第五章:09 ※挿絵あり
たいへんおまたせしております
・・・
――殴りつけた拳が、熱い。
ひねり伸ばした腕はわずかに震え、その切っ先からは白煙が昇っている。
融合した精霊、その全身全霊――そして、アルカー自身の激情をこめた一撃は
フルフェイスに伝わり、その力の経絡をずたずたにして吹き飛ばした。
数億年、数十億年も存在し続け、『人類の再創世』という神がかった計画を
企てた異文明からの来訪者は、その来歴にふさわしくないボロボロとなった姿で
崩れた壁にうもれ、力なくうなだれている。
それでも組織の長としての矜恃か、あるいはただ認識が現実に追い付いていないのか。
身体を震わせながらも、なんとかして起き上がろうともがくフルフェイス。
その耳に小さなピシリ、という音が聞こえ――今度こそ、動きを止めた。
小さな亀裂が入る音。それに続いて、瓦礫が崩れる音が部屋に鳴り響く。
精霊同士の戦いの余波にも耐え続けた、ホオリとホデリを守っていた結界が――
解き放たれたのだ。
それは、この場が安全になったということ。
すなわち、フルフェイスがすでに脅威ではなくなったことを意味していた。
アルカーはフルフェイスから意識をはなさず、ちらりと彼女たちに目をむける。
幸いにも――と、言うべきなのか――彼女たちは消耗しきり、
すでに気を失っているようだった。
幸い。そうだろう。
今この場で、彼女たちを守り通した男が力尽きたさまを見ずに済んだのだから。
(ノー・フェイス……)
アルカー……火之矢自身、いまだ平静を取り戻したわけではない。
ノー・フェイスと出会って一年もたっていない、ごく短い間柄。
だがその間に彼と築いた信頼は、なによりも深く強いものに成長していたのだ。
(だから――だからこそ、俺は勝てた。
だが――)
おまえとともに、勝利をあじわいたかった。
その無念が、火之矢の心をかきみだしていた。
「なぜ、だ……」
その乱れた心にフルフェイスのつぶやきは、癇に障るものがあったが――
怒りをおさえ、彼の方を見やる。
「なぜ、なのだ……」
「――いまだに、己の敗北が認められないのか。フルフェイス」
フルフェイスのもつ超常の力。それはアルカーの一撃によって寸断され、
もはや無力。その事実を受け入れられないのかと問いかけるも、フェイスダウン総帥は
かぶりを振ってこたえる。
「精霊の力、それが万全に発揮されたというなら――私は敗れ去るだろう。
口惜しいが……認めざるをえまい。だが――」
がらり、と瓦礫をおしのけなんとか片膝をつくフルフェイス。
だがそれが精いっぱいなのだろう、そのまま立ち上がれない。
「だが――私にはまだ、納得のいかない疑問が残ったままだ。
そうだ。ずっと……ずっと、考え続けてきた疑問が」
震える手を伸ばし、こちらにフルフェイスが問いただす。
いや――アルカーの中に居る、精霊に。
「なぜ……おまえたちは、人間に味方をする。なぜ、私を拒む。
おまえたちとて、わかっているはずではないのか。
人間は――いや、今の生物たちは感情をもてあましている!」
その問いを発するために、余力のすべてを費やすかのごとくまくしたてる
フルフェイス。まるで劇の終盤に、演者ががなりたてるかのように。
「人間を偏愛したのか? ちがう! そうではないはずだ!
おまえたちの愛はあくまで、この星に生まれた生命すべてに注がれているはずだ。
なぜだ。なぜ、人間たちをかばったのだ!
