見えていないもの
短編です
授業の合間の休み時間は、楽しいおしゃべりの時間だ。
「次の授業って何いるんだっけ」
「移動教室だけど、ノートと教科書以外いらないよ」
「筆箱は?」
「それは必須だろ」
げらげら笑いながら、友人は、バッグを探る。
俺はもう準備万端だから、後は友人たちが準備を終えるのを待つだけだ。友人が手にした教科書は理科の教科書だった。あれ、次って理科室か。俺はてっきり視聴覚室かと、机の中を探って、手にしていた教科書を机に戻そうとしたけど、机のナカがプリントなどのゴミだらけで、しまうことも見つけ出すこともできない。でも次は理科の授業だから、教科書は必須だろう。探している間に、友人たちは、俺を置いて、教室を出て行ってしまった。
最近、こんなことが続いている。いじめとか、そう言うんじゃないとは思うんだけど、なんだか俺、認識されていないみたい。
懸命に声をかけるけど、無視をされる。俺、何かしたかな。
理由を探るけど、俺にはいまだによくわからない。なんで友人たちに急に無視されるようになったのか。俺が悪いなら、俺にはっきりそう言えばいいのに。
ようやく教科書を取り出した時、チャイムが鳴ってしまった。教室には誰もいない。俺一人が取り残されてしまった。
なんだか寂しいな。
俺って存在する意味あるんだろうか。そんなことを考えてしまって、いつの間にか、俺は屋上に行ってしまった。
サボっちゃった。授業。きっと先生怒ってるんだろうな。でも、なんとなく、真面目に受業を受ける気持ちじゃなくなってしまった。たまには、良いよな。
屋上はフェンスがちゃんと貼られているから、実は出入り自由なんだ。そう思って、ドアの前に立つと、チェーンがかけられていて、出入りできなくなってしまっていた。
俺のオアシスが、使えなくなってしまった。いつからそうなってしまったんだろう。こないだは行けたはずなんだけどなぁ。
「鍵もう一つ増やしましょうか」
「いやぁ、もう屋上に行きたがる生徒もいないでしょう」
先生たちの声がする。やばい、こんなところに居たら絶対怒られる。
俺は慌てて掃除用具置き場の陰に隠れた。でもこれ、俺見つかっちゃうんじゃないかな。見つかったらなんて言い訳しよう。そんなことを考えていると、先生は鍵のチェックをして、すぐに去って行ってしまった。
危ない、危ない。怒られるのは嫌だ。さて、教室に居座って、もし財布が無くなったりしたら俺のせいにされるだろうし、それはそれで怒られそうだから、遅れてでもいいから授業に出よう。
準備したものを持って、俺は理科室に移動した。みんなもう授業を受けているけど、幸いにも、後ろのドアが開いていて、こっそり入ればバレないだろう。
四つん這いで自分の席に向かう。友人たちの隣に開いている席にそっと座る。良かった誰にもバレていない。
授業は相変わらずつまらないけど、友人たちの描く落書きを笑いつつ、時間が過ぎるのを待つ。でも、やっぱり誰一人、俺の方を見てはくれない。誰も俺の存在に気づいていないみたいだ。ほのかな喪失感が、俺のナカを駆け巡っていた。
チャイムが鳴ると、みんな片づけをして、教室へ帰っていく。
一人寂しく教室に戻ると、俺の席に花瓶と一輪の花が添えられていた。
だ、誰だよ・・・冗談でも笑えないぞ!!
——俺の言葉はクラスの雑踏の中に落ちていった——
なんだよ!みんなまるで俺が見えてないみたいに!




