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今度のヒーローは……悪の組織の戦闘員!?  作者: marupon
第四部:『アルカー・テロス ~我はアルファであり、オメガである~』
114/140

第五章:02



・・・



「フェイスダウン、総帥……」

「フル、フェイス……!」



相応の覚悟を決めて踏み込んだはずだが、ノー・フェイスは己の足が

戦慄くのを感じていた。先日対峙した時とは、あきらかに違う。


地上に降りた時のフルフェイスは、遊びにきたかのごとき余裕を漂わせていた。

だが、今は違う。



王。自然とその単語が脳裏に浮かび上がる。

戴くつもりはさらさらないが、それでも目の前の相手が己自身を含め「フェイス」という

人造の命を作り上げた、人智を超える存在なのだといやがおうにも実感する。



だがノー・フェイスは吸い寄せられる視線をそらし、その脇に鎮座する土塊へと向ける。

――雷の精霊は、つまりはホオリはそこにいる。



「……」

「特に手は出していない。安心したか?」



白々しく告げるフルフェイスだが、もとよりノー・フェイスとつながった雷の精霊に

乱れた様子は感じていない。だからといって、平静でいられるわけでもないのだが。



「この結界を解くのは、私でもいささか骨は折れる。が、これは雷と地の精霊が

 力を融合して生み出したものだ。で、あれば――貴様を降した方が、早い」



ばさり、とマントをひるがえして一つ目の怪人が立ち上がる。

その姿はノー・フェイス――フェイス戦闘員とほぼ同一。だがその表層に施された

古代文字のような装飾だけが、わずかな差異として現れている。



「ノー・フェイスはつくづく貴様らにとって目障りな存在というわけか」

「そうだな。確かに、目障りだ。

 が、その存在そのものは――好ましくも、ある」



挑発するようなアルカーの言葉に悠然と答えるフルフェイス。

だがその返答は意外なものを含んでいた。



「……好ましい、だと? 貴様らを裏切った、このオレが?」

「裏切りは、好ましくないがね」



こつ、こつと硬い音をたてて玉座から離れ歩みだすフルフェイス。

一瞬その隙にホオリたちを奪還しようかと身構えたが、ぴりっとしたものを肌に感じ

思いとどまる。



(隙など、ないか……)



迂闊に飛び出せば、即座に仕留められていただろう。隣のアルカーもおそらく

フルフェイスに不意打ちを仕掛ける算段をし、そして同じく思い直したのだと

気配で感じ取った。



こちらの逡巡は当然相手も察したのだろう、ほんのわずかに首を傾け、そして外に――

漆黒の宇宙空間へと視線を巡らせる。その先にあるのは、巨大な青い宝石……

地球だ。



「――フェイスは私が生み出した。私自身を模してキープ・フェイスを創り出し、

 それを基に()()らを生産したのだ……」

「なぜだ?」



今すぐにホオリを救い出したい気持ちを抑え、問いかける。

もとより、ホオリの救出、フェイスダウンの壊滅は最優先事項だ。だがそれに準じて

「フェイスダウンの目的を知ること」も、CETにとっても重要なのだ。


手を出しあぐねている今、向こうがわざわざ語りたがるというならそれに乗ればいい。



「――貴様は以前、『人類をより優れた生物に進化させる』と言った。

 それが改人だと。だが、実際にはその改人たちをあっさりと切り捨てた……

 ここまで来たのだ。隠すことなく、貴様の本当の目的を、教えろ!」

「『より優れた人間、より優れた生物に進化した者たちこそ、次代を担うに相応しい。

 ――我々は"改人計画"を掲げている』」



ノー・フェイスの怒号に、淡々とフルフェイスが答える。いや、これは答えではない。

かつてフルフェイスが電波ジャックをした際に述べた演説だ。

それをそのまま、繰り返している。



「私の目的は――あの時言ったとおりだとも。何一つ、隠してなどいない」

「ふざけるな!」



アルカーが怒りをにじませ叫ぶ。



「質問の答えになっていないだろう。貴様は人間をもてあそび、奴らを次代の

 支配者にするなどとうそぶきながら、粛清しようとした。その矛盾はなんだ!」

「私がいつ、『改人を次代の支配者にする』などと言った?」



熱気のこもったアルカーとは対照的にひょうひょうと受け流すフルフェイス。

だがその短い返答にノー・フェイスの電子頭脳を思考がめまぐるしく駆け巡った。





(――親愛なる日本国民……いや、地球人類の諸君。

 我々は"フェイスダウン"。この地球に、()()()()()()()()()()組織である)


(我々フェイスダウンは、改人と呼ばれる()()を有する。

 彼らは君たち人類をもとにした、改造人間である)


(より優れた人間、より優れた生物に進化した者たちこそ、次代を担うに相応しい。

 ――我々は"改人計画"を掲げている)


(残念だが、諸君らの同意は求めない。

 我々は、我々が持つ力で君たちに強制する。

 ――服従か、死か、その選択を)





改人。()()()()。そして改悪人間。

フェイス戦闘員。――()()()()フェイス。


そうだ。あの時フルフェイスは、「より優れた人間が次代を担う」「我々は

改人計画を掲げている」とは言った。だが、その二つを繋げては、いない。



そも、フェイスとはなんなのか。人間を改造しより強力な兵器と化せる科学力を

有するフルフェイスが、なぜフェイスたちを大量に生み出す必要があったのか。

ましてや人々から感情を抜き取ってまで彼らに自我を与える必要性があるというのか。



――答えは、一つだ。改人のために、フェイスがいるのではない。

フルフェイスには、()()()()()()()()()()()()だったのだ。




「貴様の言う、『次代を担う、より優れた人間』とは――」

「そうだ。おまえたち……フェイス人造人間のことなのだよ」



時間にしてほんの一瞬、ノー・フェイスが稼働を始めてから得たすべての情報が、

フルフェイスのたった一言で活性化し、電子頭脳の中を駆け巡っていった。

その情報の奔流が一つにまとまり――その答えに至った。



「人間は、改良できない。その結論は、十年以上も昔に下していた。

 改良できないなら、一から設計し直すしかない。最初から完全で、完璧な人間を。

 ――それがおまえたち、フェイスアンドロイドだ」



それまでの超然とした口ぶりからほんのわずかに慈しむようなものをにじませ、

フルフェイスがノー・フェイスの答えを肯定する。

まさに、神のごとく慈愛をたたえ。神のごとき冷酷さをもって、宣言した。




「人類は、この地球が生み出した失敗作の袋小路なのだ。

 もはや彼らに未来は、ない。だから――私は、作り直したのだ。

 『地球人類』を……」



・・・



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