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授業風景と一部の心構え。




時刻は昼下がり。


大学の教室のように段々に横長の机が列ぶ室内


教卓ではローブを着た教師が辞典を開き、羅列を追う


各自の机には個々に差はあれど、分厚い本が束になって置かれているのが大半か


「」


教師が淡々とした口調で著名な魔術方式を確立した魔導士の生涯をなぞられた文面を読み上げている。


改正後、全四十八冊からなる【魔術史】。…正直、著名人の日常風景まで細かに記載された内容は要点のみを押さえて流してしまいたい教科ではあった…。何分量が半端無い。過去の偉人ながら数千人を超える魔導士達のプロフィールを普段から読破しようとしているものの、少しでも記載量を減らそとした著者の努力が裏目に出て事務連絡のような文面が睡眠の呪文のよう……


似て非なる科目【魔術系統史】は他国の魔術師の専攻や、王家によっての異なる適性、魔術の歴史上の分岐など他国の魔術情報が満載であるのに、何故こうも【魔術史】は眠い教科なのか?。


〈むしろ眠い教科だから魔術史なんだ〉と悟りを開き、盛大に欠伸を漏らしたいのを我慢して、噛み殺す。ともすればジワリと視界が滲んだ。しかし、この脳に巣くった眠気は消えない。


意識は眠いを押し殺そうとそのまま自然に教卓から目を逸らした


〈…―――〉とは言っても前の方の席の廊下側なので、視界に入る物は教卓か、黒板か、教師の横顔か、開いたドアと誰も通らない廊下である。


窓際の…、まして後ろの方なんて学生のロマンと青春に溢れた場所ではないが、昼過ぎなんかに窓際に座れば睡魔の誘惑に負けてしまう上、意外に入口の近くがすぐ出られるし個人的にありがたい。


レベロは窓際の真ん中近くの席で休憩時間はしょっちゅう女生徒に囲まれている。同じ事が言えるのは最近自分の観察対象である留学生である金髪のマドンナ。フレア・ビートロットか。


正統派美形ながら人当たりが柔らかいので休憩時間に男女どちらの来訪者も訪れる。他国からの留学生はおおよそ偽名を名乗るのが通例となっており、彼女もその口だろう。影の噂はかなりの上流階級の出だとさ


〈確か王国の四大領土国の一つミクレストが出身とか言ってた言ってた〉


教師が横目でチラチラと生徒を見た。…………何ですか先生


どうやら授業に集中との催促らしいが残念だ。そういえばこの【魔術史】の授業ではクラスの全体が珍しく居眠りが少ない……。


教師を務めているのが厳しくて恐いと有名な男魔導士だから。


暗黙の了解を若者達に浸透させた教師は帝国、帝国支配下の18小国、西の亜人の住まう大デレカトリム、王国と王国大四領土内と、数々の諸国を放浪したんだとか…比較的若く、まだ20代か30代頭。


〈少なくとも顔は…型真面目で融通が利かなそうなのにねー。人は見かけに寄らないワ〉



魔物により見習い生死傷事件から半月経過したが、クラスは持ち越しなので顔触れは例年なら変わらなかったが同級生は7人減った。ちなみにこの教師は担任ではない


それ以外に教室にいないのは、魔物の牙に同級生が引きちぎられる様を目の当たりにし、いかに魔導士がそこらの傭兵と変わらない危険な立場であるか理解者して怯えているのが大半か…。校内の実習は一方的に魔物を焼き払うものだし、これから専攻を変える者も出ると予測はできた



魔導士の育成は国とて死活問題なので、そうそう集められた適正者は切り捨てない



「ロード…


ロード・グリュヒュンデ」


低く、明らかに気分を害したような声が授業終わりと同時にロードを名指しし、休憩時間に入ったにも関わらず教室内は緊張感からか声一つ上がらない。その空間にある視線が教室の入り口の傍の席に集まり、事の展開を静観している。私は優等生の部類なので若干面白がるような眼差しも背中から感じたze。


どうやら今日は、厳格教師の沸点を越してしまったらしい


〈罰則は課題かな〉と脳内でボヤきつつ、無視する訳にもいかないので静かに顔を向ける


『…ハイ』


「放課後、職員室へ来い」


『ハイ』



呼び出しか。


教室から教師の姿消え、本来の騒がしさが蘇る


遠巻きに他人に見られてながら、机の荷物を纏め、次の授業の教材を出す



後ろの方で男子生徒の群れがヒソヒソと「こえー」と怯えた声を出していた。


「何やってたんだよ?、まさかまた寝てたのかυ」と眼鏡の細っこい委員長に問われて、「いや」と苦笑いを浮かべる



『…』


「…」


不意に窓際の席の青年と目が合った



〈今日も孤高の王子してんなぁ〉


ほんの一秒にも満たない時間交わった視線はそのまま互いに反れる。


例の留学生の片割れ。


腐れ縁男レベロが物腰柔らかな部類なら、こちらは間違いなく観賞用だろう


〈罰則…。レポートならいいなぁυ〉


レポートなら魔導系統史を織り交ぜつつ内容を構成できるが、反省文は頂けない。魔導史の必要を語れとかだったら尚難しいね。魔導系統史に融合してしまえ



視界に入った立場上幼なじみに当たる水色髪が、からかうように「やっちゃったねぇ」と唇だけ動かす



その通りだったので、「HA」と軽く左肩をすくめると、荷物の詰まった革製のショルダーバックを肩に教室を出た




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