表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Flap  作者: くり
2/13

自覚

3話






『目が合うと死ぬ』






誰がこんな噂を流したのだろう?




(私、思いっきり目が合ってたんですけど!!!)





・・・それにしても



矢吹翔ってあんなにイケメンだったっけ?




噂のせいで顔を見ないようにしてたからかな?











「なーにニヤニヤしてんのっ!」




「わ!びっくりした~。・・・てか綾芽、なんでいるの?」



「なんでって補習だよ補習!」



「え?綾芽、補習ひっかかったの?!」



「違うよー!私は自主的に来てるの!あんたと一緒にしないでよね~」





・・・ですよね。



何てったって綾芽は成績優秀でいつも学年トップ。

その上運動神経も良くて、顔も整ってる。




綾芽を見てると、神様は差別するのが好きなのかなーって思うよ・・・





「美麗!今日一緒にかえろ!」




「もちろん! っていうか家隣だし(笑)」




綾芽は私の幼なじみで、お隣りさん。


幼稚園のときからずーっと一緒。


クラスは分かれちゃったけど、私が一組で綾芽が二組だから、隣だし、合同ですることも多々ある。




今日の補習もそう。





つまり、補習にひっかかる人はそうとう少ないってこと。






ま、綾芽みたいに自主的にくる人なんて限られてるしね。









「あ!そうだ!綾芽って・・・矢吹翔のこと知ってるよね?」





「矢吹翔? あ~、あの変な噂たてられてるやつ? あの人がどうかしたの?」







「じっ実はね、私・・・」







ガラッ





「はーい、じゃあ補習始めるぞ~。席に着けー。」






先生がそう言って入ってきた。






「またあとで聞くわ!」






綾芽はそう言って席へ戻って行った。








(はぁ・・・。補習なんて集中できるわけないじゃん・・・!)














あのときの笑顔ばかり浮かんでしまう。




あのときの、つかまれた腕の感覚が思い出される。







あのときの見つめられた目が頭から離れない。










この気持ち・・・何だろう?
















「美麗、それは恋だね。」




綾芽との帰り道。



綾芽に全てのことを話した。





「恋?」







・・・恋。






恋なんてしたことがなかった。




もともと男子が苦手で、中学のときもろくに口をきいたことがなかった。







「そうかぁ。ついに美麗も恋か。大人になったねぇ~。」






綾芽が嬉しそうに言う。












・・・私、恋をしたんだ。




矢吹翔に。











4話





「はぁ・・・。」






恋...恋...恋...





(恋ってこんな気持ちになるんだ・・・)




私は、補習から帰るとすぐに自分のベッドに倒れ込み、そのことばかり考えていた。




「矢吹翔君かぁ。」





私、なんでよりによってあの人に恋しちゃったんだろう?





(悪い噂流れてるんだよ!?確か親がやくざだとか・・・。それに目が合うと死ぬって!


・・・それはないか。私、ばっちり目が合ってたし、それでも生きてるし。


あーでもでも!中学のとき、告白された女の子を殴るような人だよ?!)






・・・。








「あーーーー!もうなにがなんだかわかんないよ・・・。」









「こういうときは・・・。」














「寝る!」









 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






「美麗!朝よ!遅刻するわよ!」








「ん~・・・。ふぁ~い。」





私はそう言ってベッドから起きて、学校へ行く準備をした。





「あーそうそう。綾芽ちゃん、さっき来てくれたんだけど、まだ寝てるって言ったら先に行くって。」


母は言った。





綾芽と一緒に学校へ行くのが日課だが、たまに私が寝坊すると、今日みたいにおいていかれることも。





「行ってきまーす。」




私は、家を出て駅へと向かった。




駅のホームには、ちらほら学生がいるが人は少なかった。

もう一本前の電車にみんな乗ったからだ。









ピンポンパンポン



「もうすぐ、二番乗り場に電車がまいります。ご注意ください。」





アナウンスが流れ、電車が来た。




私は、電車に乗った。







ガタンゴトン..ガタンゴトン..












(そういえば、この前矢吹翔君に会ったのって三号車だったっけ。)





・・・今日もいたりするわけないよね。





そう思いつつ、体が勝手に三号車へと動いていった。








三号車へ近づけば近づくほど、私の心臓は周りに聞こえるぐらい大きく音をたてた。










ガラッ






三号車へ入った。




見渡すが、誰もいないようだ。







「やっぱいないか・・・。」








私がそうつぶやいたその時、








「あ!」






後ろで声がした。












矢吹翔だった。














「君って・・・メロンパンの人だよね?」





矢吹翔は言った。










「めっメロンパンの人って・・・」







私は恥ずかしくなって、顔を伏せた。







「はははっ!ごめんごめん!」






矢吹翔は笑っていた。










私もなんだかおかしくなって、笑った。






「君、名前なんていうの?」



「水谷美麗です!」



「美麗ちゃんか・・・。いい名前だね!」





彼はそう言い、笑った。








「俺は矢吹翔!1年4組。」




「私は1年1組!」






基本的な自己紹介をして、私たちは駅に着くまでお互いのことを喋った。







「そーだ!メアド教えてよ!」






「はい!」





私たちはメアドを交換した。








「ありがとう!じゃあまたメールするね。」






「はい!待ってます。」








ちょうどそのとき




駅に着いた。











「じゃあまたな!」






矢吹翔はそう言って出口へと向かって行った。








どんどん彼との距離が離れていく。






胸がきゅーっと苦しくなった。











私も歩こうとしたそのとき、









矢吹翔が振り返り、私のほうへ戻ってきた。






私の前まで来ると、




「一つ言うの忘れてたことがあった。」






彼はそう言った後

私の口に、立てた人差し指をあて、こう言った。







「敬語禁止ね。」







彼はにこっと微笑んで、また出口へと向かって行った。












(ヤバい・・・。)








心臓が壊れそうだった。






息ができなかった。







何も考えられなかった。










私はその後どうやって、どんな気持ちで学校へ行ったのか覚えていない。









でも、




彼の笑顔だけが頭から離れないでいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