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第11話 冒険者なのじゃ!

「そうじゃのう……」


 冒険者の現実を話したグリンドは、冒険者に憧れていた小さな幼女を見やる。こんな子供の夢を潰してしまうとは、冒険者も難儀なものだと自嘲する。それでも間違えているとわかりきっている道を行く子供を、正道に戻せたのなら、これ以上はないだろうと自分を納得させる。


 だがルルはそんなグリンドをまっすぐ見据え宣言する。


「じゃがな!わしはやるぞ!世界を見るぞ!財宝を発見して国をおこすぞ!悪い魔法使いを倒してさらわれた姫を助けるぞ!姦計にはめられた勇者を救うぞ!魔王を倒して世界をすくうぞ!わしだけの冒険をするぞ!安定なんてそのあとでよかろう!」


「おいおい」


「グリンドもそうであろう?じゃから冒険者やってるんじゃろ!?」


 ルルは情熱のままに、いつかどこかで聞いた冒険譚を、自分の夢を捲し立てる。そしてそれは自分だけではないはずだと、熱のこもった視線でグリンド達緑の手を見つめる。今度は苦笑いで返せない。


「……はぁ、そうだな、最初はそうだったな。兄貴たちを見返してやりたい一心だった。何かでかいことをしてやろうと思ってたな」


「じゃろっ!」


 両手を上げて降参しながら自分の過去を伝える。かつては自分もそうだったと。


「だが潰しが利いたほうは良いのは事実だ。冒険者もいいがシスターの方も頑張れよ。ギルさんも昔は冒険者だったんだぜ」


「なんと!初耳じゃよ!」


「てかこの村の住民はだいたいが冒険者上がりだな。領主と教会が共同で作った開拓村なもんで、失敗しないようそれなりの腕がある奴が集められてるんだよ」


「おほー!冒険者がいっぱい!?冒険者村じゃな!」


「まあ、そうなるな。」


 予想外の話を聞きルルのテンションが上がる。今度ギルの冒険譚を聞かせてもらおうと今から期待をしている。


 ルルは気付かない、それはつまり憧れていた冒険者は皆、剣を捨ててグリンドが言っていた、安定した生活に流れたという明確な証拠である事に。

 だが今はそれでいいとグリンドは思う。夢を見るのは子供の特権なのだからと。善意であれ、子供の夢を潰すのは、やはりしたくないのだと。


「あと冒険者目指すなら料理なりなんなり色々やれるに越したことはない。シスター見習いしながらそこら辺の事も教えてもらっとくといいんじゃないか」


「おお!そういうものか!今日帰ったらせんせぇに相談するぞ!」


 あったら便利ではあるがそんなものは必要ない。シスター以外の職も視野に入れて勉強させようというグリンドの親切心だ。夢から覚めた時に、選択肢は色々あったほうが良いのだから。


「あ!見えてきたぞ!あれが冒険者ギルドじゃ!」


「おお、もう着いたのか、悪いね。お礼に今日一日俺たちのパーティーに入らねぇか?」


「おお!ぜひ入れとくれ!わしもついに冒険者デビューじゃよぉぉおお!いぇぇぇぇい!冒険者いえぇぇぇぇぇッッブ」


 念願の冒険者になったぞと言わんがばかりにルルは大喜びをする。先ほどまで自重して歩いていたのに興奮のままに駆け出してしまう。そして興奮しすぎた結果また転ぶのであった。

中二病の幼女って大人びてるってことなのだろうか?

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