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Flap  作者: くり
4/13

告白

7話







「迷惑かけるし、もう関わらないほうがいいよ。」











「迷惑だなんて思ってないよ!

・・・たくさんたくさんありがとう。」




「好きです。」









「俺も。」











「お互い微笑み合い、そして・・・ここでだきつくーーー!」











「ストーーーーップ!!!!」









私は、綾芽の妄想を大声で止めた。










「だきついてないし!それに告白もしてない!」









「え、そーなの?!」






綾芽がわざとらしく驚く。








「そーだよ。告白なんてできるはずないじゃん。だいたいする気ないし。」










「えーーーーーー!今、なんて言った?!

告白する気がないって言ったよね?!」












「言いましたけど?」










「あんた、好きになっといて告白しないだなんて・・・。だめだよ!」








「なんでー?だいたい告白してどーなるの?フラれるの分かってて告るなんて無駄だよ。」







私がそう言うと、綾芽は目をまんまるにした後、大きくため息をついた。









「あんたね~。そういう考え、やめたほうがいいよ。」




「告白っていうのはね、フラれるとかそういう問題じゃないの!気持ちを伝えるか伝えないか。たとえフラれるって分かり切ってても、気持ちを伝えるだけでどんだけ違うか・・・」





綾芽は続けて言った。








「告白をして無駄なことなんて一つもないよ。告白して、フラれて、はいおしまい、じゃないの!そこからもなにか新しい関係が築かれるかもしれないし、きっと自分の中の何かが変わる。告白ってすごく大切なのよ。」






綾芽の目は真剣だった。







「まあ、今の美麗には無理だと思うけどね。告白なんて。」








綾芽は告白のところをわざと大きく強調して言った。








告白かぁ・・・




告白なんて考えたことがなかった。



私の頭の中にはそんな熟語、存在すらしてなかった。



まず、今まで人を好きにすらならなかった私だ。




好きという気持ちを知っただけで十分だった。




なのに急に告白とか言われても・・・






いろいろ考えていると、綾芽があわてて言った。





「美麗!このままだと電車に遅れちゃう!急ぐよ!」





私たちは今、登校中だ。

駅まで綾芽と一緒に歩いて、そこから電車。










「ふぅー。なんとか間に合ったね。」





ちょうど電車がきた。




私たちは電車の二号車に乗った。



綾芽に三号車に乗らなくていいの?と聞かれたが、私はいいと答えた。



なぜなら、彼はいつももう一本後の電車に乗っているからだ。



ひとごみが苦手だと彼は言っていた。




(こういうことを知ってるのは多分私だけなんだろうな。)




そう思うだけで嬉しかった。







そんなことを考えていると、後ろから声がかかった。






「あれ、水谷じゃん。」







「町村君!」







「水谷って電車だったんだ。」







「そうだよ。町村君ってたしか自転車じゃ・・・。」






「今日は部活の朝練がなくてさ。」








「あー!そうなんだ!てっきり寝坊したんだと思った。」








「ばーか。俺は寝坊なんてしたことないぞ。」






「えー?嘘っぽーい。」








「嘘じゃねーし。」









そしてお互い見つめ合って、笑った。









「あのぉ。私も入りたいんですけどー。」






綾芽が言いにくそうに言う。








「あ!綾芽!忘れてた!」







「ひど!笑 ・・・ていうか、この人は?」









「あーそうだった。綾芽にまだ紹介してなかったよね。この人は町村洸くん。私の前の席で、唯一の男友達でーす。」







「どーも。神崎さんだよな?水谷からよく聞いてるよ!」






「はじめまして。神崎綾芽です。いつも美麗がお世話になってます。」







「なんか・・・水谷の母親みたいだな!」








「まぁそんなかんじかな?美麗、私がついてないとなんにもできないから。」







「えー!そんなことないもん!」








三人で笑い、いろんな話をした。





綾芽と町村君はなんだか気が合うようで、話がはずんでいた。





今日の朝は、とてもいい朝になった。








しかし私はこのとき全然気づかなかった。







隣の三号車に


彼が乗っていたことを。
















 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄







「告白ぅ?!?!?!」









「しー!声がでかいよ!」









私は、学校に着いた後、友達の美優に矢吹翔のことを全て話した。そして、告白についても。





「てゆーか、あんたまじであの男のことが好きなわけ??」






美優がけげんそうに聞く。






「・・・うん。」







恥ずかしながら私は答えた。








「そっか。まぁ好きになっちゃったらしょうがないよね。たとえ相手がヤバい人でも。」







「・・・でも私が思うには、矢吹くんはそんな人じゃないの。むしろ噂とは真逆なんじゃないかと・・・。」








「なんでそんなことが言いきれるの?」










美優は真面目な顔で聞いてきた。





そんな美優が少し怖かった。





私の様子に気づいたのか、美優はあわてて言い直した。








「まぁ、噂と実際に会って話すとじゃあ違うのは当たり前だよね!」






美優は続けてこう言った。






「私も応援するよ!綾芽ちゃんの言う通り、告白は大事なことかもしれない。でも私は美麗の気持ちしだいだと思うよ。」





(そうだよねー・・・。)