それとも、私が生み出した生命では認められないというのか!」
「おまえが完全な存在だからだ」
アルカーの声帯から発せられた答えに、フルフェイスが鼻白む。
「……なに?」
「なぜ、おまえの『人類再創生』に賛同しないか、その理由がわからないのは。
おまえが――『完全な存在』だからなのだ」
なにを言われているのかわからない。表情のない仮面からすら、そんなフルフェイスの
心情がありありと伝わってくる。
「……おまえはこう言い続けた。
今の生命たちは感情をもてあましている。その先に待つのは自滅であると……」
「……そうだろう。違うとでも……」
「ああ。違う」
アルカーからの即答に、フルフェイスが詰まる。
「違うのだ、フルフェイスよ。おまえは――最初の段階から、間違えていたのだ」
「なにを――」
「たしかに、今の生命たちは感情を制御できていない。感情が原動力ではなく、
強制力としてさえ働いている。それは――事実だ」
ならば、と言いかけたフルフェイスにたたみかけるように言葉を紡ぐ。
「だがフルフェイスよ。その先にある未来をシミュレートしたとき、
待っているのが"破滅"のみだという結論。それは――おまえが
『完全な存在』だからくだしてしまった、あやまちなのだ」
「どういう意味だ……」
ぼうぜんと、フルフェイスが返す。
「おまえは――はるか遠き異文明が、その星の歴史すべてを集約し生み出した
モニュメント。変則的な形ではあるが、星の終末に現れる精霊と同じような存在だ」
「……」
「わかるか、フルフェイスよ。おまえはすなわち、全てを内包したもの。
完成された存在、これ以上成長の余地がないものとして、生み出されたのだ」
「それが……」
言葉の意味をつかめず、フルフェイスがつぶやく。
「おまえの中にある感情も完成された、完全な状態だ。
存在しないのではなく、希薄なのでもなく、完全に制御された状態。
おまえはそれが当然のものとして、認識してしまったのだ」
傲然と言い放たれる言葉。それは数十億年の時を経て、はじめてフルフェイスに
与えられた自覚だった。
「おまえにとって、感情とは制御されてしかるべきもの。
だがそうではない。そうではないのだ。
感情とは――制御不可能。本来それが在るべき形。
やがてこの星が終わるその時まで、命たちはそれに振り回され、少しずつ、
少しずつ制御する術を体得していくのだ……」
「だ、だが……それでは自滅を……」
ふ、とわずかにアルカーが顔を伏せた。ほんのわずかにだけ。
「あるいは、その道もあるだろう。
だが――それでいい。それでいいのだ」
「いい、だと……? バカな!
生まれておいて、己に課せられた役目を果たせぬまま無意味に消えることがか!」
「そうだ」
今度こそ――
今度こそ、フルフェイスは動きをとめた。
「そうだ。その通りだ、フルフェイス。
おまえの言う通り、強すぎる感情に身を滅ぼされ、この星は消え失せる。
そんな未来もあるのかもしれない。だが――それを受け入れるのも、命の形なのだ」
そっと、モニターに映る青い光を見る。
地球。青い、命の星。我々が生み出した生命のるつぼ。
「滅びの可能性をも受け入れるからこそ、定められた滅びを乗り越える可能性を
手にすることができるのだ。
そう。我らを解析し、この力を制する術を得たおまえの思惑を――
アルカーとノー・フェイス、その両者が上回ったように」
「おまえ、は……炎の、精霊……」
ようやくに、今話している相手が誰なのか気づいたようだ。
アルカーは自分の口から、炎の精霊が言葉を繰り出しフルフェイスへ
語り掛けるのをただじっと聞いていた。
「おまえは完全な存在だ。だから予測される未来を変えることができない。
だが生命は不完全で――それゆえに、あっけなく滅びることもあれば
……変えようのない未来を、変えてしまうことさえあるのだ」
「……」
「ずっと……ずっと、おまえにそれを伝えたかった。だが、この星の生まれではない
おまえには、伝える術がなかった。今こうして、語り掛けられるのも……
ノー・フェイスとアルカーに、我らの力を託し続けた結果なのだ」
明確化された炎の精霊の意志が、急速に霧散していくのを感じた。
ふたたび、あいまいで不明瞭な存在へと帰化していくのだ。
その最後に、炎の精霊――ファイアーバードはフルフェイスへと言葉を残していった。
「ゆだねるのだ、フルフェイスよ。
我らもおまえも、役目はすでに終えたのだ。今生きるものたちを憂うのは――
彼ら自身が、するべきことなのだから……」
その言葉を最後に――ファイアーバードは火之矢の中へと帰っていった。
サンダーバードとともに……。
「……」
長い――長い沈黙があった。
ぶぅん、と小さな音がして壁の一面に出入口が開く。
「ゆけ……」
これが超常集団の長たるものの声か――とうたがうほど覇気のない声で、
フルフェイスが指し示す。
「私は……敗北した。すべてに納得がいったとは言えんが。
それは――揺るぎようのない事実だ」
力なく……ほんとうに力なく、フルフェイスがうながす。
「その先に、降下カプセルがある。そこから……地上へと、帰るがいい」
「ありがとう。それが、知りたかった」
はっ、と意識をひきもどし臨戦態勢にはいる。が、明らかに遅かった。
刹那、決戦場となった室内に大量の怒涛が押し寄せる。
ただの水ではない。精霊の力によって生み出された激流――
「――ヒュドールかッ!!」
「うかつだな、アルカー。わずかな間とはいえ、私を失念するとは」
一言も返せずに、舌打ちをする。
アルカー・ヒュドール。天津稚彦。
奴が先にここに至り、隙あらば漁夫の利をえようとしていたのは戦闘中にさえ
忘れてはいなかったというのに。それが意識の埒外にいくほど、
ノー・フェイスの"死"はアルカーにとって衝撃だったのだ。
(――くそ! ホオリ、ホデリ……!)
