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それでも、最強の盾であれ  作者: もちもち物質
第一章:機械仕掛けの体
33/53

33話:地下*3

 魔導のものであろう謎の機械を破壊する、となれば、当然、そこには危険が伴う。

 破壊するだけなら、可能だろう。スファルが殴れば大抵のものは壊れる。だが……『壊した後』のことを考えれば、安易にそんなことはできない。

 まず、大量に溜まった魔力に衝撃を加えるということは、あまり賢明ではない。何せ、ありとあらゆるところに、魔力は介在しているのだ。スファルがものを殴る蹴るといった行為に及ぶにしても、彼は無意識にだろうが、その拳や足を魔力で強化して使っている。

 そして、その魔力が機械の魔力にぶつかった時……妙な暴走の仕方をしないとは、言えない。暴走の結果、ここら一帯が全て吹き飛ぶ、といったことも、十分にあり得る。

 だがそれでもやらなければならないのだ。さもなくば、グレイ達3人のみならず……より多くのものが失われる結果となるだろう。




「こんな風に魔力を使うことになるなんて!」

「俺もこんなのは初めて見る」

 ……そうして、エメディアは杖を構えて早速魔力を動かし始めた。

 エメディアの仕事は至って簡単だ。魔力を大量に流し込んで、この機械に流れる魔力を全て、エメディアのものに置換するのである。

 ……そうすれば、この機械をエメディア自身が動かすことも、できるかもしれない。少なくとも、この機械の魔力の制御をエメディアが行えるのであれば、この機械自体の破壊も、それに伴う危険を限りなく小さく抑えることも、叶うかもしれないのだ。試みる価値はあるだろう。

「おい、エメディア。そっちはどうだ?」

「そうね……雪に埋もれた道を探しながら歩いてる感覚よ……」

「つまり分かんねえってコトか……」

 スファルは『想像がつかねえ』と言っているが、それはグレイも同じことである。

 グレイも魔力は多い方だが、それにしても、エメディアほどではない。エメディアが探り当てながら魔力を流し込んでいる回路の1つ1つは、グレイにとっては存在を認識することすら危ういものであった。

 これは間違いなく、エメディアにしか……ダンジョン2つをクリアして、その魔力を手に入れてきたエメディアにしかできないことである。


 ……だが。

「……駄目だわ」

 エメディアが、絶望した顔で機械を見つめた。

「これ……ここでは、制御できない」

「は?」

「これを制御するための機構が、また、別の場所にあるのよ……」

 ……どうやら、事態は困難を極める様子である。




 どうしましょう、と呟くエメディアの横で……グレイはすぐさま、結論を出した。

「なら移動しよう」

「……えっ?」

 エメディアが顔を上げたのを見て、グレイは少々笑ってみせる。

「その、制御用の装置があるところを、あんたが探してくれ。やれるだろ?」

「いいぜ、道中の護衛は俺がやってやる!このスファル・トゥルバが、オーガの誇りにかけて、な!」

 エメディアは戸惑ったが、スファルが勇ましくもそう申し出てしまえば、最早、躊躇う余地は無い。

「……駄目だったら、ごめんね!」

「その時は笑って死ぬさ」

「俺は戦ってから死ぬ!戦わずして死ぬのはオーガの恥だからな!だが、戦って死ぬならそれは、オーガの誇りだ!」

 そうして、エメディアが杖をついて集中し始めた。同時に、微弱な魔力が広がっていくのを感じる。エメディアは今、その魔力の反響を感じ取って、『制御装置』の位置を知ろうとしているのだろうが……。

「……あっちだわ。あのドアの先よ」

 ……エメディアが指差す先、そこには、ドアがある。

 どう見ても、開きそうにないドアが。




「まあ、部屋に出口があることは朗報だな。開かないドアをどうすればいいのかっていう別の問題はあるが……」

 ……さて。

 この部屋にはドアが1つある。つまり、この部屋は行き止まりなのだが……この部屋唯一のその肝心なドアは、生憎、開かない。

 鍵のようなものが必要なのだろうとは思われるが、鍵穴は無く、代わりに、ドアの横に小さな石板が埋め込まれているだけだ。グレイは、『ああ、固有の魔力にしか反応しない魔導の装置だな』と理解したが、それはつまり、『俺達にはこれを開く手段が無い』ということである。


