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楚楚として。


燃えるような夕暮れの中、前を行く飛竜が槍やら矢やら魔法飛び交う戦地へ迷わず下降するのを見て、自分はその乗り手の男が勇猛か蛮勇かどちらかと思案した。英雄になる前に死に急ぐ気だろうか。貴族意識無いな。


市民の血税で育ったならばもう少し頑張って欲しいのが一般庶民としての意見である


深く外套を被ったロードの仮面の下半分、その口元が弧を描き、轟いた爆音と同時に粉塵が舞い小石が頬を掠めた。平野は両国の兵力で犇めく


そこかしこで激しい衝突が命を燃やし続けられている。地上にこれほど艶やかな舞台があるだろうか…。積み上げられた物が爆発し、散り行く間際凄まじい躍動を魅せる。

アーヴァインは恐らく今その瞳に剣を交わす時と同じく煙る炎のような色を宿しているだろう。残念ながら後ろにいるので想像しか出来ないが……


「」「」


此処まで来たら喧騒に言葉を交わすのは難しい。

手綱をさばく手に力が籠もる。


故郷を追われてまで惜しんだ男の晴れ舞台を漸く念願叶って見られるのだから気分はまるで暗転した映画館の一室でかなり期待していた映画の始まる間際だった。


竜の背にて手綱を引き、自分は既に地上で剣を振るうアーヴァインを放っておいて上空から援護射撃をする事に決め、斧を振りかぶるミノタウロスを先ず第一の獲物に


右手に握る槍の切っ先が圧縮した風を放てば、ボスンと音を立てて発砲スチロールに金属を刺すような音が鳴る。


胸部に穴を空け絶命した魔物を構わず踏み潰して新手と魔物と帝国兵が青銀髪の剣士に押し寄せている。鉛色の黒剣が白を基調とした帝国兵の鎧を突き破り、魔力を纏った刀身が鈍く光る


舞った返り血が男の青銀髪と褐色の頬、青い鎧を汚す


秀麗かつ精悍な顔は一度だけ不快そうに眉を寄せた。ほんの一瞬、視線が向けられたような気がした


地から己目掛けて放たれた矢を槍で叩き落としつつ、数多いる兵士の中で一人の剣士を目で追った。捌ききれる量までコチラが接近する敵を削らなければ死は一層近づく


魔物は倒してもまた召喚される。連日の戦闘に切りがないのは公然の事実。ガーグ側といわず王国全土が業を煮やしている。根を抜かねば一方的に消耗させられるのは王国側だ。


だが飛竜兵隊を連れ、ガリア領国の次男坊が戦地に来た。戦況を覆す王国からの一手は伸ばされた


アーヴァインが兵力として使えるコチラをいいように使うとすれば、この戦地での露払いである。最も彼の者がそれを望んで口に出し、それをコチラが聞き入れれば、といった二段階ではあった。


敵魔導師から放たれる魔法をかいくぐり激戦区に斬り込む若者を見ていると、一体何故飛竜兵隊を連れて来たのか問い質したくなる


今の自分は知る由も無かったが、後に駐屯する飛竜兵隊の人間が、その日の夜間の駐屯地にて主家の次男坊が戦地に一人勇み出た事を耳に入れて脂汗を流す事態になっていたそうだ。魔物を召喚する敵陣を一掃する為呼ばれた彼等には作戦までの兵力温存が義務付けられていたのだ



〈…決め付けるにはまだ少し早い〉


熱を帯びたように一心不乱に戦闘していたアーヴァインが、退去する帝国兵を放置して剣を鞘に収める


月に照らされる死骸や大地、生存者の輪郭


とうの昔に日は暮れ、闇夜の平野の薄暗い中ぼんやりと映った男の姿


緑色のローブをはためかせながら黒髪の娘は笑った。既に飛竜は手放し、槍を手に地上にいる


『お疲れ様。随分と斬ったようだねぇ』


「…」


鞘に収めた剣を手に、コチラの茶化すような言葉を意味の無い物と感じて歩を進め出した褐色の男


無視か。つくづく貴族ではなく軍人向きな気質なのが見て取れた





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