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今度のヒーローは……悪の組織の戦闘員!?  作者: marupon
第四部:『アルカー・テロス ~我はアルファであり、オメガである~』
112/140

第四章:05



・・・



「おのれ……!」


ジェネラル・フェイスは転送装置の惨状を見て歯噛みした。


あたりには、フェイス戦闘員の残骸が散らばっている。

すべて、アルカー・ヒュドールによって破壊されたものだ。


もともと、このフェイスダウン本拠地――"ヘブンワーズ・テラス"に

アルカーとノー・フェイスを呼び寄せる……という指示は受けていた。

が――待ち構えていたフェイスたちの前に現れたのはヒュドールだった。



招かれざる客だ。当然彼らは迎え撃ったが……結果はこのありさまだ。

そも、アルカー・エンガに勝てなかったフェイスたちが、ヒュドール相手になら

太刀打ちできる……という道理もないのだが。



(だが、我らの聖域たるフルフェイスのひざ元でこれほどの狼藉を許すとは――!)



ふつふつたる怒りの矛先は、つまるところそれだ。

よりにもよって、総帥の居城たるこの場に侵入者を許すこととなるとは。



「いまだに奴の所在はつかめんのか!?」

「戦闘力はいざ知らず、精霊の扱い方という点にしぼれば天津はアルカー・エンガをも

 しのぎます。隠匿に徹されては、いかな我らといえども……」

「そも、残念ながらこの"ヘブンワーズ・テラス"は地上の施設と異なりもともと

 戦闘要塞としての運用を想定した設計をされておりません。

 侵入者を捜索するための設備があるわけではありませんので……」

「人海戦術だ! それしかあるまい!」



さすがに本拠地に詰めているフェイスたちはすべて最精鋭、高度な自我を確立させた

個体ばかりだ。だが今はそんな彼らでさえ、頼りない。



「所在をつかみ次第、その区画ごと地上へパージする!

 ――キープ・フェイス様を失った今、我らにはそれしかあるまい……!」

「……」



キープ・フェイスが、敗れた。

その事実はジェネラルのみならず、フェイス戦闘員すべてに大きな動揺を走らせていた。



アルカーに敗北しようとも、改人どもに嘲笑されようとも。

フェイスの頂点に位置する大戦闘員(キープ・フェイス)がそれら全てを圧倒する存在であるという

その事実が、少なからずフェイス戦闘員にとっての大きなよりどころとなっていたのだ。



その大戦闘員が――三人がかりとはいえ、アルカーたちによって倒された。

いざという時に頼るべきものがいないという喪失感が、ジェネラルたちを――



(――ふざけたことを!)



おもわず自身を叱咤する。



いざという時頼るべきもの? それこそ、ふざけた話だ。


自分たちは、フェイスアンドロイド。フェイスダウンを構成し、総帥フルフェイスの

目的を達成するための駒だ。

その駒が、他人を頼ってすがろうとするなど――こっけいもいいとこだ。

それこそキープ・フェイスが聞いたら、呆れ果てて失望することだろう。



(そうだ。駒だ! 私もキープ・フェイス様も、フルフェイス総帥の駒にすぎん。

 強力なクイーンが失われたなら、残った駒で盤面を動かすだけのこと)



