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今度のヒーローは……悪の組織の戦闘員!?  作者: marupon
第四部:『アルカー・テロス ~我はアルファであり、オメガである~』
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第一章:04

大変お待たせしました

ようやく無事新作ゲームも発売できましたので、続きを執筆していきます。



・・・



基地の表面から生えるように立ち並ぶ排気口の一つを潰し、そこから内部に侵入。

そのまま隔壁を溶かして破り、適当に施設を破壊してまわってきた。

海中基地だと言うのに広い通路を走り、その構造を少しずつ把握する。


暴れまわるアルカーを抑えるためにわらわらとフェイス戦闘員がむらがるが、

その中に改人の姿は、やはりない。



(……改人どもが粛清中、というのは本当のことか……)



ここまでされて戦力を出し惜しみにするのも奇妙だ。どうやら通信機から

流れてきた内容を信じてよさそうだ。



ノー・フェイスと共に戦い、鍛錬を積み、また精霊の力が大きく覚醒してきた

今のアルカーにとって、フェイス戦闘員程度の相手ならさして脅威でもない。

まして狭い施設内だ。一度にかかってこれる数もたかが知れている。




もっとも、ここが敵の胎内だと言う点は忘れてはならない。

背後で隔壁がガシャリと閉まり、前方にひしめくフェイスが押し寄せる。

その雲霞の如き群れを捌きつつ、その後方から何かが迫ってくるのを

感じ取った。



(……重火器の類か)



音からして、自走式の大口径火砲だ。フェイスダウンは武器の類を用いることは

滅多にないが、自分たちの基地内、アルカー相手にならかえって遠慮なく

使用できるということか。


配置についた小型の自走砲が、間髪いれずに火炎を吐いて砲弾を射出する。

どうやらフェイス戦闘員ごと巻き込んで潰す腹づもりのようだ。



「"フラカン・リボルバー"ッッッ!!!」



飛んできた砲弾――秒速1800mを越える速度の実体弾だ――を、火炎をまとった

回し蹴りで弾き飛ばす。壁にめりこんだその弾は一拍おいて炸裂する。

炸裂した榴弾も、その破片自体が音速を遥かに越えている。

単純な機構の火砲と砲弾だが、基礎性能そのものが人類のそれを大きく越えている。



が、アルカーはそのさらに上をいく。

飛散する破片を受け流し、続けざまに放たれた第二射も回避する。


手近にいたフェイス(哀れにも蜂の巣だ)をひっつかみ、"力ある言葉(ロゴス)"で

炎に包ませる。そして自走砲に向け射出する。



「"ウルカヌス・イグゾースト"ッッッ!!」



爆炎を曳きながら火の玉と化したフェイスが、自走砲に着弾する。

直後、直径2mほどの火球を発生させ自走砲を溶解させる。

その隙をついて前方に突撃し、閉まりかけた隔壁をこじあけ侵攻を続ける。



……通信機から伝わる相手の様子を見るに、どうやらヒュドールが

キープ・フェイスの元に現れたようだ。

"野暮用"とやらが済み、改人たちをこの基地から連れ去るのが目的らしい。



(……さて、どうするか……)



