が残っている者がいた。
そして気づく。
4人の異世界人の亡霊の足元で荊の鎖に繋がれ、無造作に転がらされている者達が、この鏡に映っていた登場人物達である事を。
25年前先代聖女を召喚したのがアラルコンの現首脳部の父達であり、かつて聖女と討伐隊の隊長として同行した者が、そこにいる大司教と騎士団長と魔術師長であった事を。
ーーーそして鏡が5度目の過去を映し出す。




