三角関係
11話
さて、寒くなってきました。
季節は秋。もう11月です。
矢吹翔と初めてしゃべった今年の夏休み。
もうあれから約3ヶ月も経とうとしています…。
……3ヶ月も経つのに何も変わっていない…。
進展なしだ。
(頑張らないとなぁ。)
そう考えていると
「おはよー、美麗!」
後ろから声がした。
友達の美優だ。
今は朝休み。
綾芽と朝 登校し、美優と朝休みに教室の前の廊下で話すのがいつもの流れだ。
今日もそのいつもの流れ通り、
美優と廊下で矢吹翔についてしゃべっていた。
すると遠くから彼が来るのが見えた。
彼が私の目の前を通るとき、私は彼を見た。
すると彼は片手を挙げて
「よっ。」
と言い、私の方を見て微笑んだ。
「お、お、おはよーーーっっ!」
緊張で声が裏返り、震えていた。
そんな反応を彼はクスッと笑って
4組の教室へと行ってしまった。
それを見ていた美優はニヤニヤしながら、
「なになに~?あなたたちは付き合ってるんですか~?ん~?」
とからかってきた。
私は自分の顔が真っ赤になってるのがわかった。美優のからかいに言い返すこともできないくらいドキドキしていた。
それから今日一日のテンションは一段と高かった。
放課後ーーーーーーーーーーーーーー
「おーいー。ちゃんと黒板消せよー。」
「ちゃんと消してるしー。」
町村君と私は今日 日直だった。
二人で教室の黒板をキレイにしていた。
教室にいるのは二人だけだ。
私は黒板を消しながら
今日の朝のことを考えていた。
(よっ。って…♡♡ふふふ♡♡)
思ってることが顔に出たのか
町村君が冷めた目で見て こう言ってきた。
「おい、顔がキモいぞ。」
「キモくて悪かったですねー。」
「なに、またあいつのこと考えてたわけ?」
「そうだったらどうしたっていうのよー。」
「別に。…てかさ、なんであいつのこと好きになったわけ?」
「えっ、なんでって………。」
なんでだろう。
そう言えば考えたこともなかった。
知らない間に
見るとドキドキしたり
顔が赤くなったり
私の中で彼の存在が大きくなっていた。
「…自然と好きになってたかな。しゃべったりして、矢吹君の知らない一面が見れて…。」
「気がついたら好きだった!」
と言いながら町村君の方を見ようとしたとき、
体がよろけてしまい、倒れそうになった。
そこを町村君が助けてくれた。
「ごめん、ありがと!町村く…………」
お礼を言い、町村君の方を見ようとすると
町村君が私を支えてくれているせいか、顔がものすごく近かった。
「…っ!ごめん!」
と言い、町村君を突き放そうとした。
が、町村君は離れようとしなかった。
そしてこう言った。
「ごめん、もう少しこのままでいさせて。」
…え?
私の心臓が大きく音を立てた。
町村君の顔はものすごく近い。
そうして町村君は私の顔をまっすぐ見ながら
「俺…水谷のこと……」
ガラッ
町村君が何かを言いかけたそのとき
教室のドアが開いた。
立っていたのは
矢吹翔だった。
12話
「…矢吹…くん。」
私はそうつぶやいたあと、
町村君とくっついていることに気がついて、急いで離れた。
そんな様子を見て、彼は少し固まっていたが、何もなかったかのように
「吉見先生知らない?」
吉見先生とは私たちのクラス、1組の担任の先生だ。
「知らないけど…」
私は答えた。
「そっか。なんか邪魔したみたいで悪かった。邪魔者は消えるわ。じゃぁな。」
彼はうつむきながら言い、走って去ってしまった。
何か誤解されたようで私はものすごく嫌だった。
邪魔ってなに?
そう思うと私は反射的に彼の後を追いかけていた。
教室を飛び出したとき
綾芽とすれ違った。
でも私は彼しか見てなかった。
「ちょ、美麗?!どうしたの?!」
そう言って綾芽が追いかけて行きそうになったところを町村が止めた。
「今だけほっといてあげて。」
町村はそれだけ言った。
「…何があったの?」
綾芽が心配そうに聞く。
町村は今までのことを全て話した。
「…ってことで、俺、水谷のこと好きなんだわ!本人には言いそびれちゃったけどな!」
「そう…だったんだ…。…んー、町村君のこと、友達だし、応援したいんだけどなぁーー、なんか複雑…。」
「そりゃそうだよ。別に応援してほしいなんて思ってない。でも水谷と仲がいい神崎には知っておいてほしかったし。」
「そっか…なんかごめんね?」
「なんで謝るんだよ!俺は水谷が誰を好きだろうと、気持ちは変わらないし。絶対振り向かせてやる。」
町村は真剣なまなざしで言った。
綾芽はそんな町村が輝いて見えた。
(町村君ってこんなかっこよかったっけ…。って何を考えてるんだ、自分!)
綾芽は自分でツッコミをいれたが
もう一度町村を見ると
やっぱり輝いていた。
ハァハァ…ハァ…
もう駅に着いてしまった。
どんだけ走っても矢吹翔に追いつかない。
が、駅に入ると簡単に見つけられた。
「矢吹君!」
私は大声で名前を呼び、近づいて行った。
彼は振り返り、私を見た。
「矢吹君…あのね。町村君とは何もないから!あれはたまたまふらついただけで……」
私がそう言うと
彼はこう言った。
「……別にあんたがあの町村って人となんかあったとしても俺はなんとも思わないけど?」
「え?」
「だってさ、俺ら付き合ってるわけでもないし、ただの友達じゃん!なのになんでそんな 誤解を解く みたいなことするんだよ。」
彼は笑いながらそう言った。
私は泣きそうになった。
「…私は誤解を解きたかった。矢吹くんにそんな風に思われてほしくないもん。」
「別にいいじゃん、どうだって。」
彼は冷たく言い放った。
私はもう耐えられなかった。
「矢吹君にはどうでもいいことかもしれないけど、私にとってはよくないの!
確かに付き合ってるわけでもないし、ただの友達だし!
でも私は……私は……」
涙がポロポロ流れてきてしまった。
そして私は言った。
「…好き。」
「矢吹君が好きなの。」