第35話 陰陽師、魔法の調味料を作る
昼休み、また親鼻から呼び出しを受けた。
行ってみると、竜の刺繍がされたスーツや白スーツなどの男達が親鼻達の背後にいる。
あれっ、見知った顔があるな。
どこで会ったんだろうか。
思い出したヤクザの藤沢さんの所の奴だ。
サングラスを掛けて分からなかったが、よく見ると藤沢さんも後ろの方にいる。
ええと、正丸吾野組だったっけ。
堅気になったんじゃなかったのか。
「お前ら正丸吾野組だったよな。ネクターポーションを飲んで生まれ変わったはずだ」
「どうしてそれを」
「堅気になったにしては物騒だな。どういうつもりだ」
「子供の喧嘩に大人が出て行くのは卑怯だが、なんでも番を張っている奴がヤクザ並みに悪辣な奴だと、俺らに仕事が回ってきた」
「誰が番を張っているって」
「波久礼、お前だ」
親鼻が俺を指差した。
「まあいいや。掛かって来い」
俺はヤクザ共を叩きのめした。
そして、藤沢さんに耳打ちした。
「真中ふびと」
「あの方の関係者でしたか。それはとんだ粗相を」
「それと、俺は番を張ってないし、悪辣なことなどしてない。これで回復しろ」
俺はネクターポーションを渡した。
「おい、聞いてた話と違う。この落とし前をどうつけてくれるんだ」
恫喝する藤沢さん。
真っ青になる親鼻達。
「まあまあ、若気の至りってやつだよ。落とし前は金で払ってもらえばいい。違約金ってやつだ」
俺はヤクザ達をなだめた。
「あなたがそういうなら」
「愛の鞭をくれてやる」
親鼻達の腕の骨を折ってやった。
それからネクターポーションを掛ける。
「おい、引き上げるぞ」
俺はちょいちょいと藤沢さんを手招きした。
俺が責任をとる必要はないが、ヤクザ達がどうなっているのか知りたいと思ったからだ。
藤沢さんと学校の近所のファミレスに入る。
「ところであなたはどちら様で?」
「真中ふびと本人だよ」
俺は前髪を後ろに束ねてそう言った。
「似てますが別人でしょう。もしかしてご兄弟ですか」
「まあ見てろよ」
俺はメイクを始めた。
「おお、ふびと先生。気づくのが遅れて申し訳ありません。この詫びはいかようにも」
「詫びなんかいい。お前の所はどうなっている」
「組はほとんど解散状態なんですがね。行き場のない奴が残りまして、食っていくには仕事しないといけない。それで何でも屋をやっているわけです。今回の依頼は、番を張っている奴に、痛い目を遭わせてやれってことでさぁ」
「ネクターポーションの上りだけでは食っていけないのか」
「甘露は段々と色々な所から注目を浴びて、獲得が難しくなりまして」
どうしたものか。
「仕方ないな。ネクターポーションを優先的に売ってやる。だが直に取引は不味いな。やっぱり、ネットオークションしかないか。アカウントを変えたら教えてやる。落札しろ。他に嗅ぎつけられたらアカウントを変えりゃいい」
「ありがてぇ」
アカウントの作り直しはそれほど手間じゃない。
それにしても、何でも屋か。
もうちょっとましな職業はないのか。
おお、そうだ。
魔法の調味料もオークションに出してやれ。
一振りでどんな料理も高級店という謳い文句の奴があったな。
「魔法の調味料も出品してやる。こっちは市販品の転売だから、気づかれることはないだろう」
「屋台は得意ですぜ」
「頑張れよ。仕事する時は裏を必ずとれ。悪の手先にはなるなよ」
「それはもう肝に銘じます」
授業が終わり、芸能活動を終え、へとへとで帰って来た。
でも今日は魔法の調味料をゲットしてある。
それを左手に、右手には、謳い文句が書かれたホームページを表示してあるスマホ。
「カタログスペック100%」
いまから母さんが夕飯の支度をするはずだ。
「母さん、夕飯にこれを使ってみて」
「急にどうしたの?」
「まあいいから。騙されたと思って」
「じゃあ、チャーハンでいいわね」
チャーハンを炒める音がして良い匂いが部屋の中に立ち込める。
味見をした母さんが固まった。
「おっといけない」
俺はガスコンロの火を止めて、フライパンを母さんからもぎ取った。
硬直するほど、美味いんだろうな。
俺は皿にチャーハンを盛り付けた。
「史郎ちゃん、この調味料どこで買ってきたの」
「スーパーだけど、術が掛かっているから」
「術って凄いのね」
「まあね」
しばらくして父さんが帰ってきた。
「「「頂きます」」」
チャーハンを口に含む。
この世の物と思えない美味さが体中を駆け巡る。
思わず叫びたいような。
これは大ヒットするな。
あとでこのメイカーとコラボしたい。
これなら、藤沢さん達もなんとかなるだろう。