「部屋を出ることすらできない、ってなると……いよいよ、困ったわね」

 エメディアは、『なんとか、このドアを開くように魔力を流すことはできないかしら』と考えているようだったが……。

「……なら、仕方がないな」

 グレイは、より単純で明快な解法を思いついている。

「スファル。いけそうか」

「は?吹っ飛ばせってか?」

「その通りだ」

 メカニジア式のドアだったとして、メカニジア式の開け方をしてやる必要は無い。

 裏通り式……或いはオーガ式の開け方をしてやれば、それでいいのだ。


「……やってやれねえことはねえだろう。だが、静かに、ってのは、土台無理な話だぜ?物音がすりゃ、当然、気づかれる。囲まれるのは目に見えてるよな?」

 スファルはドアを見て、『ふーむ』と顎に指をやる。『やってやれねえことはねえ』とは頼もしい限りだな、とグレイは笑った。

「そうだな。だから、その後の処理は俺がやる。それは、盾役の仕事だ」

「それは……」

 エメディアが一瞬、何か言いたげな顔をした。だがグレイはそれを制して、あくまでもスファルに話す。

「見つかった時点で、俺が敵を引き付けて留める。制御装置には、エメディアとスファルで行ってくれ」

「……そうかよ」

 スファルもやはり、何か言いたげではあった。少し考えて……しかし、この気の良いオーガは、思い切りもいい。

「……ま、しょうがねえか。それしかねえっていうなら……突き進むしかねえなあ!」

 そう言うや否や……スファルはその拳を振りかぶり、勢いよく、ドアへと叩きつけた。




 1発では、ドアは破れなかった。ただ、メゴッ、と鈍い音を立てて、大きく歪んだだけだ。

 だが、2発、3発、とスファルが殴り続けていけば、ドアはやがて、その歪みに耐えられなくなり……そして。

 バゴン、と鈍い音を立てて、ドアが吹き飛ぶ。スファルはこの結果に、にやり、と笑い……同時に、グレイがドアの先をすばやく確認する。

 ……途端、けたたましく鐘が鳴った。音は即座に城内を駆け巡り、この異変を報せて回る。

「こっちよ!」

 それを見たエメディアは、即座に部屋の片隅……部屋から先へ進むためのドアへと向かっていった。

 ここからは、時間との戦いになる。




 ドアはまた、スファルが殴り飛ばした。また、『こんなんでも、投げりゃあそれなりに使える』と、吹き飛ばしたドアを拾ってひょいと担ぎ上げ、そのまま運んでエメディアの後を追う。

 ……だが。

「おお……来やがったな」

 来たドアとも向かうドアとも異なる3つ目のドアから、ぞろぞろ、とメカニジア兵がやってくる。グレイは、『まあ、そうだろうな』と思いつつ、兜のバイザーを下ろし、大楯と斧槍を構えた。

「ああ、この先なのに……!」

 エメディアは、走るべきか留まるべきか、一瞬、躊躇った。

 ……だが。

「……できるだけ早く戻るわ!30秒……いえ、1分、かかるかも、しれないけれど……でも、絶対に戻るから!」

 思い切った彼女は、グレイを置いて、目的のドアへと走っていく。そのエメディアに向けて、メカニジア兵が筒の先を向けるが……そこから鉛の玉が飛ぶことは無い。

 メカニジア兵の中へと突進していったグレイが、大楯でそれらを薙ぎ倒したからである。

 ……そうして、スファルが振り回したドアが、目的のドアを破る。エメディアとスファルがその先へと駆けこんだのを見送って……グレイは、尚も増えるメカニジア兵達の前に立ちはだかった。

「5分でも10分でも、どうぞお構いなく」

 もうエメディアには聞こえないであろう言葉を呟いて、そして、グレイは動き出した。

 盾役としての仕事を全うするために。

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― 新着の感想 ―
ドア…!こんなになっちまって
ドアさんの扱いに涙を禁じ得ない。 まさか別のドアさんとエンカウントするとは夢にも思っていなかったろうに。 そしてグレイさんはなんかほんとかっこいいんだよなぁ…。
グレイさん、かっこいーーー! そして、あまりにド外道な「使い道」でした。 さっくさくと進む展開に、目が離せません。
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