〈4〉
家の前に見知った人影があるのを見て、真野は、肩を落とした。
「メリー、何の用?」
声をかけると彼女はぎりりとぎこちなく顔を向けた。目には光がない。
「あらまーちゃん奇遇ですわね御機嫌よう、」
これはなるほど、本当に怒っているようだ。先程さとしを助けるために、適当にあしらったのが悪かったのだろうか。
「あ、私、ケーキあるし、戦闘は避けたいんだけど」
声など耳に入っていない様子で、メリーはふらふらと真野に近づく。その姿に狂気を感じないものなどいないだろう。
「…さっきの、誰ですの…。私よりも…私と刃を交えるよりも重要な様子でしたが…」
相手が獲物を手にしているのを見、真野も愛剣を構えた。
「許しませんことよ」
ぎこりと微笑み、メリーはバズーカを一閃した。
その細い腕のどこにそんな力があるのか、巨大なバズーカを彼女は時に鈍器のように扱う。その腕さばきは確かなもので、当たればひとたまりもない。
さらに、その威力を物語るように、ひと振りの後には凄まじい衝撃波が巻き起こる。
「…家、壊すきなの?」
むっとした様子で、真野は相手の懐に飛び込む。自在に姿を変えられる真野の黒い剣は、今は短剣サイズになっている。
バズーカを握る手を目掛けて振るった剣だったが、銃口が瞬時に真野を捉えたため、軽やかに距離を取る。
「……どうして本気を出してくださらないの私はこんなにもこんなにも…」
はっとした次の瞬間
「本気だというのにぃぃぃぃ!!!」
ズーーンという重低音が辺りに響き渡り、凄まじい一撃が繰り出されたのだった。