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ご近所様  作者:
5/7

金曜日

ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン


鳴り止まないインターホンの呼び出し音に陽子は思わずドアを開けた。


玄関には黒いワンピースの女が立っている。


ノグチトシコだ!


陽子の直感がそう告げた。


ノグチトシコが叫びながら陽子に迫ってくる。

「なんであんたがここにいるの!」

「私の家を返せ!!」

「早よ出ていけ!!!」


ノグチトシコの持っていたゴミ袋が投げられ、陽子に直撃した。

中のゴミが飛び散り、陽子の顔にも何かの液体がかかる。


「もう止めて〜!!」


陽子は頭を抱えながら叫ぶと目を覚ました。


夢かぁ…。


服が汗でぐっしょりと濡れている。

陽子は濡れた服を着替えた。

その後はいろいろなことが頭をめぐり、結局ほとんど眠る事が出来なかった。




「行ってらっしゃい…。」


朝になり、陽子は和成を送り出した。寝不足で頭がぼぅっとしている。

少し休もう…。

雨戸を締め切られた薄暗い部屋の中で陽子は思った。

昨日の洗い物と、部屋の片付けは和成がやってくれたようだが、とりあえず詰め込んだ感じで、いつもの場所に片付けられてないのが気になったが、今は少しだけ休もう。


拓人の朝食が終わると、お気に入りのディズニーのDVDを見せて、陽子はソファーに横になった。





ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…


インターホンの呼び出し音が鳴り響いている。


陽子は今朝の夢の事を思い出し、とても出る気分ではなかったが、そっとモニターで外の様子を伺った。


美和子だった。


「美和子さん!」


「あぁ…、良かった。無事なのね。今朝和成さんから様子を見て欲しいって頼まれてたの。お話できる?」


「はいっ!」


陽子はすぐにドアを開けた。


ガチャリ!


えっ…?


外に出た陽子は目を疑った。

そこには誰もいなかった。


えっ…、美和子さん…?どうして…?


と、考える間もなく、陽子の目に異様な物体が飛び込んできた。


黒い塊が門の内側に落ちている。

少し前まで命を宿った物だったのだろうが、今は赤い水溜りの中で、黒い肉塊となっている。


陽子の脳裏に昨日の葵の言葉が蘇る。


「うちの庭に猫の死骸が投げ込まれてから…。」

「猫の死骸が投げ込まれてから…。」

「猫の死骸が…。」

「猫の死骸が…。」

「死骸が…。」

「死骸が…。」


葵の言葉が陽子の頭の中を葵の言葉がグルグル回っている。


「いやぁ〜!!!!!」


陽子はリビングに戻ると、タオルケットを頭からかけ、震えていた。




「…子!」


「……ちゃん!」


「陽子!」


「陽子ちゃん!」


放心状態だった陽子は誰かの呼ぶ声にようやく目を開けた。



そこには和成と美和子がいた。


「良かった。美和子さんから何度インターホンを押しても返事がないって連絡があって、急いで帰ってきたんだよ。」


「陽子ちゃん…良かった。ゴメンね、ゴメンね…。」


2人の存在に安心したのか、陽子は和成の胸に顔を埋め、泣き出した。


「心配かけてゴメンね…。でも今はここにいたくない。少しでも早く他の所に行きたい。」


「分かったよ…。じゃあ少し外に行こう。」


「私の家でいいかな?」

美和子の提案に陽子は同意した。


3人は拓人を連れ、玄関へ向かったが、陽子は玄関のドアの前で2人に訪ねた。


「猫の死骸がなかった…?」


「猫の…?何言ってるんだよ。何もなかったよ…。」


和成の言葉に美和子も同意する。


2人に連れられて外へ出た陽子は意を決して目を開けた。


そこには何もなかった。


さっきのも夢だったのか…。

だんだん夢と現実の境が曖昧になっている気がする。


?!!!


陽子は道の向かい側にの電柱の影に誰かがいるのに気づいた。

ボサボサの茶髪に黒いワンピース!

表情は見えないがじっとこちらを見ている!


「あそこにノグチトシコがいる!!」


陽子の叫びに和成と美和子は振り返るが、混乱した様子で顔を見合わせた。


「誰もいないよ…。陽子…、大丈夫やから…。」


2人には見えていないのだろうか?


「そこにいるじゃない!何でみえないの!」


陽子の叫びに2人は困惑するばかりだ。


陽子には確かに見えている。

ノグチトシコはずっとそこに立っている。ボサボサの茶髪に黒いワンピース。手には黒い肉塊をぶら下げている。一瞬こちらを見てニヤッと笑った気がした。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


陽子は叫び、気を失った。

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