少しだけカッコ良くなった僕
機械工学科の女子二人のうち、一人は割と可愛い。そしてもう一人は―――かなり可愛い。
そのかなり可愛い方の女子が僕の前を通り過ぎてからピタリと立ち止まり。
パタパタパタと小走りに駆け戻ってきた。
「どうしたの?目がある!」
「えっと……」
出席番号が名前順なので、直前の番号のその子と何かと行事で一緒になる事が多い。だから挨拶や事務的な話くらいは交わす機会があった。その子が今、僕の目の前に立ってマジマジと僕の顔を覗き込んでいる。
「ずっと思ってたのよねー、もっとサッパリした髪型のほうが似合うんじゃないかって」
そう言ってニコリと笑われて、僕の頬に熱が上る。
褒められている……気がする。
「たまたま……切る店を変えて」
「もしかして美容室?」
「あ……そう、美容室だよ」
するとそこに割と可愛い方の女子が現れた。
「おはよー。ん?どうしたの……あれ」
「みて!カッコ良くなったと思わない?」
「……」
割と可愛い方の女子が、そう言った彼女の横にピタリと並んで眉根を寄せた。
「……うん、良いと思う」
「でしょ?」
「どうしたの?目が出てる……」
また言われた。やはり今までが長すぎたのか。
「美容室で切ったんだって」
「へえ、うん。イイね」
真顔で頷かれるから思わず、視線を逸らしてしまった。
ああ、何だか顔が熱い……。
二人しかいない女子に囲まれていたら当然目立つ。
講義が始まった後、友達が横の席に腰掛けた途端、僕の腕を突いた。ニヤリと笑って見せるとグリグリ脇腹を掴まれて―――笑いを堪えるのが辛かった。