第48話 陰陽師、父さんを理事長にする
3日ほど経ち、学校に捜査のメスが入った。
あの虐めてた8人は、全員が奇病で休んでる。
体が痛くて眠れないし、食事もままならないそうだ。
このまま衰弱して死ぬとなんかあっけないな。
でも助けるという選択肢はない。
理事長と6人いた理事の3人が首になった。
学校を改革してやるか。
姿を隠して理事室に入る。
五円玉に紐を通して振り子のように揺らした。
催眠術の本を手に持って。
「カタログスペック100%。お前は今から眠くなる」
理事は居眠りを始めた。
「次の理事長は波久礼・智明だ。手を叩く音で目が覚める」
波久礼・智明は俺の父親の名前だ。
俺は手を叩いた。
「はっ、寝てたのか。疲れているのかな。ここんところ事件続きだったからな。こうしちゃいられない。波久礼・智明を理事長に推薦しないと」
残りの理事も催眠術に掛けた。
家に帰って父さんの帰りを待つ。
夕飯が出来上がった頃に父さんは帰って来た。
「就職活動お疲れ様」
「史郎、どうしたんだ。ニヤニヤして」
「学校から電話が掛かって来ると思うよ」
「何かあったのか?」
「父さんに吉報らしいよ」
ぐっとタイミングで電話が掛かって来た。
「いい、俺が出る」
夕飯の支度をしている母さんを手で制して、受話器を掴んだ。
「もしもし、波久礼・智明は私だが。ええと理事長になってくれだって。なにぶん急な話で少し考えたい」
父さんは電話を切った。
「どうするの?」
「受ける方向で考えたい。史郎、お前何か術を使っただろう?」
「催眠術を少しね。学校の腐敗が酷いから。残った理事もどんな事をしているか分からない。お願いだよ。理事長になって、俺の学園生活を平穏なものにして」
「そうか、催眠術は解いて来い。父さん、再建策を提案して、術に頼らないで理事長になるつもりだ」
「理事達が納得するかな」
「まあ、そこは考えがある」
次の日学校に行くと、理事会が開かれたようだ。
学校に着いて、朝いちばんで催眠術は解いてある。
俺はモデルの仕事だと偽って、授業をさぼり姿を隠して理事会に出た。
理事会には3人の理事と父さんと何人かの男女が出席していた。
「波久礼さんには申し訳ないが、あの話はなかったものにしてもらいたい。私達がどうかしていた」
その時扉が開いてお婆さんが入って来た。
「オ、オーナー!」
理事達の顔が青ざめている。
「私の一族は学校法人設立にお金を出しました。今は法律的には何も権利はありません。だけどね。こんな学校が作りたかったわけじゃない。恥を知りなさい。波久礼さんの提案書を読ませてもらいました。大変すばらしいものです。彼こそが理事長にふさわしい」
「私は、この学校の理事を弁護士で固めたいと思います。なぜなら法律を守った学校運営こそが今必要とされているからです」
「くっ、オーナーがいないと銀行関連がどうにもならない。仕方ない。では議決を取りたいとと思います。波久礼・智明さんの理事長選出に賛成の方」
三人の理事が手を上げた。
その後は父さんがいなくなった理事3人の代わりを選出して了承された。
理事会が終わったので、俺は姿を現す。
「父さん、オーナーと知り合いだったの?」
「お前の虐め裁判の時に知り合ってな。良い人だと思ったから、その後も連絡をとっていた」
「じゃあ、余計なことをしたかな」
「いいや、史郎には切っ掛けを与えてもらって、感謝している。理事長になるなんて考えもしなかったよ」
父さんの力を見くびっていたな。
俺の虐め裁判でも大活躍したらしい。
この世界の俺の記憶にその雄姿がはっきりと残っている。
出来る人なんだと思う。
俺は残りの授業を受けるために教室に戻った。
「波久礼、仕事は終わったのか」
先生に問われた。
「はい、予想より早く終わったので戻ってきました」
授業が終わる頃、新しい理事長と理事が選出された校内放送があった。
校内の改善を図るために、アンケートを実施するらしい。
匿名でいいようだ。
俺は防犯カメラの設置を提案しておいた。
それと定期的な虐めや改善に関するアンケートをもみ消せないように、ネット上でやって、第三者が管理するようにとも提案。
学校の正門をでるとまだマスコミがいた。
そうだ。
俺の暴露記事を書いた雑誌をなんとかしないとな。
知らないで邪神の手先になっていたという理由は許されない。
俺に迷惑をかけたのだから、責任を取ってもらいたい。
記者によれば俺は偽陰陽師らしいから、こんどはその偽の術をたっぷり味わえよ。




