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今度のヒーローは……悪の組織の戦闘員!?  作者: marupon
第四部:『アルカー・テロス ~我はアルファであり、オメガである~』
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第五章:燃える流れ星



・・・



「……なんだ、これは……」


転送装置から転がりでて敵の攻撃に備え構えたノー・フェイスの眼前に広がったのは、

――あたり一面に散らばる、フェイスの残骸だった。


「……ヒュドールの仕業、だろうが……」


とりあえずは装置から出たところを襲われる心配はないとみて、アルカーも警戒しつつ

外にでる。敵の先制を受けるつもりだったノー・フェイスとしては、肩透かしだったが。


「ヒュドールが先に入り込んでから、相応の時間が経っている。

 ここを片付ける余裕がないほど、ここに兵力がないとも思えんが……」

「わざと残したな……」


アルカーが思案するように腕を十字に組み、ノー・フェイスが答える。


「――ヒュドールの対処に追われ、ここの警戒を怠っている。

 そう、思わせるための罠か」

「だとすればいくぶん、安直すぎるが」

「……」


ぐるりと首をめぐらし、あたりのフェイス戦闘員の残骸をみまわす。

確かに、その罠にひっかかるにはいささか時間がたちすぎている。

これがヒュドール侵攻の直後なら、あるいは思惑にはまっていたかもしれないが。


であれば……


「……メッセージ、というところだな」

「ヒュドールは招かざる客だが、俺たちは歓迎する、ということか」


多少苦いものをふくませてアルカーがうなずく。

先ほどのキープ・フェイスとの戦いでもわかってはいたが、フェイスダウン――

いや、その総帥たるフルフェイスはアルカーとノー・フェイスを求めている。

おそらくは、その身に宿した精霊の力を。



「……相手の思惑をすべて見透かしたわけじゃないが、それでもキープ・フェイスを

 失ったことまで、奴の計画の範疇とは思えん。それでも、余裕があるようだな」


アルカーが皮肉げに鼻で笑う。フルフェイスに、なめられていると感じたようだ。

が、ノー・フェイスは逆の印象を感じ取った。


「……あるいは、もはや自分以外に戦力と呼べるものがないのかもしれん」

「これまでさんざん使いつぶしてきたのにか?」


がらり、と残骸をあさる。見ただけでそれとわかるような違いがあるわけではないが。


「……この本拠地に、最後まで温存されてきたフェイス。

 使いつぶしてきた今までの連中と違い、できるだけ減らしたくない理由が、

 ある気がする」

「……」



アルカーが推しだまる。その様子をみて、ノーフェイスもかぶりを振った。



「いや、オレの悪い癖だな。今、敵地で詮索することじゃあない。

 重要なのは、これだけ長話していてもねずみ一匹姿を見せない……

 と、いうことだな」

「……そうだな。そのあたりは、御厨たちに任せよう。

 通信は……まあ、つながらないか」



持ってきた通信機に耳を当てて、肩をすくめるアルカー。

衛星間通信システムを介してつなげるよう調整した特殊通信機だったが、やはり

このフェイスダウン本拠地ではつながらないようだ。



「電波が入る程度の隠蔽措置なら、今まで見つからないはずもないしな。

 想定内だ、仕方ない」

「さて……」


ぐるりと室内をみまわす。すでにひしゃげた扉が、無残に口を開いているが。



「これまでなら、壁や床を破壊していきたいところだがな……」

「御厨から厳重に止められているからな」



なにしろここは宇宙空間(中からはわからないが)のはずだ。

うかつに機能を停止させれば、基地ごと全員おだぶつだ。


「フェイスダウンが消えるのはいいが……ホオリとホデリだけはな」

「忘れるなよ、ノー・フェイス。俺もお前もだ。

 まだ地上には、改人どももいるはずだし、な……」



釘をさされ、言葉を飲み込みぱしりと手を打つ。



「ヒュドールを探す必要はないだろう。

