第20話 激突!妖怪イタチ!なのじゃ!
病院で点滴をうちお薬をもらってだいぶ回復しました。
という事で続きです。
妖怪とは長い年月を生きた動植物や無機物、場合によっては概念などが超常の異能を手に入れた存在である。伝説においては一匹で国を落した個体すらおり、その脅威度は先刻倒した熊のようなただの動物とは比べるべくもないものとなっている。
ルルはそんな妖怪の一撃を食らった。
勢い良く吹き飛び地面に落下し更に二回ほどバウンドした後、コロコロと転がり森の木々に当たりようやく止まる。小さく痙攣を繰り返しているその様は死を目前としている姿にしか見えない。
「カラ!嬢ちゃんを頼む!……てめぇ生きて帰れると思うなよ!」
「カッ!猿が囀るな!」
「このクソがぁ!」
怒りもあらわに盾でもって殴りかかるグリンド、それを嘲り笑うイタチ。戦いが始まった。
一方カラは幼い命を繋ぎとめるため全速でルルへとかけより容体の確認にとりかかる。
「ルルちゃん!大丈夫……!?」
「う、うーん……むにゃむにゃ」
ミンチ状態になっているのも覚悟していたカラだが、意外にもルルに外傷の類は見えず衝撃で目を回しているのみであった。
「良かった生きてる!≪応急手当≫……そう言えばあれだけ派手に転んでも怪我一つしてなかったし、上等な守りの加護でもついてるのかな」
外傷はなくとも気絶するほどの衝撃を受けているのは事実であるため、回復魔法をかけ容体の安定をはかる。
ひとまずこちらは大丈夫だと安心すると、血まみれのロクがきりもみ回転しながら吹き飛んできた。
「ロクさん!?」
焦るカラが戦場に目を向けると、絶望の光景が待ち構えていた。
「遅い!遅い!」
「ちょッこッまッかッとぉッ!」
最初のうちは盾の面積を生かした攻撃で優勢に進めていたグリンドだったが、素早い動きに翻弄されだんだんと主導権を奪われていく。
自分の動きについてこれていないことを確信したイタチは、その小さい体に見合わぬ膂力で全力のフルスイングをお見舞いする。
ガイィィン──ッ!!
なんとか盾での防御が間に合い、ルルの二の舞を避けることができたグリンドだが、あまりの衝撃に足が止まる。そこをチャンスとみたイタチがさらに追撃を仕掛けようとするが、
「もらった!」
グリンドへの攻撃に集中したイタチへと、ロクが攻撃を仕掛ける。完全な意識外からの一撃となり殺ったと確信したロクだったが、
「カカッ!間抜けが!」
「なんっ……!」
狙いすましたかのように両手が鎌のイタチがもう一匹飛び出し、無防備なロクを斬りつける。自分たちがやろうとしたことをそのまま敵にやられ吹き飛ぶロク。
「二匹目だと!?」
「カッ!我一人だけだなどと誰が言うた!」
「カカッ!仕方なかろう、猿は頭が悪いからのう!」
「≪炎の連弾≫!!」
突如現れた二匹目のイタチに驚愕するグリンド。連携が決まり調子に乗り油断しているイタチにカズの魔法が飛ぶが、
「≪守りの盾≫」
半透明のドームがイタチ達を覆い、炎の連弾から身を守る。炎の連弾が止まったところで茂みから更に、薬壺を持ったイタチと杖を持ったゴブリンが現れる。
「いやいや、もう二人いるぞ」
「5匹中2匹殺って大勢は決したとはいえ、情報を与えるのはいかがなものか」
「……妖怪と魔族がパーティーを組むだと……」
グリンドとカズが驚愕に目を見開く中、薬壺を持ったイタチが棍棒イタチに薬を塗りみるみる怪我を治していき、ゴブリンは発言に茶々を入れる。
「カカッ!薄汚い盗人の猿ども、抵抗するのをやめれば一刀の元命を刈り取ってやるぞ?」
「カッ!聞くだけ無駄であろうよ!こやつらは生き汚い」
「畜生風情が好き勝手いいやがって……」
勝ちを確信し笑いながらふざけた提案をするイタチに悪態をつくグリンド。
しかし現状はどうしようもないほどに最悪だった。ただでさえ厄介な妖怪が三匹。それも魔法を扱うゴブリンと一緒に行動している。
冒険者の強みは連携にある。一人一人が与えられた役割をこなし巨大な敵を倒すのだ。だがそれを元から巨大な敵がやったとしたら?
勝てるわけがない。
それでも諦めるわけにはいかない、冒険者は諦めが悪いから冒険者なのだ。諦められるのであれば最初から冒険者などやらず、農家の三男として労働力を搾り取られるだけの人生を選ぶこともありえた。
だがそれを良しとせず一発逆転を狙って冒険者となったのだ。運よくメンバーにも恵まれひとかどの冒険者にもなれた、ここからなのだ、諦めてなどやるものか。
萎えそうな意思を決意でねじ伏せ構える。
「カラ!」
「二人とも生きてるよ!」
「そいつは良かった!なら全力で頼む!」
「はい!≪肉体強化≫!≪反応強化≫!≪加速≫!」
「させんよ≪土の連弾≫」
吹き飛んで行ったルルとカズの容体を確かめたグリンドはカラに強化を要請するが、それを黙ってみている敵などいるわけもなく、杖ゴブリンの魔法がカラに飛ぶ。
「≪守りの盾≫!」
あわやのところでカラの防御魔法が発動し、半透明のドームが杖ゴブリンの魔法を防ぐ。土煙で一時的に視界が悪くなったところで、盾の裏にセットした小剣を抜き一足飛びで棍棒イタチを斬り棄てる。
「なんと!」
グリンドは盾を構え辛抱強く戦うスタイルから、強化魔法を受け素早い攻撃を繰り出すスタイルにシフトしていた。
先ほどまでとまるで違う動きに驚愕していたイタチだがすぐに対応し鎌イタチがグリンドと切り結ぶ。鎌と小剣が組みあいお互いの足が止まると、
「カズ!」
「≪炎の槍≫!」
「≪守りの盾≫」
カズの名前を叫びバックステップをするグリンド。あとに残った鎌イタチに炎の槍が飛ぶがすんでのところで杖ゴブリンの防御魔法が発動する。
「≪貫け≫!!」
ッドォォン──!!
「ゴアッギャアアア!!」
が、追加の詠唱で炎の槍が防御魔法を貫通すると鎌イタチに着弾し、爆発炎上する。鎌イタチは炎に撒かれ吹き飛んで行く。
防御魔法を無理やり貫通させた代償に、魔力を急激に失い気絶するカズ。
「あと二匹ィッ!」
グリンドは叫んで素手のイタチと杖ゴブリンを確認したところで違和感を感じるが、この勢いを殺さず畳みかけるべしと間合いを詰めたところで背後から強烈な一撃を食らい吹き飛ぶ。
吹き飛び回転する視界の中でなにが起きたのかと思えば、薬壺を被った棍棒イタチの姿が見える。
ああだからあのイタチは素手だったのか、と納得したところでグリンドの意識は闇に落ちた。




