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第14話 事前準備は大事なのじゃ!

「森のこと教えとくれー!」


「いきなりなんだ?」


 グリンドに言われ、それなりに混んでいるギルド内をちょこまかと動き受付に向かったルル。トクの姿を確認すると勢い良く受付カウンターに飛び乗る。背が足りなくてカウンターの上に乗らねば話をする事が出来なかったためだ。


「今から森に薬草を採りに行くから詳しい話を聞きたいんじゃ!」


「ああん?採ってくる薬草の種類を聞きたいってことか?」


「違うのじゃ!森の事が聞きたいんじゃ!」


「……お前採ってくる薬草がどんなのかわかってんのか?」


「知らん!」


「なら聞いとけ馬鹿野郎が!」


「野郎じゃなくてれでぃじゃよ!」


「うるせえ!馬鹿レディとでも言えば満足か!くだらねえこと言ってねえで話を聞けや!いいか、お前らが依頼されたのは……」


 説教まじりのトクの説明をふんふんと頷きながら聞き入るルル。いかついスキンヘッドの外見とは異なり、意外と丁寧に図解入りで説明される。採りすぎて群生地がなくならないよう注意もされる。また、最初の目的通り森についても話を聞けた。


 この開拓村は四方を森で囲まれた立地となっており、村の出入り口は南側のみとなっている。ひと口に森といっても北側と南側で危険度が変わる。南側は交易路ともなっているため比較的整備されているが、北側はあまり手入れされておらず、天然の落とし穴となっている風穴もあるため油断をすれば軽く死ねる場所となっている。


 今回は南側で薬草を探すことになるため北側ほどの危険性はないが、それでも勝手に一人で行動しないこと、変な音がしても近寄らない事、知らないおじさんにはついていかない事などを注意された。だんだん冒険者としてではなく子供のお使い時の注意に変わっていたが、それに気付かずルルは真剣に耳を傾けていた。


「拾い食いはしない!おうちに帰るまでが冒険!わかったのじゃ!感謝するぞ!あとは皆を待って出発するのみじゃな!」


「おう、まあ頑張れよ」


 話を聞き終えるとお礼を言い、カウンターを飛び降りる。その際ミニスカートがひらりと舞い、へそのあたりまでめくり上がるが本人は一切気にしていない。そんな事より今から始まる冒険に頭がいっぱいなのだ。


 いよいよ冒険が待っていると考えると居てもたってもいられず、ギルド裏の修練場に出て準備運動を始めるルル。この時間は使う者がいないのか、がらんとしている修練場で、身のうちから溢れる興奮をそのままに、ぴょんぴょんと飛んだり跳ねたりを繰り返す。


「おう、こんなところにいたのか、探したぞ」


「来たか!行くぞ!じょうほうしゅうしゅうはばっちりじゃよ!」


 ひとしきり運動も終えたところに、準備を終えて戻ってきたグリンド達が声をかける。ルルはこちらの準備も完璧だとばかりに、勢いよく振り向くと、


「……おおおおお!冒険者じゃ!冒険者がおる!おっほおおおおお!」


一拍の間をおいてから吠えた。


 緑の手の面々は、先ほどまでのただの布の服に長ズボンと言ったこれと言った特徴のない格好から、皮鎧や厚手のローブを着こみ、各々の獲物を持ってまさに冒険者と言ったで姿となっており、それを見たルルのテンションゲージは跳ね上がったのだった。


「見違えたな!わしも嬉しいぞ!触ってもよいかの!」


「お、おう、そんな珍しいもんでもねぇけどな」


 ペタペタと興味深げに柔らかく小さな手で緑の手一行を撫でまわしていくルル。楽しいのだろうキャッキャッと喜びの声を上げながらはしゃいでいる。流石に刃物は危ないからと触らせてもらえなかったが、代わりにゴツゴツとした硬く節くれだった杖は触らせてもらえた。


「おふぅぅぅう……たんのうしたのう……」


 ひとしきり触るとルルは満足した顔でうっとりとしている。そこに多少疲れた顔をしたグリンドが何やら黒光りした長い物を片手に声をかける。


「あと嬢ちゃんにこれを渡しおくから履いてみてくれや」


「なんじゃこれ!えらく長いが……靴か!貰ってもよいのか!」


「ああ、ちょっとギルさんに出掛ける挨拶したらこれを渡してくれって言われてな」


「おお!せんせぇからか!悪いのう!後でお礼言わねばな!それにしてもこの靴かっこいいのう!」


 大はしゃぎで太ももまである長い靴、俗に言うサイハイブーツを履くルル。こちらも修道服同様祝福がかかっているのかぶかぶかの状態からぴったりとした大きさになる。


「どうじゃ!似合っとるかの!」

 

「ああ、ばっちりだと思うぞ」


「よし!これで準備は完璧じゃ!いざゆかん南の森!」


 初めての冒険に新しい靴をもらい、これ以上ないスタートだと喜色満面の態で高らかに宣言したルルであった。

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