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美容室で髪を切ったらモテました。  作者: ねがえり太郎
おまけ3 僕から見た彼女2
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彼女は女の子2

 平日の昼間なのに映画館は結構混雑していた。さすが『スペースウォーズ』のシリーズ最新作!僕はずっと楽しみにしていたけど、彼女も見たいと言ってくれたので渡に船。クリスマスツリーを見に行こうと誘ってくれたお返しに、家庭教師のバイト代でチケットを予約したのだ。


「4DXってナニ?3Dとは違うの?」

「勿論映像は3Dの立体映像なんだけど、その場面に合わせてシートが動いたり風や霧が吹いたりするんだ」

「じゃあ映画って言うより、どちらかと言うとテーマパークのアトラクションみたいね」

「僕も実は初めてなんだ。3D映画自体は見た事あるんだけど」

「……高かったんじゃない?」

「え?」


 図星を突かれてギクリとする。確かに普通の映画料金の二倍とは行かなくてもそれに近い金額が掛かっている。おまけに二人分……しかし、初めての(プレ)クリスマスデートなんだからこれぐらい頑張りたい。社会人の彼女は学生の僕を気遣ってか、いつもワリカンを申し出てくれる。入る店もお財布に優しい居酒屋やファーストフードなんかが多い。時には手作りのサンドイッチやお握り持参で公園でデートしたりすることもある。

 でも、男ですから!今日ぐらいちょっとだけ見栄を張らせて貰いたい。その為のバイトでもあるのだし。まあ半分はゲームに消えたけどね……。


「ちょっとだけ、ね。でも大丈夫、僕が見たかったから誘ったんだし」


 余裕に見えますように、と願いながら笑って見せる。すると彼女は目を細めて向かい合い、僕の手を取った。その手を胸の前でキュッと握り、眼鏡越しに僕を見上げこう宣言した。




「じゃあ、食べ物と飲み物は私のおごり!ポップコーンはLサイズにしようかな?奮発しちゃう!」




 ふわりと微笑む彼女の笑顔に、惹き込まれるように頷いた。それから彼女に手を引かれるままカウンターの列に並ぶ。周りを見ると似たような男女の組み合わせが目についた。つまりはデート中のカップルなのだろう。

 こんな場所で彼女と手を繋いで列に並ぶ自分が不思議だった。高校生の『女なんて』とヤサグレていた自分に教えてやりたい。大学生になったらお前にも彼女が出来るんだ。しかも性格も良くて見た目も可愛い……。


 いつの間にかこんな行為も自然になって来たなぁ、なんて考える。最初彼女から手を繋いで来た時はドキドキして心臓が口から飛び出るかと思ったし、手に滲んだ汗が気になって嫌われないかってビクビクしていた。

 だけど今では、僕の手をしっかり握っている彼女の手……女の子の手はこんなに小さいんだって感動する余裕も出来たし、人の手の温もりって気持ちを落ち着ける効果があるなぁ、なんてしみじみ感じ入ったりしている。


 あの時勇気を出して、美容室に踏み込まなかったら?


 そして思い切って告白しなかったら―――今頃僕はどうしていたんだろう?恋人なんていなくても大丈夫、どうせできないし!なんて思っていたのに……もう彼女のいない世界なんて想像できないくらい、どっぷりと嵌っている自分がいるんだ。

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