出会い
1話
みなさんは、空を飛びたいと思ったことはありますか?
背中に翼がはえて
あの青く大きな空を・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2012年の夏
友達の木下美優の一言が事の始まりだった。
「3年4組の矢吹翔っているじゃん?
あの人、ヤバいらしいよ!」
今から思うと
「ヤバいって何が?」って話だ。
けれど、その一言をきっかけに、矢吹翔についての悪い噂が広まっていった。
『親がやくざだから近づくな』や
『目が合うと死ぬ』など
ありもしない噂がどんどん広まっていった。
そして
私が一番印象に残っている噂。
それは
『中学時代、告白された女の子を殴った』
という内容だった。
なぜ印象に残っているのかは分からない。
でも、心のどこかで何かがひっかかっていた。
どうしてかな・・・
・・・そっか
もうこのときから
私の恋は始まっていたんだ
2012年の夏休み
私は補習があり、いつものように電車で学校へ行った。
「あっつーい!」
電車の三号車、誰も人が乗っていなかった。
・・・あれ?
誰かいる。男の人。
あ!
私と同じ制服だ!
ってことは同じ学校ってことか・・・
その人は寝ているのか下を向いていて、ちょうど顔が見えなかった。
私は反射的にその人の向かい側の席に座っていた。
....ガタンゴトン..ガタンゴトン
「・・・んんー・・・。」
あ
起きた。
・・・え?
この人・・・
そう。
これが
矢吹翔と私の
運命の出会いだった。
2話
・・・これって
今
私かなりヤバい状況じゃない?
目の前に
学校一の嫌われ者で
恐れられている人がいて、
その人が
・・・起きちゃったよ
「・・・。」
・・・なんか、すごく見られてる気がするんですけど!
.........沈黙。
もー無理だ!
「・・・あはははー(笑)すみませんね!寝てたのに邪魔しちゃって・・・。
では、さいならっ!!!!」
私はそう言ってその場から立ち去りたかった。
が、
その瞬間
バッ!
腕をつかまれた。
・・・え?
矢吹翔がじっとこっちを見る。
「あんた・・・。」
「あー、やっぱいいや。」
矢吹翔は頭をかきながらそう言い、
私の腕をつかんでいた手を離した。
「ーーーー!
すみませんでしたぁぁーーー!」
私はいてもたってもいられなくて
すぐにその場から立ち去った。
ちょうどそのとき、電車が駅にとまった。
「ねぇ!」
後ろから矢吹翔の声が聞こえた。
振り返ると
そこには
彼の笑顔があった。
「ここ、ついてるよ!」
彼はそう言って自分の口を指差し、電車から降りた。
私は自分の口に手をあてた。
口には、朝食べたメロンパンのかすがついていた。
・・・なにこれ
この感じ
ドキドキして
胸がはちきれそうで
心臓の音が
いつもより
やたら大きく聞こえて
自分でも顔が赤くなっているのが分かった。
「矢吹翔・・・」
私は無意識のうちにそうつぶやいていた。
・・・私、どうしちゃったんだろう。
あ・・・そういえば私
あの人と
目、合ってた・・・
つづく*