なんとかして彼女たちを確保しようとするが、おそらくはヒュドールも全力を一気に
投入してきたのだろう。アルカーも、自分を守るので精いっぱいだった。
しばらくの間意識が激流に飲み込まれ――その波がおさまったとき、
室内は破壊の限りを尽くされていた。
いや、室内だけではない。激震が施設全体をおそい、傾いでいく。
ばっ、とホオリたちがいた場所をみやる。だが、そこにいたのは――ホオリだけだ。
「ヒュドールッッッ!!!」
「地の精霊は、いただいていく」
声だけが部屋に残されていた。
急いでホオリのもとに駆け寄り、その安否を確認する。
消耗し意識を失ってこそいるものの、命に別状はないようだ。
だが、ホデリは――
「ヒュドール! ホデリを返せ!!」
「今は、預からせてもらう。案ずるな、無体にはせん」
とうてい信じられない返答は返ってくるが、おそらくは
もう遠くへ行ってしまったはずだ。
おのれの不甲斐なさに怒りをおぼえつつ、ホオリをしっかりと抱き上げ
立ち上がる。そして駈けだそうとしたその一瞬――振り返る。
視線の先にいるのは――自身の相棒。最高のパートナー。
これまでともに戦い、火之矢が唯一背中をあずけられる相手――
ノー・フェイス。フェイスダウンの戦闘員として生まれ、
正義に拠って立ち上がった男。
言葉にならない無数の思いが、火之矢の心を過ぎ去っていく。
手を伸ばそうとした。せめてその亡骸だけでも抱え、ともに地上に帰りたい。
だが、その想いを丁寧にねじふせ、振り切る。
ホデリが、奪われたままなのだ。そんな余裕はない。
もし自分が彼女よりノー・フェイスの亡骸を優先したなら――
あいつは、失望するだろう。
全力で駆け出し、ヒュドールを追う。
そうだ。あいつは、この俺を見てノー・フェイスとなったのだ。
その決意を、裏切れるものか。
「――ヒュドールッ! けして、逃がすものかッッッ!!!」
・・・
轟音と、断続的な振動が部屋全体を揺るがす。
いや、この部屋だけではない。おそらくはヒュドールが
制御中枢を破壊していったのだろう、いまやヘブンワーズ・テラスそのものが
地球の引力にひかれ、落下軌道へと向かいつつあった。
(……いま、私の力がこの施設には働いていない。
よって、大気圏突入の際にこの基地の90%は減速時の熱と衝撃に耐えられず
消滅するだろう……)
地上に被害は与えまい。それはとりもなおさず、
フルフェイス自身もここで消え失せることを意味していた。
あるいは、宇宙空間へと飛び出ていましばらくの時間をえられれば
力を回復させる見込みもあるやもしれないが……
(……いまさらだな)
もはやフルフェイスもそれを望んでいなかった。
ふしぎなことだ。存続し続けなければいけない、モニュメントなのが己のはずだが。
(命は終わる、か……)
これもまた、宿命なのかもしれない。
星から産み落とされた者たちの、終着点としては……。
ふらり、とたちあがる。けたたましい破砕音と共に柱が崩れ、天井は剥がれ落ち
部屋は惨憺たるありさまだ。まきおこる砂埃で床面も見えない。
そんななかでも――モニターに映る地球は青く、美しかった。
(……)
もうひとつ。この部屋の中でその存在を主張するもの。
膝から崩れ落ちながら、この激震の中でも微動だにせずいる――ノー・フェイス。
動力炉を失い、その全機能を停止しながらも――彼はどこか満足げだった。
そんな印象は、フルフェイスには珍しい感傷的なものかもしれないが。
(……フン)
腹の中でこれまた珍しく悪態をつき、きびすをかえして歩みさる。
壁面にたどり着くと手をかざし、その一部を開く。
中に収められた手のひらサイズの機械――有機的なフォルムをしたそれを手に取り、
