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放課後と用事と説教





「何故呼ばれたか分かるか?」


『……すみません


授業中注意力散漫でした』


鞄を足元に置き、生理現象に抗えなかったのは事実なので職員室に入るなり厳格教師ことガイアースの言葉を待って、反論もなく謝罪を口に出した


椅子に座っている木の葉のような色合いの髪も男性が眉一つ動かさず、剣呑な瞳を向ける。嗚呼、先生は大変生真面目な顔立ちですね。


「謝るぐらいならするな。父親が研究局の局長だからといってお前は見習い生にすぎん。


魔導士になる以上不必要な知識などない。」


ここぞとばかりに責められているが、魔導史に対する自分の熱意の無さは教師陣から見るに他の教科からは考えられない結果らしい。そしてこの人は個人的に父に恨みでも?υ




「――――ロード。」


そこでガイアースの声色が変わった。どうやら説教はここまで


男性は整理された卓上からプリントの束を取り出すと、様子を眺める黒髪の女子生徒に[まるのまま]手渡す


『…?』


見覚えある内容。既に課題として解いた事があるプリント


脈絡なく教師のバリトンボイスが響く



「お前はギルドにでも登録しているのか…


先日の研修で狼を何体か狩ったそうだな」


『いえ、街道で3回魔物と戦った程度です』


「そうか


用件はシャーセス・ブライアンは知っているな?」


〈まぁ一様クラスメイトですし?υ〉と、脳裏に浮かんだ背の小さな騒がしい魔導具技師希望者を思い出す


研修で彼とは同じだったので普段以上にイメージが浮かぶ


実家は下層でギルド兼酒場。他国の傭兵が多く立ち寄る酒場。


自作の結界型小型魔導具を使って狼からシャーセス自身とクラスメイトを何人か匿っていた……が、研修後教室で姿を見ていない一人。



意図を察したが首を傾げる


蚤のように跳ね回る小五月蝿い青年だが、私以上に仲のいい人間は腐るほどいたでしょうに。


凹んでいるなら尚更別の人間に行かせた方が……


『正直、他に適任がいると思うんですが…?』


「いや…。お前に任せる」


同じ班だったから、かな


随分適当な理由だわねぇと思いつつショルダーバックを持ち上げた


『分かりました。失礼します』


一礼して室内から通路へ出て、扉を閉めると玄関前に向かう。ちなみに校内でも土足である



日が暮れてからも町中を歩くのは嫌なので足早に移動を始めた



そういえば課題が出なかったから、どうやらこの届け物が罰則代わりと考えます



◆ ◆ ◆




「どうだった…?」


玄関まで足を運んだ時、聞き慣れた声に振り向く


階段から降りてくるローブの姿の青年レベロ


ゆったりとした長い上着から長い足が伸びて、動作の一つ一つに優雅さが漂う


『ブライアンへの宅配サービスでお役御免』


「シャーセス?、


プリントでも届けるのかい」


『ご名答』


革のショルダーバックを叩き、黒髪の娘は隣りに青年が来るのを待って歩き出した



腐れ縁とはいえ親しい人間ではある


『レベロは?来る?』


下層に用がないならわざわざ行くのも馬鹿らしい

学校から帰る方向は同じだが、住居がある中層17階から帰路は別れるのだから帰る時間が遅くなるには間違いない


「僕も行くよ。


物騒な場所に女の子一人で行かせる訳にはいかないし…ね」



サラサラと揺れる髪の下、色素の薄い水色の瞳が弧を描いた。何て顔で皮肉を吐くんだか



さて、ここで一つ明かすとすれば、


例え放課後だろうがこの元御曹司に乙女は近寄らないって事はない。嗚呼本人もナルシストだからそれは理解している


では何故自分がレベロと会った時誰もいなかったか?



〈…また操ったのか


治癒魔術専攻のくせに相変わらずえげつない〉



この男は生物の意識を乗っ取れる。



入れ替わり立ち替わり教室に足を運ぶ可憐な乙女らを軽く洗脳して自身の周囲から遠ざけた…。贅沢な話です全く…。血の涙が目から流れ出そう




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