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不穏と憲兵。



卒業まで何もなかったと言いたいが模擬戦から一年と十ヶ月後。学園生活も残すとこ一年…そんなムード漂う六年目の終わりに、再び見習い魔導士に死者を出す事件が起こった


昨年は大事を取って現地研修は取り消されたが、研修場所を移動した先で図ったように襲撃された研修生の一段



『大変な事になってますねぇ』


「……、他に言う事があるだろう」


咎めるような男の眼差しがお前は人間味に欠けた発言しか出来ないのか、と睨む。…いやいや先生の前だけですって



既に休暇に入っていたが、教員が休暇に入るまで学習する生徒の為開放された学校で魔導書を漁っていた私は、やはりこの二年間よく休憩時間に絡みに行っていたスパルタ教師ことガイアース先生の使用している個室で紅茶を飲んでいたので、飛び込んできた現地の情報を真っ先に手に入れた


横顔からでも分かるガイアースの眉間の皺が一層深く刻まれ、男はそのまま沈黙


『…』


「早く帰れ」と有無を言わせず教員室から閉め出され、暇つぶしに目を通していた魔導書を返そうと校内備え付けの図書館に足を運んだ所で憲兵の姿が図書館入口から見える学生寮を取り囲んでいるのが見えた


…。


様子から学生部屋の中を物色している。


穏やかでは無い話だ


カウンターで返却する本を積み上げて、外の様子を窺えば、国上層部を守る銀糸の刺繍が入った白ローブの魔導士の一団もいた



寮は原則寮生以外立ち入り禁止なので、誰の部屋かは分からない。…だが、襲撃の情報が入るのと重なっての捜査


関係者がいたと魔導国家の上層部が決断を下したと思って間違いないだろう



〈…と、なると捕まったのは留学生に間違いないなぁ〉



アウスリケアの魔導士業界は他に類を見ない程度に排他的であり…、元々閉鎖的な業界だけに門の狭さは折り紙付きか。


魔導の中心地といった誇り。事実、世界で一番魔導に先進した土地だけに、肩身の狭い思いをするのはこの国で学ぶ帝国出身者以外の他国の学生で、いずれ母国に帰るのだからと留学生への風当たりは強い。どれだけ優れていようが「いずれアウスリケアから出て行く」ってことになるので国内の繋がりを重んじる魔法国家では多くの場合受け入れられない


これは中層以上の住人の常識である



そして現在、王国側の留学生はあの美男美女の二人のみなので、憲兵に連れて行かれたのも彼等かな。


襲撃の事実はどうであれ、二年以上前に魔法国家の方針は決まっていたのだと予想はしていた。




◆ ◆ ◆



自宅に帰った私は物静かな家の中、玄関から自室に一直線


母は普段から研究所に長くいるので基本一人である。腐れ縁男の家は親父さんが結構自宅で仕事してたりするからこの家とは方針が違うらしい。


『』


バサバサと服を剥ぎ取るように脱ぎ、白いシャツに深緑の長めの上着とズボンに着替え、リビングに移動し、果物を口に詰め込む


町と近郊が霧に包まれているだけあって水には困らないが、食べ物はカビやすい。パンとか3日保たない土地である


ミルクをかけたシリアルのような乾物かパンが主食であるが、乾物の方は味が非常に薄く、見た目シリアル。


味は麦とプロテインに近い。


そう、この土地は、余り食べ物が美味しくない土地である



〈後、一年……υ〉



ギルドで働くなり、他国の魔導士隊に所属なりして、ジメジメと湿ったしかも寒くて、ご飯も微妙なアウスリケアから離れるのが最早人生設計の揺るぎない指標で。


私がこれまで他国の近場の町に足を運んだのは殆ど食べ物目当てであると両親は知る筈も無かった




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