ふたたびノーフェイスのもとへと歩み寄った。
ノー・フェイス。フェイス戦闘員。フルフェイスが生み出したアンドロイドの一体。
フルフェイス自身の理想、それを体現する者であり、生みの親を裏切った存在。
もう――動かない。
その胸には大穴が空いていた。雷の精霊が抜けていく際に、埋めていた傷が
露出したのだろう。その奥には本来心臓部があった。いまは、空っぽだ。
その空虚な穴に――手にした機械を、押し込んだ。
・・・
――はじめに気づいたのは、鏡だった。
目の前に、鏡がある。己の顔が、映っている。
感情のともらない、うつろな仮面。中心にともった赤い光が――
そこまで認識した瞬間、身体が勝手に動いていた。
目の前の鏡――否、さきほどまで戦っていたフェイスダウン総帥フルフェイスを
蹴り飛ばし、その勢いでおおきく距離をとる。
ざっ、と腕を交差させて防御態勢をとって反撃を待ち受け――そこまできて、
ようやく状況の不可解さに首をひねった。
「フン。覚醒するなり、臨戦態勢にうつるとはたいしたものだ。
いまいましいほどにな……」
とげとげしく、それでいてどこかさっぱりとした口調でフルフェイスが
語り掛けてきた。その声にわずかに動揺しながらも、ノー・フェイスは
警戒をくずさない。
(オレは……?)
記憶が意識に追い付いてくる。
そうだ。オレは――ノー・フェイスは、死んだはずだった。
失った動力炉、それを雷の精霊が代替していた。だがフルフェイスの攻撃により
精霊が引き剥がされ、機能を停止した。それはつまり死――
「おろかものめ。おまえはアンドロイド。私は生命を創りだせないと、言ったはずだ」
悪態がこめられながらも、なにかをふっきたような声音でフルフェイスが
内心の疑問に答えてきた。
「おまえは、あくまでも機械だ。かぎりなく人間に近くてもな。
機械のおまえに、死などあると思ったのか? おろかものめが」
やや反発を覚えながらにらむようにフルフェイスに目を向け――ようやく気付く。
その身はすでに満身創痍で、さきほどまでの全能をも思わせる力強さは、ない。
威圧感すら消え失せ、いまやその姿は組織の長でも超常存在でもない。
もっとなにか――孤高の存在に、見えた。
「頭脳を潰されたのなら、たしかに再生不可能だろう。
だが、たかが動力炉を失った程度なら――もういちど動力を与えてやれば、
再起動するだけだ。雷の精霊ともども、間が抜けた話だ」
「……」
なんともあっけない答えに、ノー・フェイス自身も鼻白む。
そうとうな覚悟をもって雷の精霊と別れをつげたというのに、肩透かしと言えば
肩透かしな結果だった。
とはいえ、あの場面でもういちど雷の精霊を身に宿すのは不可能だったろうが――
そこまで考え、はたと気づいて己の身体を精査する。
心臓部には――雷の精霊は、いない。いや、この身のどこにももう見当たらない。
かわりに返ってきた反応は、フェイスアンドロイド純正の動力炉のもの。
いや、これは――
「――おまえに与えたのは私の動力炉、その予備だ。
一般フェイスアンドロイドである貴様にくれてやるにはいささか
もったいない代物だがな……」
「なんだと……?」
たしかに、事実のようだ。
胸からつたわるエネルギーは、自身に本来備えられたものとは段違いの強さだ。
だが――
「――なぜだ」
「……」
当然の疑問を、ぶつける。
「なぜ、オレを助ける……」
「助けてなどおらんよ」
にべもなく切り捨てられる。
フルフェイスはあごで壁面――モニターを指し示し、続ける。
「わかるだろう。もはや、決着はついた。
私は負け、すべてを失った――このヘブンワーズ・テラスもまもなく地上におちる」
「……」