 奴の目的はホデリ……その身に宿した地の精霊。

 オレたちがフルフェイスと争っている隙をついて、奪う目算のはずだ」

「目論見はわかっていても、防ぐのは難しい、か……」

「もとよりフルフェイス相手だけで手一杯だ。こちらに策をめぐらす余裕は、ない」



漁夫の利を狙うヒュドールを警戒しつつ、強敵フルフェイスを倒さねばならない。

――もしノー・フェイスに無敵の力があったとしても、双方に対応できるとは

とても思えない。



「オマエが頼りだ、相棒」

「背中は任せたぞ、相棒」



がしりと手と手をぶつけあい、ノー・フェイスとアルカーは扉を抜けて

ヘブンワーズ・テラスの奥へと向かった――。



・・・



「……来たか……」


天津――アルカー・ヒュドールは壁の隙間からそんな二人の様子をうかがっていた。


液状化。"ヒュドール()"の顕現たるバハムートを宿した彼には、自らを

水と化してわずかな隙間に潜むことなど、たやすいことだった。


(……正規の適合者ではない私だが、年季が違う)


特に自慢するというわけでもなく、淡々と胸中でつぶやく。

こんな力など、欲しかったわけではないのだが。



そう、自分が欲しかったのは――



(……)



思索をうちきり、ずるりと隙間をはいずりまわる。

その軌跡に、ほんのわずかずつ水滴を残しつつ。



欲しかったものは、奪われた。

なら――奪われた分、奪いとってやる。



・・・



やはり大した抵抗もなく、"それ"らしい場所にまで到達した。

アルカーは幾分あきれながら、目の前に現れた扉を見上げる。


「フェイスダウンはもっと合理主義者じみた集団だと思っていたが……

 悪趣味なところもあるようで、安心したよ」

「……」


めずらしく皮肉まじりの嘆息がこぼれてしまう。ノー・フェイスもやや辟易した様子が

伝わってきた。



ここまでの扉は防火扉じみた簡素で武骨なものだった。だが、アルカーたちの前にある

巨大な扉はまったく違う趣だ。



黒塗りの観音開き扉は黒曜石にも似た光沢をもち、宝石のようなぬめりを見せている。

その縁は金で装飾され、華美……というよりはごちゃごちゃとしている。


そしてその両脇には……悪魔と天使をかたどった像が、柱の上に鎮座している。


これではまるで――



「……いかにもラスボス然とした扉だな」

「ラスボス?」


いぶかしげにノー・フェイスが問いかけてくる。返答に窮し、手を宙にただよわせ、

結局説明をあきらめて投げやり気味に答えた。



「……ちょうどフルフェイスみたいな奴のことさ」

「……なら、適したデザインということか?」

「そーだなー……」



怪訝さをさらに深めさせてしまったようだが、これ以上は火之矢の手に余る。

……桜田ならふざけつつも、適切な解説をしてくれたのだろうが。



「……いずれにせよ、ホオリの意識は強くなっている。

 ここがフルフェイスの玉座には、間違いない」

「小細工はいらんな」



ノー・フェイスの答えを受け、粗雑に扉を蹴り砕く。

精緻な装飾も価値の高そうな鉱石もばらばらに砕け散り、その役目を終えた。



暗い室内。いや――これは部屋が暗いのではない。

床も壁も天井も、全面がモニターとなっているのだ。その外を――

つまりは宇宙空間を映し出している。



その広大な室内の床に、大きな青い円が広がっている。地球だ。

青くみずみずしい命の星、地球。その上に――土塊が転がっている。



「ホオリ、ホデリ――!」



今にも飛び出しそうなノー・フェイスを軽く手で遮る。

火之矢は――アルカー・エンガの目はその先に鎮座する玉座に向けられていた。



黒ずくめの身体を赤いマントにくるみ、一つ目の怪人は重々しく言葉を発した。



「ようこそ、我が居城へ。

 アルカー・エンガ、我が写し身たるフェイス……そして精霊たちよ。

 今この場に"地球"を生み出したすべての者たちが再び集ったことを、うれしく思う」



・・・



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