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旅立ちますか?



大デレカトリムは所詮亜人の国だ。私に人種差別の気はないが、事実、亜人は同族は庇っても人間への猜疑心は強い。


過去、魔導士による亜人狩り


奴隷として扱われた過去から二百年経過しようと彼等に深い恨みを抱かせた


奴隷の扱いは酷かった。劣悪な環境でろくな食事も与えられず死ねばゴミのように道端に棄てられて…野晒し。人としてすら扱われなかった



つまり、黒髪ながら人間である自分は、亜人に嫌われている。


帝国からの追っ手が町で情報収集をした場合。金で売られるのである



「おい、小娘…」


低重音な酒場の店主が、店じまいを手伝い終え、残り物のパンとスープをカウンターで食べていたコチラへと声をかけた


長きに渡り虐げられていたのだから、亜人は人間とは口も聞かないぐらい毛嫌いしていると思っている。この店主が変わり者なのだ。先入観ではない。非情な歴史は過去として残る。消えない憎悪の灯火は、燃えやすい冬の草原に広がるように亜人達の心に広がり、今も巣くっている。



「魔法で亜人を欺こうとするな…。」


それだけ言い残すと、じろりとロードの顔を一睨みに溜息を零す亜人


年嵩だというのに見上げるほど体格の良い店主はズシズシと厨房の中へ消えて行った


『』


解釈としては2パターン


魔法行為で亜人を侮辱のは止めろ


それか遠回しな忠告で、亜人は魔法に鼻が効くから次は無い。バレて袋叩きにされ棄てられるぞ、という訳ですか


肝に銘じておこう


亜人は存外…鼻が効く、とね



酒場の外は明け方に霞み色に染まっている


『ありがとう


親切なオジサン』



道具屋もそう待たずに営業を始めるだろう


〈換金して保存食買ったら、直ぐに町から出るとして


南部の街道はどこを選ぼう〉


歩き出して、出口付近の壁の上方に額縁がある事に気付く


中には地図と手紙が飾られており、誰かしらの筆跡と一緒に飾られている


《変わらぬ友情を。――――友に。》


流れるような美しい文字。字画を強調したラインはまるで教科書の文字のようだった。書き手が神経質だったのだろう


既視感を覚えて、筆跡を追うように視線を下げて


探したそれを見つける



《此処に記す。ユリアン・ガイアース》



『先生……顔広っ』


ロードは師の名前をまじまじと眺めて、噴き出すように忍び笑いを漏らすと再び歩き出した



知っていた


ガイアース先生は自分の名前を好んではおらず、生徒達にはその乙女のような名を伏せて家名のみ名乗っていた事を。


ユリアン、と印された書類印を始めて見た時は噴き出した。先生、何かトラウマでも?

貴族の出なんだろう。たおやかな美少年に付けるような名を与えられ、本人はさぞかし不本意だっただろう

父と先生が何かしら過去に関わりがあった事実は余り衝撃ではないが、種類の違う頑固者同士反発していた節があっても可笑しくはない。



〈もう、会う事もない人だってのに


今更こんなからかいがいのあるネタを拾ってしまうとは〉



押したドアから清涼な風が流れ、頬を撫でる


亜人の街は乾いた土の匂いがした




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