彼女とやけ酒と
俺は彼女の背中をさすりながら、自販機で買った水を渡す。
彼女の顔は、涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃだ。
うっと嘔吐くと、下水口にさっき飲んだ物と、食べ物を吐く。
カシスの赤い色が血を含んでいる様で痛々しい。
「飲み過ぎなんだよ、お前。いいから、それで口濯げ」
「うう、ご免ねぇ」
どうも、4年付き合ってた彼氏に振られたらしいって彼氏いたのかよ。
そのやけ酒飲みに付き合わされた俺は……まあ、お人好しなんだろうな。
「もう二十六よ? クリスマス過ぎた女なんて……」
「アラサーで結婚してない人だって多いだろ? まだ大丈夫だって」
長い付き合いなので俺にしかこういう情けない所を見せない。
信用してくれてるのだろうと、ある意味男冥利に尽きる。
「タクシー呼ぶか?部屋まで送るよ」
「何でそんなに優しいのよ、あんた」
う、そんな目でみるな、何かこみ上げてくる。
ゲロか?
……ゲロだった。
盛大に彼女の前で貰いゲロした俺を見て彼女はぐしゃぐしゃの顔で盛大に笑った。
「お前は、その……笑ってる方がいいよ」
「ゲロってから言う台詞?」
「連れゲロした仲だろ?」
お互いに笑い合う。
最後でやらかしたよ。
……俺の告白は当分先になりそうだ。