第36話 神父の忠告なのじゃ!
神父の名前はギル。テーブルを挟んで対面に座る幼女の名前はルル。いつも通りの教会。いつも通りの朝食の風景。でもただひとつ違っていたのは一人増えていたことでした。昨日居候が決定したバアルさんです。
「今日の予定はパン屋のお手伝いです」
「パン!ふわふわでわしも好きなのじゃ!」
「ルルちゃん、もっと落ち着いて食べようね」
今日の予定を話し合うギルとルルをしりめに、バアルはルルを自らの膝の上にのせ、パンをちぎってはスープにつけてルルに食べさせている。本来は眉目秀麗といって差し支えの無い顔をだらしない笑顔で崩して存分にルルの世話をしていた。
なお、本日のルルはツインテール、もちろんバアルさんのお仕事です。
「けぷ。ごちそうさまでした!でも今日は子守は良いのかや?」
「今日は村の方がやってくれますので大丈夫ですよ」
「お顔にパンくずがついてますよーはいこれで綺麗になった。食べ終わったら歯磨きしましょうねー」
文句なしにルルの子守をバアルがやっている状況であるがお構いなしに話は進む。
「あとバアルさんは行く前にちょっと話があります」
「む?ついてくるなというのなら受け付けんぞ。貴様は信用できんからな」
「ついてくるなと言う話ではありませんのでご安心ください」
「そうか、ならばよかろう」
「ではルルさん、出掛ける支度をしてお待ちください」
「わかったのじゃー!」
元気に返事をするルルを置いて大人二人は別室に移動するのであった。
◆
「バアルさん、ルルさんを甘やかしすぎです」
「何を言うか、大人が子供の面倒を見るのは当たり前だろう」
「限度があります。寝起きの着替えに洗顔、歯磨き、それに普通6歳児を膝の上にのせてご飯を食べさせることはありません。しかもなぜあなたが食べ物を全部ルルさんの口に運んでいるのですか。赤ちゃんではないんですよ。」
「別段おかしいことでもないだろう」
「十分おかしいです。そこをよく理解してください」
懇切丁寧に親馬鹿ぶりを説明して注意するギルであったがバアルは納得の色を示さない。どうし説得したものかと頭を悩ますギルに、バアルは自身の持つ猜疑心のままに言い募る。
「ふん、貴様の考えはわかっているぞ、そうやって私がしないように仕向けてお前がやる気なのだろう?そうはいかんぞ」
「やりませんよ。あのくらいの年であれば一人で出来ることに挑戦させるべきなのです。失敗すれば助けるのは当然ですが、最初から全部やるのはルルさんを信じていないということになります。よろしいですね?」
自分は全く信じられていないようだが、ルルに対する愛情は行き過ぎているほどにあると理解しているギルは話の方向を微妙に変えて、ルルへの信頼問題であると説得をする。
「せんせぇー?ばっちゃー?まだかやー?」
「……いいだろう、私はルルを信じているからな。お前の口車に乗ってやろう」
支度を終えたルルが待ちきれないよ?と声をかければ話を打ち切るために即座に説得を受けいれルルまっしぐら状態になるバアル。
「わかっていただければ結構です、ではルルさんをお待たせしているので行きましょうか」
「ルルちゃーん!今行くよー!」
話が終わると同時にルルのもとへ向かうバアルを見て、あ、駄目だやっぱわかってないわという思いを顔には出さずに後を追いかけるギルであった。
正真正銘親馬鹿である