「――改人どもを掌握した今、奴の目的は三つに絞られる。

 一つ、総帥フルフェイスの打倒。二つ、地の精霊の奪取。

 三つ、ヘブンワーズ・テラスの掌握。このうち前者二つは、今は無視していい。

 地の精霊は総帥のもとにあるし、ヒュドールは単騎で総帥に挑むほど無謀ではない」

「は……」

「先の戦いを見ても、奴の狙いは漁夫の利だ。アルカー・エンガとノー・フェイスが

 総帥と交戦状態に入った時を狙い、かすめとる。

 裏を返せば、奴らがここに来るまでは向こうも下手な手出しはしてこまい」



感情を鎮め、冷静に思案しまとめあげる。



「今、奴が動くとしたら――ここの制御を奪うか、フェイスダウンの技術を奪うか。

 その二点を念頭に捜索隊を組め」

「制御室、動力炉、情報室――それらを中心に捜索をはじめます」

「ツーマンセルのユニットを二組ずつ動かし、常に一定距離を離して行動させろ。

 どちらか片方が仕留められたなら、残った片方が全体に知らせるのだ。

 ――行け!」



感情を持ちながら、完全に制御しているフェイスはいつまでも動揺をひきずらない。

ひとたび指示をうければ即座に行動にうつる。

――そうだ。これこそが、フェイスのフェイスたるゆえん。

感情に左右される人間とは違う、"完成された人造人間"の誇るべき点なのだ。



(――腹立たしいとはいえ、ヒュドールは今の時点で脅威ではない。

 奴の暗躍さえ阻止さえすれば、とりあえずそれでいい。

 問題なのは――)



ぴしり、と小気味のよい音がなる。

内心舌打ちをし、転送装置をふりかえる。



巨大な円筒状のその装置は、黒くつなぎめのない表面に無数の光の筋を走らせ、

せわしなく明滅しだす。――地上で、転送装置が起動したのだ。



(問題なのは――アルカーどもが、ここに来てから、だ……)



・・・



「思ったよりも、早かったな」

「転送装置にプロテクトの類がかかっていたなら、これほど早くにゃ

 解析できなかっただろうな」



多少不機嫌そうに金屋子がふんぞりかえって答える。

彼からすれば、自身の手柄にするのは気が引ける――というところか。

ノー・フェイスに片目をむけながら、恰幅のいい身体をゆらして続ける。



「こっちがやったことといやぁ、『動かし方』を調べた程度だ。

 たぶん、天……ヒュドールが使ったっつーマスターキー。そいつの時点で

 プロテクトは解除されっぱなしになってんだろ」

「……奴らにしても、俺たちに来てもらわねば困る、というところか」



すでにアルカーへと姿を変えた火之矢が、いくぶん厳しめの声で言う。

これから向かう先は、フェイスダウンの本拠地だ。さしもの彼といえども、

緊張の色は隠せない。



「へ。いつも無口なおめぇだが、今日はなおさら静かだな。

 ぶるってんのか?」


竹屋がへらへらとした笑みを浮かべながら揶揄し、小岩井女医がきつくにらみつける。

なるほど、緊張しているのは火之矢だけではなかったらしい。


「そうだな。正直、おそろしい」

「ほ」

「言ってみれば、今からオレが向かう先は――お前たちが言う、"神"の領域だ」


空を仰ぐ。

"ヘブンワーズ・テラス"。そこに座すフルフェイスは、フェイスを生み出した存在だ。

そのフェイスの一抹たるノー・フェイスにとってはまさしく神に等しい相手だ。

力の差を度外視したとしても、畏怖がないわけではない。



「……それでも、行くんですね」

「オレに神を崇める概念はない」



小岩井の震えた声を切って捨てる。

掲げた信念に反するなら、神でも倒す。

だからこそノー・フェイスは、フェイスではない(ノー・フェイス)なのだ。



「行くか」

「ああ」



火之矢はただ一言うながし、ノー・フェイスも一言だけでかえした。

それ以上の言葉は、もはや必要ない。

手をさしのべなければいけない相手がいるなら、海の果てだろうが天の果てだろうが

手をのばす。それが――アルカー・エンガという男だ。


ノー・フェイスが感嘆し、憧れた存在(ヒーロー)なのだ。



潰れた円筒状の転送装置の側面が、小さな駆動音をたてて開いた。

アルカーと肩をならべて扉をくぐり、もう一度仲間のいる方へ振り向いた。



竹屋。金屋子。桜田。御厨。小岩井。

そしてここにはいない――ホオリと、ホデリ。



「必ず、連れて戻る」



ノー・フェイスの発した言葉が彼らに届くと同時に、扉は閉じた。



・・・



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