すでにこの場にアルカー、そしてホオリ、ホデリもいないことは気づいていた。
だからおそらくは彼らが勝利したのだろうとは予想していたが――その通りだったか。
(そうか……)
肩の荷が下りた思いだった。
アルカーが勝利したのなら、彼女たちは救われたのだろう。
もはや、思い残すこともない。
「アルカーは、ヒュドールを追い地上へと降下した。そしてここに脱出手段は
残されていない。つまり――貴様に、生き延びる道はない」
「……そうか」
生き返ったそうそう、もう一度"死の宣告"をつげられた。
おそらくはその言葉に偽りはないのだろうと思えたが、さりとて恐怖もなかった。
(目的は果たした。どのみち、一度は死んだ身だ……
あとは、アルカーに任せよう)
唯一無二、絶対の信頼を寄せる相棒、アルカー・エンガ。
彼がいるのだ。恐れることは、なにもない。
そんなノー・フェイスの姿を見てフルフェイスはいらだつような――
――それでいて、おもしろがるような。形容しがたい空気を醸し出した。
「我が計画も潰えた。いまさら見苦しくあがく気にもなれず、
このまま要塞と運命を共にしようと思ったのだが――やはり、つまらん」
「……」
まだ何かを企んでいるのか、とわずかに身構えたが。
続く言葉に、肩の力が抜けてしまった。
「一人で死ぬのは、面白くない。
どうせこれが最後だ。貴様も、つきあえ」
「……………………………………………………」
おそらく、ほんとうにがっくりと肩を落としていたのだろう。
そんなノー・フェイスをみて、くつくつとフルフェイスが笑い出した。
「いいぞ、ノー・フェイス。これが"笑い"か。
ひさしく、感じていなかった衝動だよ」
「……つまり貴様は、冥土の土産にするために、オレをよみがえらせたのか」
「ほう、ずいぶんと人間臭い言い回しを覚えたものだ。
いかにも、そのとおり」
人間が頭を抱えたくなる、という衝動をノー・フェイスは痛感した。
しばらく悶絶したあと、すべてをあきらめた笑いを漏らした。
「フ……いいさ。わかった。
そうだろうな。『神』というのは、そんなふうに身勝手なものなんだろうな」
「理解してくれて、助かるよ」
不思議なものだった。
これまで反発し、己の出自に後ろめたさを感じ、憎んでさえいたはずの相手。
それがこうして互いに死を迎えようとする今になり、初めて親近感を覚えた。
ままならない。それが、生みの親と言うものか。
――あるいは、フルフェイスも同じことを思っているのだろうか。
ぐりっ、と右の手首をつかみ、ひねる。
半身を開いてフルフェイスへとむきなおり、全身に力をこめる。
それにこたえフルフェイスも力をみなぎらせる。かまえらしいかまえもないが、
それこそが奴の戦闘態勢だ。
「さあ、くるがいい我が息子よ。
ともに死ぬまで、語り合おう」
「死ぬまで言ってろ」
轟音が、部屋を揺らす。
塵芥が天井から降りしきる中、
ノー・フェイスとフルフェイスは互いに拳をふりかぶり――
・・・
――その日――
一つの計画が、ついえた
悪の居城は無数の破片へと化していき――
ついには流星群となり 地上に降り注いだ……
そのほとんどは大気に突入するさなかに燃え尽き
わずかに残った残骸も海や何もない砂漠へと落下し
誰も傷つけることなく ひっそりと沈んでいった
その中に フルフェイスとノー・フェイスの姿はなかった――
・・・
「最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ」
具体的にはラノベ一冊分くらい。
(ちょっと挿絵も書きたいので第五部の開始は少しまってくだしあ)
……なお、ラストの文章はコミカライズ版ロックマンXのオマージュです。




