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真昼の月  作者: 藤之恵多
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序章


オリジナルを書き始めて、まだ日が浅いですが頑張ります。

どうしても趣味で女の子が多くなってしまいました。

女の子しか基本出てこない話ですがよろしくお願いします。




 白い月が浮ぶ。

 目が眩むほど青い空に、まるい月が。

 昼と夜とが一緒になったような光景に少し変な感じがした。



 がちゃんと音がして私は乱暴に自転車を止めた。

 雲ひとつない空は真っ青すぎて、浮ぶ月を妙に目立たせた。


――暑い。

 

汗が何もしていなくても流れていく。

 生い茂る木々のおかげで薄暗いこの場所でさえこの有様なのだから、ここまでの道中を歩いてきていたら私は干からびていたかもしれない。

 そんなことを割りと本気で考えていた。

 友人からの誘いは断った。こんな田舎だ。行く場所など決まっている。

 毎日、顔を出しているに近い場所をブラブラするのはそれなりに楽しい。小さい頃からずっと住んできた町だし、住んでいる人も見慣れた顔ばかりだ。

 楽しいことは楽しい。でも飽きる。同じ仲間とつるむのも楽じゃない。

 何となく伸ばしていた髪の毛が汗で張り付く。

 鬱陶しくて制服の襟から入り込んだ僅かに茶色い地毛を外に出す。

 この髪のことは基本的に気に入っている。量も多いし、巻くにしても結うにしても適当にするだけである程度形になってくれるからだ。

 逆に学校では教師に目を付けられるし、面倒くさい先輩が睨んできたりもするが切る事はしなかった。

 負けた気がして悔しいからだ。

 だがそんな風にして守ったわりに夏の暑い日は邪魔でしょうがなく思える。


「うざ……」


 はぁと結構大きなため息が出た。

 夏の暑さを助長するような蝉の声が周囲から際限なく響いていた。

 暫く来ていなかったから伸び放題の草を蹴って踏んでと繰り返しながら進む。

 目当ての場所は遠くないが急ぐような用事でも無いので適当に道を外れてみたりしてみる。途中で虫が飛んできたり、姿が見えないのにがさがさと草を掻き分け逃げる音がした。


――ザアッ


 風が、吹きぬけた。

 舞う草達に少しだけ目を細める。

 視界が一瞬で開け草の緑に、空の蒼、雲の白、そして太陽の光がそこには溢れていた。

 小さく息を吸う。強い風につんと夏の匂いがした。


「ここに来るの、久しぶりかも」


 私の目当ては何も変わらず、そこに佇んでいた。

 何てことはない樹だ。種類なんて知らない上に知る気も起きない。

 ただ私が小さい頃からこの樹はここにあって、一人になりたいときには使わせてもらっているだけなのだ。秘密基地なんて高校生にもなって言ったら笑われるかもしれない。

 それでも感覚的にはそれが一番近かった。


「さぁて」


 ぱんぱんと私は掌を軽く叩いた。

 格好は制服のままだが気にするほどでも無い。

 普通に履いていたとしても中が見える可能性のあるスカートの下には既に“見せパン”という対策が施されている。

 ましてや、この周りには人がいないのだから見る人も居ないだろう。


――見たら殴るけどね。


 そんなことを心の中で呟きつつ、一番下の枝に手をかける。

 ぐっと力を込めれば直ぐに慣れた動作で体が動いた。


「ふー、良きかな、良きかな」


 お気に入りのポジションまで上って枝に腰掛ける。

 太い枝は私が一人乗った程度ではびくともしなかった。

 しっかりと持ってきていた布を木の枝に敷く。素肌で木の上に座ったり寝たりすると幹のでこぼこした所などにひっかけてしまっていつの間にか擦り傷ができていたりするのだ。

 特にこの季節は制服も半袖になって触れる場所も多くなる。目立たない所ならばまだいいが見えやすい所に傷が着くのは女子高生として遠慮したかった。

 少しわざと揺れるように体重を移動させてみる。それでも枝はほとんど揺れない。

 何となく嬉しくなって、私は口の端を緩めた。


――ま、昼寝もするし。当然か。


 この安定感があるから寝ることもできる。

 寝相には自信があるし、何よりここは風の通り道らしく涼しい。

 落ちた所で怪我をするような高さでもない上、下は草のおかげでフカフカだ。

 それに人間体勢が崩れそうになると起きるものである。授業中に舟を漕いでいても完璧に机に伏せそうなると目が覚める。

 結局はそういうものだ。

 取り留めの無いことを考えながら私は目を瞑った。

 何となく見上げた空には丸い昼の月が浮んでいる。

重なる枝葉の間から青い空と白い月が見え隠れする――綺麗な光景だった。

肌を滑る風に目を細める。 今日もいい風がこの場所には吹いていた。


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