今日は一日中、告白について考えていた。



しかし、けっきょく結論はでなかった。








「水谷ー!今日、帰りにどっかよってかないか?」






町村君が帰る準備をしているときに聞いてきた。






「あー・・・ごめん!今日、用事があるんだよね。」








「なになにー?彼氏とデートか?」





町村君が冗談っぽく聞いてくる。






「違うよー!えっとねー・・・綾芽と一緒に帰る約束してたの!」







「なーんだ。ほんと仲いいよな、神崎と。」







「ほんとにごめんねー!じゃあ!」







私はそう言うと、教室をとびたした。




実は、今日綾芽と帰るなんて嘘だ。




これから矢吹翔と会う約束をしているのだ。





お昼休みのとき、





彼からメールが来ていた。



内容は




『俺、今日15時の電車に乗るんだ。その時間帯は人が少ないから。もし良かったら水谷もその電車、乗らない?』





というものだった。






もちろん返事はオッケーだ。









私は笑みを浮かべ、急いで駅まで行った。











駅のホームには、もう彼がいた。







彼は私に気づくと手をふってくれた。







そして二人で三号車に乗った。








私たちは、いろんなことをしゃべった。



本当に楽しかった。



今だけ時間を止めてほしいと、心の中で神様に本気でお願いした。







「こんなに話してて楽しいの初めて!男の子の中で矢吹くんぐらいだよ。」





私は笑顔で言った。




すると彼はこう言ったのだ。





「嘘つかなくていいよー。」






「え?」








「俺より仲いい男の子、他にいっぱいいるでしょ。例えば・・・朝の電車で一緒に登校してた子とか。」







え・・・?





ひょっとして町村君のこと?




朝の電車って・・・




いたの?




私が混乱していると、彼は続けて言った。






「俺の知らない水谷がたくさんいたよ。」






彼は遠くを見つめていた。







「いろんな顔を見れた。」






そして最後に言った。








「まあ別にいいんだけど。」






彼はそれっきりだまってしまった。





私も・・・なにを言ったら良いか分からなかった。

















そのころ━━━━━━━━━━━











「あれー?神崎じゃん。」






「あー・・・えっと確か美麗の友達の町村君!」







「そうそう!朝はどーもね。それはそうと、水谷と今日一緒に帰るんじゃなかったのか?」







「え?そんな約束してないよ?だって美麗、今日矢吹くんと一緒に帰るんだもん。」







「え?!矢吹ってあの矢吹か?!なんで?!」








「なんでって・・・あんたも美麗から聞いてるでしょ!好きだからよー!」








綾芽は美麗が町村に言っているのだと思い込んでいた。









そのとき町村は、ぼーっとつったっていたのだった。








8話







私は一人で帰っていた。





矢吹翔とはどうなったか。

うん。多分あなたが想像してる通りだよ。




私は綾芽と違って

思ってることが言えない性格なので…





何も言えず、あの後は無言のまま

すご~く気まずい雰囲気で

矢吹君が「ばいばい」と言って

駅を降りてしまいましたね。



まだ「ばいばい」と言ってくれただけ

ましかな…。





矢吹君はほんとに優しい。



なんでみんな気づかないんだろ?





そんなことを考えていると





プルプルッ





あ、綾芽から電話だ。






「もしもし?美麗?ごめん!!」





電話に出ると

いきなり綾芽が謝ってきた。





「え?どうしたの??」





聞くところ、

綾芽は間違って町村君に

私が矢吹君のことが好きなのを言ってしまったらしい。




「ほんとごめんね…。けっこう仲良いし、てっきり言ってるんだと…。」






「大丈夫大丈夫!いずれは言おうと思ってたし!そんなことよりもさー…」






私は今日電車で会ったときのことを全て話した。






綾芽はそんなこと気にしないほうがいいと言ってくれた。

さらにこんなことまで言い出した。





「ていうか、それって美麗のこと気になってるってことじゃん?」






は?ん?気になってる??

なぜ そうなる!





「だってさ、他の男子と仲良くしゃべってるところ見て嫉妬したってことでしょ?」








え?これは嫉妬されてたのか??


うーん。何か違う気がする…

というか全然違う気がする…








「まぁ家帰ってゆっくり考えますね…」








そう言って電話を切った。














翌日の朝ーーーーーーーー











………!!






「ぎゃーー寝坊したーー!!」









綾芽はもう行ったか…。










私はしかたなく普段のとは一本遅い電車に乗った。


三号車は避けて六号車に乗った。





(なんとなく会うの気まずいしな…。)








やはりこの時間の電車は人がすごく少なく、六号車には誰もいなかった。







頭の中は矢吹君のことだけ。



(もう次会うとき、どう接したらいいか分からないよ…)




そう思っていると


隣の車両から誰かがきた。



見ると




「あ!水谷!」






そう、町村君だった。








「おはよう!あれ、今日も電車なんだー?」







「おはよう。そうなんだよー。今日は寝坊しちゃってさぁ。人生初だぞ!初!」








「絶対今までも寝坊してるでしょ。」







「それはない。」






「ある。」








「ない。」








そう言い、笑った。








「そういえばさー。昨日神崎から聞いたんだけど…お前、矢吹のこと好きなんだって?」








「あ…まぁ、ね。」







今はなんだか矢吹君の話をしたくなかった。







「びっくりしたわー。まさかあの矢吹翔をねぇ。でもあいつ、変な噂たてられてるじゃん?それって…」






「それは全部嘘!」







町村の話をさえぎるように反射的に言ってしまった。







「あ……えっとね、それ全部ウソなの。目が合って死ぬとか、そんなのありえないじゃん。」








わたしは続けて言った。








「それにね!矢吹君ってほんとはすごく優しいの!それにみんな気づいてあげたらいいのになぁ。」










「…お前、ほんとに矢吹のこと好きなんだな。」








町村君がそう言ったとき、




また隣の車両から誰かが来た。













矢吹翔だった。








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