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Flap  作者: くり
11/13

ぬくもり

17話







突然の出来事だった。


何が起こっているか分からなかった。





(ちょっと待って、


私はつい最近矢吹くんに告白して、


あっけなく振られて、


振られた後も 気まずくて、喋れなくて、


この課外研修で

町村くんとちゃんと向き合おうって決めて、


・・・なんで?


なんで矢吹くんは私を抱きしめてるの?)








「・・・矢吹くん?」



パニック状態の私がやっとの思いで出た唯一の言葉だった。




その言葉に矢吹くんは反応し、

私の体をぱっと離した。





私はじっと矢吹くんの顔を見つめた。



矢吹くんは私の顔を見ないでうつむいたまま 、ごめん、とささやくように言い、その場を逃げるように去っていった。




私は呼び止められなかった。

というより、声が出なかった。


今でも彼の心臓の音がドクドクと聞こえる。


いや、私の心臓の音かもしれない。


私はまだ残っていた彼のぬくもりを感じながら、その場を立ち尽くした。












____________________________________





お昼。



綾芽は飲んでいたジュースを吹き出した。


「いつの間にそんなことになってんの!」


綾芽は小声で私に言った。


私はさっきの出来事を綾芽に話した。

今はお昼ご飯を食べていて、男子と女子で別れて席に座っている。


「いや、私も急の出来事で・・・」


綾芽は私の反応を見てため息をついた。



「それって矢吹くん、美麗のこと好きなんじゃないの??・・・とか軽いことは言わないけどさ、ただ、矢吹くんの中で美麗の存在が大きくなっていってるのは確かでしょ。」




「でも、わたし、もう矢吹くんのこと忘れるって決めてたの。町村くんのことを前向きに考えようって決めたから。」




「え?前向きにって?」




「告白の返事、OKしよっかなって思って。」




「・・・なんで急に?」





「町村くん、優しいし、イイ人だし・・・。今日ね、返事はずっと待ってるからって言ってくれたの。素直に嬉しかったし、それに待たせるのもなんか申し訳ないでしょ・・・」





そこまで話すと、

綾芽の顔色が変わった。





「イイ人だからとか申し訳ないからとか、そんな半端な気持ちでOKしないでよ。」




見たことない表情をしていた。


でも綾芽は真剣に言っているのが分かった。



私がびっくりしているのに気づいた綾芽はあたふたと言葉を付け足した。




「いや、だから、そんな半端な気持ちだったら本人に悪いでしょ!でも美麗が決めたんなら、私は応援するよ!」




綾芽は笑顔で言った。




確かに綾芽の言っていることはわかる。

それに、さっきあんなことがあったのに、このまま町村くんのところなんて行けない。




・・・よし。







「綾芽、ありがとう。私、矢吹くんにちゃんとさっきのとこ聞いてくる!なんであんなことしたのか理由わからないし、このままじゃ町村くんに失礼だもんね!」





「・・・ううん!そっか!私はいつでも美麗の味方だからね。」





私は綾芽が女神に見えた。




そして私は立ち上がり、男子の席へ行った。



綾芽はそれを見て、え!今?!今言うの?!っていう顔をしている。




私はなんだかすぐ行動したかった。


男子の席へ行き、矢吹くんに声をかけた。





「矢吹くん、ちょっと話があるんだけど。」





周りのみんなはびっくりした顔をしている。もちろん、町村くんもだ。




矢吹くんは何の事か察したのか、黙ってうなずいた。



そして私たちは席を離れ、違う場所へ移動した。




私たちが離れたあと、町村はびっくりしながら、綾芽のところへ行った。


そして尋ねた。




「どういうこと?!」





「知りたいんなら後で直接本人に聞けば〜?」




「聞けるかよ!・・・あ〜。もう俺も終わりかな・・・。失恋決定。ってもう失恋してるようなもんなんだけどな!はは!」




町村は悲しそうに笑った。




綾芽はつぶやいた。


「ほんと美麗のこと好きなんだね・・・。」




町村は顔を赤くしながら うつむいた。

そして独り言のようにこう言った。




「あー。もう諦めたほうがいいのかなー。」




綾芽はそんな町村の頭をなでたくなったが、それを抑え、言った。




「何言ってんの。こんなに好きなんだったら、最後まで好きを貫きなさいよ。町村くん、良い奴なんだから!」




町村は顔をあげた。

そしてにこっと笑い、


「お前が一番良い奴だけどな!」



と言った。そしてこう続けた。



「あー。何弱音はいてんだ。らしくねーって!神崎、ありがとな!」



綾芽はそんな町村を見て、笑った。




(これでいいんだ。私は美麗の味方。ここで私が割り込んでも、誰も得しないよ。)




綾芽は自分にそう言い聞かせた。





















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