改人たちを外に出すのも、好ましくない。

一人ではやや心許ないが相手の動向を一方的に知れるというアドバンテージがある。

ここは改人たちの脱出を抑えるべきだが……




ばぎり、と耳障りな音がひびいて通信機が沈黙する。

軽く舌打ちして、もはや用をなさなくなったそれを捨てる。

おそらくヒュドールが、これ以上の情報をこちらに与えるのを良しとせず

送信機側を破壊したのだろう。



「サービスは終わり、ということか」



これで向こうの動向はわからなくなった。

悔しいが無理をしても一人では返り討ちにあうおそれがある。

基地の破壊も、かなり進んだ。程度はわからないがそれなりの打撃を与えたはずだ。



できることなら、次の一手に繋がるもう一打を与えておきたいが……




「な……なんだぁ!?」




引っつかんだフェイスを扉に叩きつけると、中からマヌケな声があがる。

……ピンときて歪んだ扉を無理矢理引きあける。



「ア……アルカーッッッ!?」



はたして中にいたのは、改人だ。通信の内容から彼らが監禁されていることは

知っていたが、ここにもいたか。

相手が動揺している間に懐にすべりこみ、その首をおさえる。



「ガ……グッ……!」

「ちょうどいいところにいたな。ここの道案内をしてもらおうか」

「だ、誰がそんな……アイダダダ! わ、わかった! わかったから!!」



反抗しようとする改人を掴む腕に力を込めると、あっさりと降参する。

改人が言うことを聞くか多少危惧していたが、どうやら自分たちが

フェイスダウンに切り捨てられたことを悟ったためか相手も

恨むものがあるようだ。



「……どうせ、アンタの目的はこの施設の中枢とか、どこを壊したらいいかとか、

 ついでに脱出するにはどこからがいいかとかだろ? いいぜ、教えてやるよ。

 このクソッたれな仮面どもに一泡吹かせられるなら、悪くねぇ」

「なら、聞こう。……この基地を浮かび上がらせるには、どこへ行けばいい?」



手を離して聞く。おおげさに首をさするとその改人は下を指差す。



「……位置で言えば、この真下ぐらいか? 四階層下に、

 基地の移動制御室がある。そこに行けば浮上させられるぜ。

 ――なあ、教えてやるからよ、オレは見逃してくれるだろ? な?」

「……」



黙って見返すと、やや焦ったように手を振る改人。



「……わ、わかった、わかったよ。自首? 投降? するから、さ。

 もうオレぁ命さえありゃ文句は言わねぇよぉ」

「……いいだろう。おまえの身柄はCETで拘束する。

 少しでも逃げる素振りをみせたら、背中からだろうがしとめる。

 いいな?」




ぶんぶんと縦に首を振る改人。心中で嘆息しながら、拳をかまえる。




「え、お、おい……!?」

「……"アルカー・ブロウ"」




全力を右拳に集中させ、極限までその熱量を一転に集約させる。

そして大きく振りかぶり――床へと、叩きつける!




太陽が落下したような激しい閃光と熱波、そして轟音を立てて

床が蒸発し、その下の階も炎が貫く。




いちいち階段やエレベーターを探して降りるなどしない。

――一直線だ。



・・・



「……アルカーは、派手にやってるな」

「あれも貴様の手引きだな?」



キープ・フェイスと腕をぶつけあい、つばぜり合いをしながら

基地を揺るがす振動に意識を向ける。

相手も自分たちの拠点が大きな打撃を受けつつあるというのに、

どこか楽しげな声音だ。




何か奥の手や策がある――というわけではないだろう。

ヒュドールはこの大戦闘員とのつきあいも長い。その性根は

よく知っている。




「楽しいか? この状況が」

「ああ。ようやく表舞台で暴れられる。

 鬱憤を晴らすには、状況は派手であればあるほど、面白い」




総帥も総帥で厄介な性質(タチ)だが、この男も面倒な性格だ。

フェイスダウン――総帥フルフェイスは己の目的に向け一途にまい進しているが、

この大戦闘員は自分の性能を誇示することを好む。




もっとも、誇るだけのことはある。

ヒュドール自身、その戦闘力に明白に圧されつつあった。




精霊の力を宿したヒュドール。数々の超常現象を発現させ、四方八方から

攻め込んでいるのだが――この最強の戦闘員は、体術だけでそれを全て捌いている。


見切りの速度が、あまりに速い。すでにこちらの動きは大半が読まれているようだ。

相手の背後に氷柱を生み出し串刺しにしようとすれば、その氷柱をつかまれ

逆に投擲される。水龍をぶつけてもあっさりと断ち割られる。




拮抗できているのは、相手が遊んでいるからだ。

もし本気で攻められれば、そう長くは持つまい。




(……そろそろ潮時、だが……)

「……もう逃げるのか?」




こちらの内面を透かしたように、キープ・フェイスが言葉を滑り込ませる。

流石に、容易く逃がしてくれそうにはない。




「オレとしては、もう少し遊びたかったんだがな……

 しかたない。貴様をたたきのめし、逃げた改人どもを始末したら――

 もう一度、遊ぼうじゃないか」




無感情なその仮面から残酷な言葉を吐き、大戦闘員の動きが変わる。

防ぎつつこちらの動きを見定める構えから、こちらを掴み押さえ込む動きだ。



無数の蛇が襲い掛かるような貫手の連打に、背筋に冷たいものを覚えながら

捌いていく。しかし、そう長くは保ちそうにない。




(……さて、どうするか……)




半ば他人事のように思案するのはヒュドールの性癖だ。

しかしその突き放した冷静な視線があればこそこの大戦闘員の猛攻を

皮一枚のところでしのげている。



が、一手間違えれば全てが終わる。その緊張感がごく短い時間を

ひどく長い感覚に変えていたが――




一際、強い振動が基地を襲う。ヒュドールとキープ・フェイス、

どちらもが一瞬体勢を崩す。




その隙を逃さず、飛び退る。あやういところでキープ・フェイスの手が

空を切り、距離をとることに成功する。

間髪要れず、氷の壁をいくつも生み出し、大戦闘員のめくらましにする。




ごくわずかな間隙、それを突いて自らの身体を液状化。

換気口へと侵入しその場を全速力で離れる。


(アルカーさまさまだな)



やはり奴を基地に引き入れたのは、正解だったようだ。



・・・



どぅん、と氷の壁ごと相手を貫く勢いでとび蹴りを放つ。

当て推量で攻撃を仕掛けたが、どうやら勘が外れたようだ。


氷壁を破砕したその先には――すでにヒュドールの姿はない。



「……チ」



軽く舌打ち(舌などないが……)をしてこきりと首をまわす。

どうやらまんまとしてやられたようだ。




(……意外と、やる)




手に入れたばかりの精霊の力を、よく使いこなしているようだ。

マヌケな大改人などより、よほど手ごわい。




「まぁ、逃がしたのは失態といえば失態だが」




いまいましく思う面もあるが、お楽しみが増えたと思えば悪い気分ではない。

もともと今回のことは総帥どのの余計な行為が原因だ。責任は相手に

押し付けておこう。




基地を襲った振動は、小さく継続的なものへと変化している。

キープ・フェイスはそれが意味することを既に悟っていた。




「……基地が、浮上するか」



・・・



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