〈5〉
「しぶといですわね、まーちゃん…」
漂う煙の中から現れたのは傷一つ無い真野。
手にするのは、大きな盾。
「ごめんね、時間とかないし。戦力を削ぐ理由もない。」
真野は冷たく言い放つと、またもやいつの間にか姿を変えた件の剣を頭上に掲げる。
するとその剣先は、淡い水色の光を帯び始めた。
「おやすみなさい、メリー」
「なにを…?」
メリーが武器を構え警戒した瞬間、辺りは優しい光に包まれた。
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「ただいま」
玄関から真野の声がした。
それだけでひどく安心したのは何故だろうか。
目の前の男は、相変わらず何を考えているのかわからない。表情はすべて、その手入れのされていないボサボサの白髪に包まれている。
フードさんが待ちかねたようにケーキを迎えに行く。僕も食べたい。
「なにこれ〜、ぐちゃぐちゃじゃん」
「いやごめん、メリーがさ」
そんな会話をしながら、姉妹は居間に入ってきた。
「まのたん、おかえり〜」
「ただいま牛乳」
ジャージに挨拶し、真野はさとしの隣りに座った。
相変わらず、疲れた様子がない。
「さとし、落ち着いた?」
「いや……はい。」
この空間で落ち着くも何もないのだが。
「牛乳には、なにか話してもらった?」
「これ、貰いました…」
さとしは、手元の冊子をぺらぺらと真野に見せた。
真野達の居住空間である屋敷についたさとしは、居間でジャージに迎えられ、めんどくさいからこれ読んで、の一言と共に、ホチキスで止められた、『まにゅある』を手渡された。
そこには、およそ想像もつかない、この世界の仕組みが記されていた。