▼たたかう▼たたかう▼たたかう。
槍が牛の魔物の眉間に深々と突き刺さる。ヴモォオと叫び、涎を垂らしながら重量ある肉塊が地面に倒れた
突き刺さった槍を抜く暇も無く、攻め寄せる魔物の群れ
風が横一閃に空気を断つ。新たな血飛沫が衣服を汚し、顔半分覆う仮面と頬を汚した。生暖かい液体が大地に降り注ぐ
ロードはオリハルコン製の槍を手の中でブン回し、嬉々として構え直す
『涌く涌く!』
毎朝夜明けと共に迫り来る魔導師に召喚される異形の群れ。風の魔法でぶつ切りに、視界が白く染まり、追撃に降り注ぐ光の矢
魔獣の死骸が積み重なってゆく平野部から草葉の緑は消え、ロードのローブぐらいしか鮮やかな緑は見当たらない
傭兵として雇われてから一週間が経とうとしていた
横目で部隊の位置を確認した。もっと前に出なければ。大型の魔術を放つには距離が近すぎる。
「死ねええ!!」
斬りかかって来た帝国兵の胴体を狙い、剣を投げる。孤を描き、鉄は背後から対象の体に刺さって兵士は倒れた
迫る敵の武具。右横、左斜め上、背後から横凪ぎに鉄球迫る。ミノタウロスは獰猛に命を刈り取ろうと暴れているし、敵の魔導師部隊から、風圧、爆風、放たれる魔法の渦に高揚溢れる
心臓の鼓動が自分の耳を支配して、もっと、もっとと、突き動かされるように衝動的に魔法で辺りを一掃。燃え上がる焔
一人の魔導師が緑のローブを翻し、敵を縫うように帝国兵力の中に跳躍している。
正気の沙汰では無い、と兵士は噂していた
同時刻。場所は前線東部に移る
城内の通路で、負傷者の手当てを休む間もなく行っていたレシフレアは、やきもきと主人の心配をする従者に休息を促されて寝台に横になり、目を綴じる
薄い寝間着は陶器のような肌を包み、女神と賛美される彼女は一枚の絵のように美しい
明日にはまた新たな怪我人が運び込まれるだろう。…、だが、噂がレシフレアの脳内を占めて、寝付けないでいた…。数日前の事だ
《西のガーグ領前線に強い魔導師が現れた》と兵士達が話していた。
当初は無鉄砲な青二才が無知な行動をしていると噂されていたが、一日、二日、五日と続く内、その魔導師が並ではないと囁かれるようになった。黒髪の女魔導師。そう聞くや否や予感のような物が思考をよぎった
「ロード…グリュヒュンデ……」
思えば彼女は、レシフレアにとって理解に苦しむ相手で
魔法都市アウスリケアの魔導研究所の局長の娘。自治区上流階級の部類。だが、レシフレアやアーヴァインのように国を背負う立場でもなく、しかし、アウスリケア切っての実力者で将来像を描くに容易い人物
二人を逃がした事で、帝国首都での処刑が確定したその同級生。性格は控え目に表現して優等生エリートに見せて実態は捻くれ者。価値観の違いが人格にここまで影響すると私に理解させたのも彼女だったのかも知れない
ロードの処刑が決まった時に、レシフレアは自国のエルフに協力を要請していた。帝国東部からの侵入経路を捜してだ。
アーヴァインはアーヴァインで西部から飛竜隊を飛ばすと電報を受けた。
二人とも帝国領土に足を踏み入れられない状況ので自国の兵士に委ねる事に
そして私は前線へ、アーヴァインは王都の守りに就いた
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