第58話 陰陽師は吸血鬼に備える
学校が平和だ。
「ねえねえ聞いた?」
御花畑が朝の教室で話し掛けてきた。
「何のこと?」
「親鼻達8人が奇病から回復したのはいいけど、行方不明になったんだって」
あいつら、術を破ったのか。
いいや、邪神の眷属の仕業だろう。
どういうつもりかは分かる。
手駒にするつもりだな。
今頃きっと肉体改造されているはずだ。
ビニールのカードホルダーの中にあるあいつらの髪の毛を見たら、灰になっていた。
呪い対策だろう。
敵もなかなか手が早い。
でも呪いは名前が分かっていれば掛かるのもある。
髪の毛は強力な触媒だが、必須というわけではない。
「たぶん8人は人外になっている。吸血鬼の類だろう」
「そんなことになっているの?」
「たぶんだな。念のため、昼休みに占ってみるけど」
授業は何事もなく進んで行く。
まるで嵐の前の静けさだ。
昼飯のお弁当を速攻で食べて、こっくりさんの紙を広げた。
「こっくりさん、こっくりさん、おいで下さい」
10円玉がはいに動く。
「親鼻達は吸血鬼になっていますか?」
10円玉はぴくりとも動かない。
「妨害されていますか?」
はいの場所に10円玉が動く。
限界が近いので、敵も必死だな。
総力をつぎ込んでいるに違いない。
次のスケルトン発生がおそらく最後だ。
「こっくりさん、お帰り下さい」
10円玉がはいの場所に動いた。
占いの類は駄目らしい。
仕方ない、吸血鬼だという想定で動こう。
聖水の作り方は。
水と塩を用意して。
「父と子と聖霊の御名においてアーメン」
塩と水を混ぜて。
「再び、父と子と聖霊の御名においてアーメン。カタログスペック100%」
塩水が光った。
これでいいはずだ。
警察は銀の弾丸を装備しているから、吸血鬼なら問題ないはずだ。
御花畑達、4人を呼んだ。
「敵との最終決戦が近い。敵はおそらく吸血鬼だ」
「ふむ、吸血鬼の血は採取してみたいのである」
「やるなよ。聖水を配るから常に持ち歩いてくれ。ニンニクも欲しいがあれは匂いがな。銀の消臭スプレーは放課後手に入れて配るよ」
対策としてはこんなところか。
「吸血鬼だと、銀の十字架のネックレスが欲しいな。プレゼントして。代わりに私もプレゼントするから」
「私も」
「貰える物は貰っておく」
「いいね」
「分かったよ、みんなにプレゼントする」
授業が終わり、放課後5人で銀の十字架を買いに出た。
ちょうど良いことに露店商が銀の十字架を売っている。
本当に銀で出来ているんだろうな。
まあ嘘でも一筆書いて貰えば問題ない。
銀の十字架で吸血鬼を退治したということが書かれた本と十字架を持って。
「カタログスペック100%」
十字架のネックレスは光に包まれた。
「首に掛けて」
「はいはい、みんな並べ」
首に掛けるのは息が掛かるぐらい近寄らないといけない。
手が不思議と震えた。
こんなことで緊張するなんて。
はた目にはキスしているようにも見える。
週刊誌の記者とかいないよな。
俺はネックレスを掛けてから慌てて辺りを見回した。
良かったいない。
「赤くなってる」
「御花畑だって」
「次は私ね」
小前田の首にネックレスを掛ける。
「くふん」
「変な声を出すなよ」
「くすぐったかったの」
「次は私なのだ」
和銅さんの首にネックレスを掛ける。
「初めての経験は何でも新鮮なのだ。これが初体験なのだ」
「初体験言うなよ」
「そういうふうに言うとエッチいね。エロ小僧だぁ」
小前田がそう言って茶化した。
「さっ、スパッとやってくれ」
武川さんはそう言って目をつぶった。
目をつぶる必要はないんだけど。
まあいいか。
4回のネックレス掛けは緊張した。
息をするように出来る日も来るんだろうか。
ドキドキが失われたらそれはそれで嫌だな。
いつも新鮮な気持ちで接していたい。
甘い拷問みたいな時間を過ごした。
彼女らのファンが見たら悔しがるのだろうな。
あとで悪縁を切っておかないと、嫉妬で呪いが掛かるかも知れないからな。
そして、薬局で銀の消臭スプレーを買ってカタログスペック100%。
ニンニクは俺だけで良いだろう。
スーパーで手に入れてカタログスペック100%しておいた。




