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報告された私



 いつものようにビラを配っていると、目の前にヒョロリとしたシルエットが現れてすっとその内の一枚に手を伸ばしてくれた。


 顔を上げると。ついこの間、偶然通りかかった頭の形があまりにも格好良くって、たまらなくなって強引に営業を掛けてカットさせてもらった男の子が。

 あの時はそこはかとなく、くらあい、淀んだ目をしていたように思う。だけど今日は口角が少し上がっていて、緩く微笑んでいるのが分かる。何だか以前見つけた時よりずっと幸せそうな雰囲気が、彼の周りに漂っているのが見えるようだ。


 そして、やっぱりこの髪型の方が―――ずっとこの男の子をカッコ良く見せる事ができる。

 きっとぱっと見の印象は別人に見えるかもしれない。


 私って結構やるじゃない?


 そんなワクワクが胸に湧き上がって来て、思わず私も満面の笑顔になった。

 すると、ニンマリ得意げに笑った私の顔に、ちょっと怯んだように彼が固まってしまう。


 あら、ちょっと驚かせちゃったかな?


 と思い口元を慌てて引き締めると「んんっ」と喉に手を当てて気を取り直したように、漸く口を開いてくれた。


「あの……この間、有難うございました!」

「はい、気に入っていただけた……ようですね?」


 彼はコクリと頷きを返してくれた。


 そうだろう、そうだろう。短めにカットして、慣れていない子でも簡単にスタイリングできるように気も使った。最近の私の最高傑作!と言っても過言ではない出来上がりだと思う。


 すると彼はひょろ長い背を少し屈めて―――私の耳に口を寄せた。


「……かっ、『カッコ良くなった』って……本当に言われました」


 彼はちょっと小声になって。それから―――パッと体を離して、真っ赤になった。




 ドキンと胸が跳ねる。




 ナニコレ。あまりに可愛くないか??



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